第四章 →目的を探る→
一方、港町のとあるカフェでは
織羽・カルスがある男の来訪を待っていた。
前回のループで妙な言葉を口にしていた、頬に傷のある男と筋肉質の男。
似つかわしくない彼らが来店したのを見計らい、カルスは2人に近づいた。
「ねえ、ちょっといい?」
「……なんだ?」
警戒している。男たちは突然自分たちの席にやってきたカルスに向けて、怪訝そうな目を向けている。
それでもカルスはひるまず、怜峰酒-みかづきん-を添えて、取引を持ちかけた。
「わたし、外国から来たんだけど……知りたいことがあって。取引、しない?」
「知りたいことだぁ? 何を取引するってんだ」
「貴方たちがしようとしていることと、その内容……かな? 対価はわたしが歌で人々を惹きつけて陽動をする、でどう?」
「…………」
男たちは目を合わせて、しばらく無言になる。
それから少しだけ間が空いた後、大きくため息を付いて筋肉質の男が言った。
「悪いな、もう陽動とかは必要ないんだ。やることも、それじゃあ教えられないな」
「えっ?」
「あとは必要なものを準備するだけなんでな。これでいいかい?」
「……なるほど。じゃあ、その必要なものは――」
そこまでカルスが問いかけた途中で、傷のある男が『やばい、時間がない!?』と慌てた様子でコーヒーを飲み干し、カフェを出ていく。
傷のある男の方は急いでいる様子。それを追いかけようとしたが、筋肉質の男がカルスを制したため、追いかけるには叶わなかった。
しかしそこへ、前回のループで傷のある男とぶつかった
苺炎・クロイツが顔を出す。
カルスはクロイツに傷のある男がどこへ向かったかを伝えると、クロイツはすぐさま走って追いかけて先回りをし、前回同様ぶつかってみる。
「わっ!?」
彼は吹っ飛んだ棒状の何かを素早く拾い上げると、再び走り出そうとする。
だがその前に、クロイツの手が傷のある男へと伸びて誘惑を仕掛けた。
「大丈夫?」
「あ、ああ。悪い、急いでるんだ」
「急いでる? なら、良ければ私を連れてってくれない? あなたこそ、運命の儲け話! ……とは違うかもしれないけど、あなたにちょっと賭けてみたくって」
「…………」
ここはカジノがメインの街だ。他者に賭けると伝えても、特に問題はない。
しかし傷のある男はぶんぶんと首を振り、クロイツの手を離して『急ぐから』としか伝えない。
「悪いけど、もう時間がないんだ。遊んでる暇がなくってな!」
「あっ、待って!」
傷のある男が先に走ったため、クロイツも追いかける。自分も味方だからと告げたが、男は急ぐことしか頭にない。
必死で追いかけてみたものの、いつの間にか傷のある男は姿を消してしまい、それ以上追いかけることが出来なかった。
どうやら、彼らは真正面から問い詰めても彼らは答えることはない様子。
であれば彼らを尾行するのが良いのかもしれない……。