第四章 →聞こえてますよ、その話→
一方その頃、
織羽・カルスは港町に併設されている市場へと訪れていた。
港町の市場とだけあって様々なお店が並んでいるため、カルスはガスベガスの特徴を調べるためにもいくつかのお店を回っていた。
「こんにちは! おばさん、この果物何て言うの?」
「それかい? それはね……」
店員達とフレンドリーに接し、必要な場所では礼儀作法を持って話を進めるカルス。
人気のカフェの場所を聞いた彼女はすぐさま向かい、オススメのスイーツとコーヒーを頼みつつ、ここでも店員達と会話を続けていた。
「ねえねえ、港の豪華客船は何隻くらいいるのかな?」
「んー、そうだなあ……なあ、どのぐらいあったっけ?」
「今日はオークションもあるし、結構あるんじゃないかね? でもどうだろう、豪華客船って言える船がどのぐらいあるかまではわからないかなぁ」
「そっかぁ……あ、このケーキ美味しいっ!」
「お、そりゃよかった」
船の情報、港の情報、様々な話を店員達から聞き出していたカルスだったが……ある客の来店で、彼女は気を引き締めた。
頬に傷のある男……そのカフェには少々似つかわしくない風貌の男がカルスの後ろを通り、近くのテーブル席へと座る。
またその数秒後には筋肉質な男が傷のある男のテーブル席に座り、注文にお酒を頼んでいく様子が見えた。
「……?」
カルスは彼らに気取られないよう、少しだけ耳をそばだてる。
彼らはいくつかの話をしているようだったが、あるセリフだけがカルスの耳に届いていた。
『ベイヴの顔を知っている奴がいた。オーナーを引き付ける役割は、ジョンと交代だ』
『そうか。例の物は?』
『既に確保している。しかし……』
そこから先の言葉は、聞こえない。
どうやらそれ以上は彼らが声を潜めてしまったために、聞くことが出来ないようだ。
(……なるほど、彼らは少し怪しいけど……)
今は、情報を集めることが優先だ。
故にカルスはゆっくりとコーヒーを飲み進めて、今後の事を考える。