第1章『冒険者?パーティーの対処』
人が闇に抗う世界ローランド。その中にあるヴュステラント連合国の首都、ザンテンブルク。
その中心街にある酒場では、冒険者パーティらしき集団が暴れていた。
お客やマスターはテーブルやカウンターに隠れ、その中にはとある自治体の令嬢であるデザトリアン・カルネールもいた。
すると冒険者?パーティーの手下がカウンター下にいたデザトリアンを引っ張り出す。
「見つけたぞ。さっさと在処を教えるんだ、武器から道具まであらゆる場所をな!」
「散々こき使ってクビにしたのに、今度は分からないから再雇用ですの?!」
デザトリアンが必死に抵抗していると、
シン・カイファ・ラウベンタールが酒の入ったグラスを雑に置く。
彼はその酒屋で酒をたしなんでいたのだ。
「そこそこ酒が入って酔ってるところにコレか。オレ的には不愉快だな、折角の酒を不味くするってかい?」
シンは機嫌悪そうに手下の元へ進んでいった。
「女性をものにしたいなら、やり方が根本的に間違ってるし、こんな連中に欲しがられるのも間違ってる、けしからん」
シンの言葉に手下がナイフを抜き、彼に突き出した。
すると、シンは持っていた『エアロナイフ』で弾き、その一瞬でデザトリアンを掴んでいた手下の腕を殴る。
痛みから手下が離すと、デザトリアンを自分の背に隠した。
「機導使いでない雑魚相手なら、通じそうだな」
すると、別の手下がシンを狙って弓を引いた。咄嗟に『エアロナイフ』を振り、突風を起こす。
手下の狙いが定まらなくなっている間に、接近しナイフで弦を切った。
「庇いながら戦っているヤツに何を手こずっている?」
手下をどかせながら、リーダー格である機導使いが前に出てくる。
シンは『コメットテイル』を振るい、敵の片腕に巻き付けた。
そして、機導剣を避けながら反撃に敵の服の中に爆発物を入れる。
「いきなり、なんだ」
機導使いが驚きの声をあげると同時に服の中で軽い爆発が起きた。
同時に酒屋の依頼書を見た本物の冒険者たちが入ってくる。
「私も以前はサラリーマンで、社畜をしていた。なので、デザトリアン嬢の事は他人事とは思えない」
冒険者の一人である
川上 一夫も敵が暴れる中、酒屋の戸を開ける。
突然入ってきた壮年の男を冒険者?パーティーは睨みつけてきた。
「ここは実力行使で大人しくさせて、酒場からお引き取り願います!」
一夫は『メイルオブパワー』を起動させ、攻撃力や防御力、機動力を大幅に上昇させる。
「なんだ、おっさん? 偉そうに言うんじゃねぇ」
敵の手下がナイフや弓を構える間に一夫は上昇した機動力で間合いを詰めた。そして『ハイレンチ』を振り、なぎ倒していく。
手下たちが吹っ飛んでいくと、機導剣を持ったリーダー格が向かってくる。
「その剣、使えなくさせていただきます!」
一夫は巨大なレンチを片手で振り下ろし、敵の剣に勢いよくぶつけた。
すると、特殊な腐食液を流し込まれ、敵の機導が装甲が削れていった。
一方、
星川 潤也と
アリーチェ・ビブリオテカリオも颯爽と酒屋に入っていった。
店内では冒険者?パーティーの手下がデザトリアンを狙っているのが一瞬で分かった。
「また盗賊団の社畜になるのはかわいそうだし、放っておけないな」
2人はデザトリアンと盗賊団の間に割って入る。
「このお嬢様・・・・・・放っておいたら、またどこかで社畜にされそうね。
まあ、本人はあまり気にしてないようだけど・・・・・・盗賊団に連れ去られるのを見過ごすわけにもいかないし、やるわよ潤也!」
アリーチェは潤也に言うと、リーダー格であろう機導剣を持った敵たちを指差した。
「さあ、あんたたち。デザトリアンを連れていきたかったら、あたしたちを倒してからにすることね!」
「デザトリアン・・・・・・あんた、口は悪そうだけどいい人だな。よしっ、あんたのことは俺たちが守るから安心してくれ!」
そう宣言すると、潤也は『桜の木刀』を握りしめ、走り出した。
「とはいえ、あんまり強そうな敵じゃないし、やり過ぎないように手加減しないとな・・・・・・木刀で殴って気絶させればいいか」
木刀を振り上げるとナイフや弓矢を構える手下よりの先に攻撃をする。
素早く移動しては木刀で払い、武器ごと手下たちを倒していく。
「お前らにデザトリアンは渡さないぜ!
