●ちびユニコーン捕縛作戦
「光る影、光る影…… こんな住宅街に本当に魔獣がいるのでしょうか?」
取間 小鈴は給仕服のエプロンを両手で広げながら、東トリスの街中をうろうろしていた。
と、ある瞬間、潤みを潜ませたような視線を感じる。
「むむっ!」
一瞬その視線の方向に振り返りそうになるが、さすがはA機関が招集したメンバー。そんな迂闊なことはしないのだ。
(います、いますね後ろに…… わたしを魅了して泉に取り込もうとする悪い子ちゃんが……!)
潤んだ視線がビュンッ! と飛び掛かってきた瞬間、薄茶色の髪をなびかせた少女は民家の白い壁に足をかけ、グルンとジェットパルクールを利用して回転しそれを避ける。
そのまま屋根の上に飛び移り、自身に飛び掛かってきたちびユニコーンを見下ろす。
「なるほど~確かにぬいぐるみみたいにかわいいお姿をしていますね。さて、死角を見つける必要があるかな」
「きゅう~~~~」
ちびユニコーンは辺りをきょろきょろと見まわしてターゲットである小鈴の姿を探している。その視線の先に自身の視線がかち合わないよう、小鈴はぴょんぴょんと建物の屋根の上を飛び回った。
(まずはちびユニコーンの死角を見つけないとですね)
少女はサイキックドライブを発動し、自分を探す小さな獣の視線の先を注視しながらその“死角”を探した。
「――――あった、ここ! ちびユニコーンのお尻の先!」
「きゅん!!?」
小鈴の声に反応してちびユニコーンは振り返るが、時すでに遅し。そこに小鈴はいなかった。
「お家を隅々までーくまなくお掃除するのがーメイドさんの使命…… つまりー、メイドさんにー、死角なしーなのですよーご主人さまー! あなたには死角があるみたいですけどね!」
ジャンプしてちびユニコーンの後方に回り込み、エプロンでガシッと視界を塞いで捕獲する。
「きゅ~~~~ん! きゅ~~~~ん!」
「そーんなかわいい鳴き声で誘惑しても、めっ! ですよ? 騙されませんからね!」
メイドの少女に捕獲されたちびユニコーンの誘惑もむなしいかな、相手にされずそのままA機関に引き渡された。