クリエイティブRPG

カルディネア

氷の宮殿 -Château Blanc-

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氷の宮殿 -Château Blanc-
【!】このシナリオは同世界以外の装備が制限されたシナリオです。
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「う――?」
 敦也は目を覚まし、上体を起こした。暖かい。ストーブが焚かれていることと、自分が柔らかなベッドの上に寝ていることにはすぐ気がついた。しかし、肝心の部屋自体に見覚えが無い。どこだここ――?
「あ、お兄ちゃん、おはよ~」
 向かいのベッドに火夜がいた。「おはよう。……どこだここ?」「病院だって。ソヴェンナの」
「病院――?」
 先に目を醒ました火夜は、医師から事情を聞いたらしい。――冒険者達は行方不明者達と共に、《フィーダーの姉》の雪原で意識不明の状態で発見された。歴戦の冒険者達も戻らなかったとあって、とうとう冒険者ギルドの本部にも連絡が行き、倍ぐらいの人数を擁するかなりガチ目の捜索隊が組まれたらしい。周辺に宮殿やその他の建造物は確認されず、冒険者達の身体にも戦闘外傷は無かった。今のところ、冒険者達は行き倒れていた行方不明者達を発見したが、惜しくもそこで力尽きたのではないか――と思われているらしい。
「違えよ――宮殿が無かっただって!? バカな! じゃああれは全部、雪山でぶっ倒れた俺達が見てた幻覚だっていうのか!? そんなワケねえだろ!」
「火夜ちゃんだって知らないよ~」
「大体、俺達にしろ行方不明者にしろ、雪山で何時間もぶっ倒れてたらどのみち無事じゃすまないだろ! なんぶえっくしょん!」
 敦也は台詞の途中で盛大にくしゃみした。同時に寒気が身体をせり上がってくる。「だから風邪は引いたんだよ~。風邪が治って、検査が済んだら退院だって」言って、火夜は自分の横に置かれているティッシュを指さす。敦也は同じように横に置かれていたティッシュを取り、鼻をかんだ。
「……マジかよ……?」
 ティッシュを捨て、窓外に目をやる。その部屋からはフィーダーの姉妹がよく見えた。手前の妹は美しい紅葉で着飾り、今も人々を誘っているように見える。その奥の姉は――
 同じように、赤と黄色の葉に彩られていた。

「というわけで、風邪が治ったら軽い検査をして、問題無ければすぐに退院できます。もしくは単なる風邪ですから、自宅療養されるならすぐ退院できるよう手続きも出来ます。どうされますか?」
「「……」」
「まあ、希望があれば言ってください。それでは」
 言って、医師は病室を出て行った。長喜とキクカは顔を見合わせる。「……どう思う」
「どう思うも何も――そんなワケないであります。だいいちあの日は、気絶するような悪天候ではなかったであります。まだ調べる余地がありますな」
「……そうだな」
 呟き、長喜は懐を探る。――白い宝石は、まだそこにあった。相変わらず手触りは冷たい。――雪中に数時間放置されて、風邪だけで済むはずがない。凍傷で指の一、二本いかれてもおかしくないはずだ。ではなぜそうなった? 手掛かりになるのは、キクカがくれた枯れ椛だ。
(単なる氷属性のモンスターじゃないかもしれない。――俺達は、もっととんでもないことに片足を突っ込んでしまったんじゃないか?)
 風邪かそれ以外の理由か、長喜は身震いした。この先を知りたいような、知りたくないような、奇妙な感覚に囚われた。
「うん――?」
 キクカはふと窓外に目をやった。――そこそこ太い木の枝に、大きな鳥が留まっているのが留まっているのが見えた。白いが、白鳥ではない。烏――にしては大きい。鷹にも見える。
 足に、大樹のタリスマンが結わえてあった。「――!?」烏はカア、と鳴き、木から飛び立つ。
「な、名和さん! あれ!」
「どうした?」
「あの、あの木!」
「うん? ――何も無いぞ?」
 羽が一つ、空から地面に落ちて行った。
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担当マスターより

▼担当マスター:鳥海きりう

マスターコメント

 皆様、この度はご参加ありがとうございました。
 いやーまたしても綺麗な終わり方でしたね。……え? 終われてない? なるほどそういう解釈もあるかと思います。
 確かに、終わったかどうかは皆様が判断することです。ちゃんと終われているのかどうか。ここで終わっていいのかどうか。
 この物語は皆様の物語です。だから、続けるのも終わらせるのも皆様の仕事です。私にできるのはここまでです。
 ……という話は、実はこのシナリオで思いついたわけではありません。なので無駄話です。気にしないでください。
 改めまして、皆様ご参加ありがとうございました。