第十一章 →特別ルーレット、開催→
3名の特異者と、2名の客。そして白髭の合計6人が特別ルーレットへ足を踏み入れる。
焔子、詩穂、シャーロットで稼いだ分に加え、他の特異者達が集めてくれた資金も加えて3人分の参加料。
決して高くはない資金をディーラーに渡して、3人は席へとついた。
(あれが……)
(白髭、だね)
3人より少し離れた席に座った白髭。前回のループでも、前々回のループでもこの特別ルーレットで10億円を手に入れた彼は、やはり今回もいる。
前回のループでは彼は『283』の数字を宣言して、見事にその数字を引き当てて10億円を確保している。
この情報は特異者全員に配布された情報であり、だからこそ白髭は何らかの手法で数字を確定しているのだろうと検討をつけていた。
(もし情報が正しかったら、今回も多分動きますわよね……)
白髭は何らかのイカサマを行っているはず。そう考えた焔子が白髭を注視していると、彼が咳払いを始めた。
その咳払いはしっかりと詩穂とシャーロットの耳にも届いていたため、2人も同じように白髭にバレないように様子を伺っておいた。
近くにいたバニーに声をかけた彼はお酒を頼み、燻製のスティックジャーキーを4本頼む様子が見える。
チップを弾んで2万円ほど乗せた彼は左手の薬指だけを折り曲げた手を振って、バニーと上機嫌に会話をしていた。
(……あのお酒は……)
(あれ? 前回だと確か……)
運ばれてきた3人は違和感に気づく。
前回のループでは彼はニッコラジンを頼んでいたはずだが、今回頼んでいるお酒が違う。イエローテキーラというお酒だ。
更には前回ループでは3本だった燻製のスティックジャーキーの本数もまた違うと。
(これは……)
何故、前とこんなにも違うのか? それを考えようとした矢先に、それぞれにディーラーから声がかかり数字の宣言を迫られる。
この特別ルーレットでは0から359のランダムな数字を選び、数字と出目が同じだった場合にはジャックポットとなり今までのルーレットで客が支払った参加料がボーナス諸々を含めて戻ってくる仕組み。
しかし参加者の数字が公開されるのはディーラーが球を転がして数字が確定したときのみで、それまでは完全な非公開となるため、まさに大博打というわけだ。
「そうだなぁ、じゃあ……」
決める前に少しいい? とシャーロットが動く。
白髭に向けてプレゼントとして怜峰酒-みかづきん-と怜峰桃の缶詰を持ち、会話に混ざってみることにした。
少々眉根を寄せていた白髭だったが、2つのプレゼントを受け取っては無碍には出来ないと感じた様子だ。
「さっきのバニーちゃんへの注文が気になってね? チップをあげて手ふりふりしてたの」
そうして彼女は前回のループで白髭が見せた手の動き――右手の親指と小指、人差し指を立て左右にふる仕草を見せる。
「ほぅ……」
なにやら白髭は彼女の動きについて知っている様子だが、口を割る様子はない。
むしろ、なにやら嘲笑っている……そんな印象が見て取れた。