クリエイティブRPG

舞い散る色を集めたら

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舞い散る色を集めたら
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秋のピクニック


 花が散り木々が色づき、葉が落ちては草が蹲る。
 湖上の都市・ヴァイシャリーからは静かに色相を変えていたように見えた林。筆をさっと滑らせたような茶色のひとかたまり。間近で見れば下ではしっかりと様々な色が重ねられていたのに気付く。
 風で吹き上がった落ち葉を頭に乗せた茶色の毛皮が、カラフルな絨毯の上を駆けていく。
「リスさんごめんなさいなのにゃ」
 黒猫のゆる族・クロータ・レインドロップスが魔法で風を起こす手を止めると、目の前で積もった落ち葉を箒がさっと掃いていく。
「お疲れ様です。ひとまずこのくらいで良いでしょうか」
 村上 琴理(むらかみ ことり)が操る箒の先には、落ち葉の山があった。そこから少し離れたところでは石が円形に並べられ、焚き火を起こすための枝が組み上げられている。周囲の地面は延焼しないようにすっかり綺麗に片付けられていて――多少のことは魔法で対処できるのだが――金属のトングやスコップ、水の入ったバケツなども準備してあった。
「準備はオッケーにゃ」
 クロータが雇い主の楢山 晴(ならやま はる)に合図を送ると、彼女は頷いた。
「始めましょうか」
 三人は焚き火の中央に着火剤として落ち葉や小枝を入れ、太い枝の上からこんもり落ち葉を被せて山にする。空気の流れを作るように開けた穴の奥へと、屈んだクロータが指の先からマッチほどの火を出した。チロチロ燃える小さなそれが杉の葉に触れる。すぐに燃え上がり燃え尽きる前に広葉樹の軸に火は移動し、葉の輪郭から次々に広まる。枯れ葉がねじれた踊りを終える前に、細い枝先が燃えだした。
 やがて安定した火は、細い枝から少し太い枝にと順調に火勢を大きくする。最後に薪に火が点いたのを確認して、三人は一息ついた。
「それじゃあ火の番はクロータに任せるわね。私は食事の準備をしてくるわ」
 晴は側に広げた折りたたみテーブルに移動すると、クロータが引いてきたワゴンの中身を手際よく並べて早速下ごしらえを始める。
 琴理は山盛りの食材とクロータに交互に目をやると、うずうずと尻尾を揺らすクロータを促した。
「ここは見ておきますので、クロータさんもどうぞ」
「それじゃあお願いしますのにゃ!」
 ウキウキと調理に加わるクロータを見送る琴理の傍らに、フェルナン・シャントルイユが歩み寄る。
「お手伝いしましょうか」
「絵はもういいの?」
「ええ、ひとまず描き終わりましたので。……煙の側にいても?」
「この着物はほぼ普段着だから」
 燻されたような匂いがつくのも構わず、琴理は火の側にかがみ込んで追加の枝をくべた。
「火の番はしておくので、琴理さんこそ皆さんのお相手をどうぞ。焼き芋も焼きたいでしょうし」
「じゃあお言葉に甘えて。後で交代しましょう」
 琴理も調理台に行くと、濡らしたキッチンペーパーでしっかりサツマイモを包んでからアルミホイルを二重に巻く。これを晴が既に準備した他の芋と一緒に焚き火の中に入れていく。
 クロータはホイルの中に魚とハーブ、肉とキノコ、栗……と各種並べたホイルの端をそれぞれぎゅぎゅっと重ね合わせて、表面に油性ペンで魚や肉の絵を描いた。
「これで中に何が入ってるのか分かるのにゃ」
 取り出したときには灰で黒く汚れているだろうから、判りやすく。
「同じ種類のものは、焚き火の同じ場所にまとめておいて。火の通り具合が違うから」
「はーいなのにゃ……それは何にゃ?」
「スキレットに厚切りベーコンエッグ! 待ってる間もお腹空くでしょ。それから持ち寄ってもらった食材もあってね……」
 二人が準備をしている間、琴理は今度は別の折りたたみテーブルの上に食材などを並べ、焚き火に台を設置し、鍋を置いた。魔法で呼び出した水を満たして火にかける。
 沸騰すれば、芸術の秋の準備の完了だ。



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