潤也が木刀で攻撃していく中、アリーチェは機動式を組み合わせた誘導弾を逃げ惑う敵に向けて放つ。
「これで感電させてあげるわ」
誘導弾は逃げる手下たちに追いつくと、水弾がはじけ雷撃が発生した。雷撃で痺れた敵はそのまま動けなくなった。
「あーあー、酔ってもねえのに酒場で暴れるなんて冒険者の風上にも置けねえな」
その頃、冒険者の一人である
葵 司が周囲の様子を見て呆れる。彼らの登場に敵も襲いかかってきた。
「魔族ならいざ知らず人間相手にアタシが手を出す必要はなさそうだ。
司たちに意識が向いてそうならその隙に巻き込まれた人を逃がそうか」
ノーネーム・ノーフェイスの方は扉を開けると、酒屋にいた客やマスターを外へ逃がしていた。
一方、
七種 薺はフォートトレジャーでありながら屋外という戦場に挑もうとしていた。
「一応準備はしてきたけど不安だなあ。群青の渦流も撃っちゃ駄目だから尚更だよ」
薺は魔導銃である『群青の渦流』を構える。目の前の敵が銃に警戒し、防御の姿勢をとった。
それに対し、薺は撃つフリをしながら接近していった。
「これでちょっとは体勢を崩せたかな。でも、さらに近づかないと」
彼女は自らの幻影を作り出すと、それを囮にカウンターの方へ進んでいく。
「なにか使えそうなものは・・・・・・」
カウンターを覗き込むと、酒屋ということもあり酒瓶が大半だった。幻影も時間が切れ、敵も彼女に気づく。
手下たちが接近している間に辺りを見回していると、瓶とは違う容器が見えた。薺はそれに手を伸ばし、容器をつかみ取る。
そして、目の前にいた敵の顔面に容器の中身をぶっかけた。
「なんだ、しょっぺぇ。目に染みる」
入っていたのは塩であり、それを受けた敵はもだえながら倒れる。
まさかの塩攻撃に周囲が驚いている間に、薺はさらに『毒茸の胞子瓶』を投げつければ、
手下たちに毒を浴びせ、痺れから皆体勢が崩れていった。
「機装持ちがいるのが厄介だけどそうだと分かってりゃあ警戒も出来る」
その頃、司は『シェッダーロープ』を持ち出すと、ナイフや弓矢を持った敵に先端を飛ばす。
先端にはおもりがついており、手首のスナップにより不規則に飛びながら攻撃していった。
攻撃しつつも荒れた店内を安定した足取りで駆けていき、またおもりのついた先端を投げつける。
そして、敵の脚にロープを巻き付けると、他を巻き込むように引っ張り上げた。
敵の部下たちはドミノのように前に倒れていく。さらに『操風のペンダント』で風を味方につけ、素早く移動していった。
「ロープじゃ、機導使いは不安が残るな」
司は『地転のルードゥス』をロープに巻き付けて、攻めるように投げつける。
機導使いであるリーダー格は僅かにかすりながらも回避していった。しかし、重力が反転したように宙浮き始める。
「よし、天国いってらっしゃい!」
司は声を上げると、ノーネームの方へ飛ばした。
すぐにノーネームは司が飛ばした機導使いに気づく。
「天国行き? それは聞き捨てならないね」
彼女は落ちてくる機導使いの真下へ向かった。
「こんなのに行かれちゃあいい迷惑だ。冗談じゃない!」
彼女が上に向かって怒声を響かせると、相手は衝撃を受け怯んでいる間に床へたたきつけられた。
やがて、一夫は持っていた『上級冒険者勲章』を印籠のように冒険者パーティー?に見せる。
「無駄な抵抗はやめてください! こちらに殺す気はない」
勲章を見せると、敵はひざをつきお客たちは歓声をあげた。
そして、酒屋にいる冒険者パーティー?もとい盗賊団を縛り上げると、ノーネームはその一人を足蹴にする。
「アタシとしては、改心もしてない悪漢を野放しにするわけにもいかない。
きちんと反省するかいっそ生まれ変わるくらいボコボコにされるか?」
『クロスメイス』をちらつかせながら問いかけると、盗賊たちは半泣きで首を振った。
「まぁ、それくらいにして」
司が制止すると、ノーネームはため息をつく。
「直近の嫌なことを忘れられるかもしれないから、おススメだったんだけどね」
「それ以前に、女を追いかけるなんざ、男としちゃ3流だ。追いかけられ、貢がれてこそ・・・・・・だな。
しかも、居丈高に口説くとあっちゃあド三流、いやもっと下、下の下」
シンも捕縛した盗賊団に説教をしていた。
「お願い事もある相手なら、やさしく、かつ美しい言葉をつかうんだ。
おまえらの首の上にあるもの、そこに脳味噌は詰まってるんだろ?」
冒険者たちからこっぴどくお灸を据えられた盗賊団たちは魂が抜けたように項垂れていた。
「さてと・・・・・・これに懲りたら、もう人を襲ったりするんじゃないぞ」
潤也が声をかけると、デザトリアンが冒険者たちに頭を下げる。
「この度は感謝いたしますわ」
「あ、デザトリアン。こいつらは冒険者じゃなくて盗賊団だから、もうこんな奴らについていっちゃ駄目だからな」
潤也が言うと、彼女は首を傾げた。
「そうなのですか」
「うん、冒険者じゃなくて盗賊団。冒険者は無理やり人を連れ去ってこき使ったりしないから・・・・・・」
その頃、司も助けられたデザトリアンの話を聞いていた。
「しかし社畜の転生者ねぇ・・・・・・地球大好きお騒がせエルフがには紹介しなくていい・・・・・・よな?」