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つき の ながめ

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つき の ながめ
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 街中の茶屋に、ふたり。
 リルテ・リリィ・ノースディセンバー・ノースと向かい合って茶屋の席に座る。
「ここの『お月見ぱふぇ』が食べてみたかったんです!」
 二人が訪れているのは京では有名な茶屋で、特異者の間でその甘味の供される形から『パフェ』と通称されている甘味盛り合わせのお月見限定メニューが話題となっていた。ちなみに大和にパフェは存在しない。
「……そんな渋い顔なさらないでください」
 くすくすと笑いながら、「ディス様に無理に食べさせようなんてしませんから」と苦虫を噛み潰したような顔をするディセンバーにリルテは言った。
「お茶もすごく美味しいらしいですよ」
 そうこうしているうちに運ばれてきた限定メニューに、リルテは目を輝かせる。
「わぁ、見た目も可愛らしいですわ!」
 美しく器に盛られた季節の水菓子に、団子を添えて。
 その団子がお月見仕様のためか、兎になっていた。
 リルテは食べるのが勿体無いと、その美しい菓子の器をじっと観察するかのように見つめている。
 そんなリルテの様子を、ディセンバーは頬杖つきながら眺める。
 しばらく菓子の美しさを堪能した後、そっとリルテは匙を手にし水菓子を掬うと口に運んだ。
「美味しい……」
 丁寧な処理を施された瑞々しい果物は甘すぎない蜜を絡められており、団子とも非常にあう味に仕上がっている。
 ゆっくりと上品に水菓子を口にするリルテを見ながら、ディセンバーは湯呑みを手にした。
 ディセンバーに見つめられて、自分が甘味にばかり夢中になっている様子だとハッと思い至り、「お月見もちゃんとしていますからね!?」とリルテは恥ずかしそうに頬をうっすら染める。

「そーそー、月が見てェなら今のうちにたっぷり見とけ。――帰ったら、そんな余裕はなくなっちまうだろうからよ」

 カラン……と、器に匙が落ちる。
 今度こそリルテは耳まで真っ赤に染め上げた。
(月なんざ毎晩昇るモン、わざわざ見にくる意味がわからねェと思っていたが…ま、悪かねェな)
 ディセンバーは心持ちをわずかばかり上昇させながら、茶を飲んだ。

 ゆったりとした時間を過ごした帰り道。
 自然と繋がれた手と手が、二つの影を結ぶ。
 土産にと買った茶葉の包みを大切に抱え、歩く満月の下。
 互いの指にキラキラと光る指輪に、今年も共に月を見て過ごせた穏やかな時間に感謝する。

「ディー。大好きですわ」

 見上げた月が、あまりも美しくて。
 笑みを浮かべる最愛の視線をたどり空を見るディセンバーの横顔に、リルテは想いを手渡す。

「知ってる。あー…『月が綺麗だな』」

 『大好き』の言葉に返すのは、いつもたったの四文字。
(だがまァ、今夜は特別だ)
 目を丸くしているリルテの手を引いて、何か言葉を紡ごうとするその唇を塞ぐ。

 ——あァ、やっぱり回りくどいのは性に合わねェ。
 月よか俺に溺れておけよ、マイレディ——

 
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