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継続の云われ

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継続の云われ
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 メタルゴブリンが種を撒くその場所は、青々と茂るオアシスの側だからだろうか、砂漠特有の暑さが和らいでいる。
「私も一緒に種をまいて良いですか?」
「タネマくか? ならマけ、マけ」
「では失礼しまして」
 背伸びにずいっと迫ったメタルゴブリンに、川上 一夫は魔族の頭に乗せられている植木鉢の中に手を入れた。一掴み分を取り出して小さく唸る。
「なるほど。これなら種がなくなることはありませんね」
「ヘったらコマる」
「無くなったら続けられませんものね」
「そうだ、ゾ。ハナをサかせるんだ。タネいる。ミズいる。それと、コバサもイる。 ――キンシャ、もっとイる!」
「“何が必要か”は、私達とも似てるものなのでしょうか?」
 続けるという行為の根源を、感覚を、理念を、共有できるものなのだろうか。
 一夫は魔族に倣って種を腕を使って一振りで撒いた。
「私もやり続けていることをがあるんですよ。 ――運送屋です」
「ウンソウ?」
「簡単に言えば物を運ぶ仕事です」
 それも三十年というとても短いとは言えない歳月をだ。
「その間に色々な事がありました。
 結婚して、子供ができ……リストラされたり、起業もしましたね。様々な事がありました」
「でもツヅけた?」
「結果的に今も継続しています。その三十年の間では、楽しい時も辛い時もあり、今にして思うと辛い事の方が多く覚えていますが、後悔はしていません」
 一区切りに息を吐いた一夫はしゃがみ込むとメタルゴブリンと目線を同じにする。
「なぜなら、これまで運送屋として沢山のお客様の笑顔を見て来られたからです」
 家でも会社でも大黒柱たる男は自分の胸に手を当てる。
「そして、もう私も五十歳。あと二十年も働ければ良い方でしょう。それでもこれからの二十年も、これまでの三十年と同じく沢山のお客様の笑顔が見られれば良いと考えています。その為に、これからも運送屋を頑張ろうと気持ちは変わらずにあるんです」
 誰かの笑顔が見られる。それがどんなに心満たされる価値であるのか、人生を捧げるに値すると一夫は自分の誇りにしたいと両膝を伸ばして種まきを再開させた。
「笑顔の花が沢山咲く事を祈っています」と、別れの挨拶の代わりとして贈った言葉は「オマエもエガオ、タンクサン、ミろ」と自分に返ってきたので一夫は力強く頷いた。
 それがどんなに簡単な事でないのか、あの魔族は知っている。

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