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鷽が来た!

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鷽が来た!
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鷽の始まり


「デジャヴュですわ……」
 目の前にある大きな葛籠を見て、霞 纏がつぶやきました。
 『開けちゃダメ!』、『ナラカ直送便(エクスプレス)』、『開けるなよ! 開けるなよ!!』、『お約束は破るもの』、『毎日が四月一日』などというシールが、ベタベタと全面に貼られています。あ、怪しい……。
 以前、霞纏も箱詰めにされて境屋に出荷されたような気がします。理由は未だに不明ですが、霞 蒼に拾われて開封されたのが特異者となったきっかけでした。
 だとすれば、この大きな葛籠の中にも、誰か発光の――いえ、薄幸の美麗な美しい美少女が美美美と入っているに違いありません。
 パカッ!
 躊躇なく、霞纏はその大きな葛籠を開けました。
「あああ、何をやってるんですの!?」
 店内で勝手に商品らしき物を開ける霞纏を見咎めて、神野羽生(本物)がすっ飛んできました。
 けれども時すでに遅し、大きな葛籠の中から銀色の砂煙のような物が黙々と立ち上ったのです。それは、みるみるうちに、何かの形に集まっていきました。
「うしよぉ~!!」
 巨大な雀のような鳥が現れました。鷽降臨です。その鳴き声が、ワールドホライズン中に響き渡りました。その隙に、大きな葛籠には足が生えて、すたこらさっさと逃亡していきました。
「私の前で、いい度胸ですわね」
 反射的に、神野羽生(本物)がフルドレスを纏って、鷽を攻撃しました。巻き込まれては大変と、霞纏が慌てて逃げ出します。
「うしょおん!?」
 強力な一斉砲撃を受けて、鷽がバラバラになって吹っ飛びました。その破片は、大小の鷽の姿になると、ワールドホライズン中に散っていったのでした。
「なんですの、あれは? それより、さっきから頭の上に浮かんでる(本物)って文字はなんなのですのー!」
 わけが分からなくなって、思わず叫ぶ神野羽生(本物)なのでした。


鷽猫


「さあ、我が猫喫茶にゴーだ。さんぜんねこチェーンジ!!」
 霞蒼が、ATDにさんぜんねこのカードをセットしました。途端に、その姿が人から猫の姿に変わります。長毛種の、もふもふの偽猫神様の姿です。
 ですが、同時に、霞蒼の目の前に、テルスのバルティカ公国辺境にあるはずの猫喫茶が突如として現れたのです。しかも、そのテラス席には、人間の姿の霞蒼が何人も猫をモフりながらお茶をしています。
 よく見れば、その姿は格闘家だったり、僧兵だったり、ベルセルクだったり、プレゼンターだったり、エリミネーターだったり、梟雄の霞蒼だったりしています。そして、全員、頭の上に謎の文字が浮かんでいました。
「こ、これは、俺の分霊(わけみたま)!? ついに、そこまで神となったか!」
 霞蒼が自画自賛しますが、単なるアバター分裂です。分裂によって薄まってしまったのか、あるいはエロすぎるせいか、分身の姿は一様に霞がかかって――いえ、モザイクがかかったようにぼんやりとしています。解像度低っ。
 というか、霞蒼たちがいる周囲までもが、まるで霞がかかったように低解像度となり、グレイの霞が漂っています。
 おかげで、分霊たちがちゃんと服を着ているのか着ていないのかよく分からないという、創造力による状況の悪化が起こっているような気もします。たぶん、するだけです。
「わー、もふもふの猫っす。姉さん、モフってもいいっすか……って、姉さんがたくさんいる!?」
 ロリポップをしゃぶった霞 鵼が、霞蒼(猫神様)に駆け寄ってもふもふしようとして、たくさんの霞蒼の姿にぷるんぷるんしました。
「ふふふ、鵼や、回り込むのですわ。もふもふを逃がしてはいけません!」
 両手をワキワキとさせながら、霞纏が近づいてきました。ターゲットは、もちろん霞蒼(猫神様)です。
「了解でっす!」
 霞鵼も呼応して、両手をワキワキさせます。
 これはヤバイ。二人とも目がエロモフです。捕まったら、あんなことやこんなことを……あ、それは別にいいかも……。こほん。どんな酷い目に遭わされるか分かったものじゃありません。ええ、きっとそうです。たぶん……。
「ということで、そこにいる俺たち、唯一至高の存在であるオリジナルを守るのじゃ!」
 霞蒼(猫神様)が、分霊たちにむかって叫びました。なにしろ、たくさんに分裂してしまったので、現在の霞蒼(猫神様)の力は戦闘力5です。
 仕方ないなあとばかりに、のそのそと霞蒼(分霊)たちが動きだします。霞纏たちを邪魔して、霞蒼(猫神様)を守るつもりのようです。一気に二人を取り囲んで胸撃(挟撃)を仕掛けます。
「わたくしとお猫のふれあいタイムを邪魔するなど、万死に値しますわ!」
 一片の躊躇もなく、霞纏が霞蒼(プレゼンター)と拳で語り合いました。
「うぞべじ!」
 あっけなく吹き飛ばされた霞蒼(プレゼンター)が、モザイクごと爆散して消え去りました。頭の上の文字が、一瞬鷽の姿となって、こちらも木っ端ミジンコに吹き飛びます。
「はっ、力が、力がみなぎってくる! よし、お前たち、俺を全部倒すのだ!」
 分け御霊が消滅した分、力が戻ってきたのを感じた霞蒼(猫神様)が、霞纏たちに叫びました。
「こら、どっちの味方だ!」
 霞蒼(僧兵)が叫びますが、霞蒼(猫神様)は毛繕いをして無視します。
 なんだか、よく分からないうちに乱戦となりました。
「こら、私の店先で何を暴れているんだ!」
 騒ぎを聞きつけて、猫喫茶の中からナターシャ(ガンデッサ)(偽物)が現れると、一瞬にして霞蒼(分霊)たちを薙ぎ倒しました。
「うしょぉん!」
「うそよーん」
「うそだ!」
 次々に、フラグに擬態していた鷽たちも消滅していきます。これは、一種の同士討ちなのでしょうか?
 すべての鷽が消えてしまうと、猫喫茶も幻のように消えてしまいました。
「これは、いったい……」
 いったい何が起こったのかと、霞蒼が元の地球人の姿に戻ってつぶやきました。
「わー、猫が姉さんになったっすー」
「そんな、お猫様が……」
 もっふもふの猫神様が霞蒼の姿になるのを見て、霞纏たちが唖然とします。
「いや、これも偽物かもしれませんわ。倒せば、もふもふ様が戻るかもしれません」
「きっと、そうっす!」
「ちょ、ちょっと……。やめろー!」
 いきなり攻撃されて、慌てて逃げ出す霞蒼なのでした。


