第二章 →裏町に潜む暗号→
一方で、裏町の子供達と接触する者もいる。
彼は――
永見 博人は己の身を守る術を身につけた子供達に接触を謀っていた。なお今回
永見 玲央は同行していないようだ。
その手に握られるのは怜峰桃の缶詰。見たこともない、食べたこともない美味しそうな食べ物に、子供達の胃はグッと掴まれた。
「ちょうだいちょうだい!」
「はいはい、大丈夫大丈夫。たくさん持ってきてるから、1人ずつね」
「やったー!」
食べ物をくれる人が悪い人なわけがない……とまではいかないが、それでも博人が敵だという認識は薄まっていったようだ。
「じゃあちょっとお願いがあるんだけど、いいかな?」
仲良くなった子供達に対し、博人は『情報屋が用意したヒント』を一緒に探してもらいたい事を伝える。
しかし子供達は皆情報屋の話は知っているようだが、ヒントに関しては何も知らない様子。
そこで博人は事前に見つけておいた広場の銅像に刻まれた小さな逆三角のマークを見せ、こういうマークを探して欲しい、と告げた。
「見つかったら僕のところに教えに来てね。教えてくれた子には、さっきの缶詰をまた用意するよ」
「えっ、ホント!?」
「じゃあ早く見つけなくちゃ!」
自分が先に缶詰をもらうんだ! と喜び勇んだ子供達。それぞれがバラバラに散っていくと、すぐさま博人の視界から見えなくなった。
彼らはこの町を知り尽くしている。自分だけでは見つからない情報も、きっと彼らなら見つけてくれるだろうと信じて博人は歩き出した。
歩き出してからしばらくして、博人の鋭い観察眼がそれを見つける。
銅像から少し離れたくたびれた雑貨店の壁。一見すればそれはただの壁の模様にも見えるかもしれないものだが、明らかに模様とはズレた逆三角の印があることに。
「お、見つけた。ということは次はこっちかな?」
あたりを見渡して、次に印がつけられそうな場所へと足を運んだ博人。
その際、子供達からの連絡を受けて街灯、噴水にも逆三角の印がついていることまでは分かったが……。
「……ダメか……」
それ以降、印のある場所が見つからない。
どうやら情報屋は、観察眼だけで見つけることは難しいようだ。