鷽集め


「た~ま~や~……じゃない、なんだあこりゃあ!?」
 突如、花火のように地上から空へと撃ち上げられた鷽が弾け散るのを見て、アイン・ハートビーツが頭をかかえました。
 あれは、絶対によくないものです。
「うそぉー、うそぉー」
「うしょしょしよしょ……」
「うっそっおっ~♪」
「うっ……げほげほげほ……」
 なんだか好き勝手な鳴き声をあげて、大小様々な鷽がワールドホライズン中に散らばっていきます。
「誰か、鷽を捕まえてくれっ!」
 大きなムシトリアミを振り上げながら、帰去来の店主が叫んでいます。とりあえず、鷽たちを閉じ込めるために、逃げ回る大きな葛籠を追いかけているようです。
 御要望とあれば、アイドルとしては応えないわけにはいかないファンサービス精神旺盛なアイン・ハートビーツです。ここは協力いたしましょう。
「とは言っても、あれだけ散らばっちゃったら、いちいち捕まえるのも大変だよなあ……」
 さてどうしたらと、アイン・ハートビーツが考え込みます。
 ポン!
 アイドルにとって不可能はありません。アイン・ハートビーツの顔面国宝に指定された美貌と、真夏のマーメイドと称されるプロポーションをもってすれば、鷽だって集まってくるはずです。アイドル活動としてのゲリラライブを行えるのであれば、観客が人だろうと鳥だろうとどーでもいいんです。
「みいんなぁ~! ボクと一緒に帰宅しょ~!!」
 空にむかって大きくスターゲイザーの杖を振り回しながら、アイン・ハートビーツが踊り子衣装を翻して叫びました。
「うそキュン!」
 天使の笑顔にハートを射貫かれたたくさんの鷽が、帰宅願望を刺激されて一直線にアイン・ハートビーツの許へとむかってきます。さすがはアイドル、鷽の動員数はワールドホライズン・ドーム一杯分です。
「普段のコンサートでも、これぐらいお客さんを集めてくれれば……」
 空を埋め尽くすように突進してくる鷽たちを見て、アイン・ハートビーツの中で愛社精神がどす黒く渦巻きました。
「さあ、ボクの渾身の会社への思いを受け止めて、みんな一網打尽になろうよ!」
 アイン・ハートビーツが、必殺の心に溜めた会社への不満を鷽たちにぶつけようと身構えました。けれども、今や暴走ファンと化した鷽たちの動きはとてつもなく早かったのです。怒濤のように、アイン・ハートビーツにむかって突進してきます。これは避けられません。
「ちょっ、待って、まだ準備が……。そこの柵から中には入らないで……。警備員さーん!」
 いません。警備員さんのいないゲリラライブは、常に危険と隣り合わせです。
「うそキュン!」
「あーれー」
 押し寄せる鷽の波に飲み込まれて、アイン・ハートビーツの姿はあっという間に見えなくなってしまいました。なにやら、ぺっと鷽の団子と化した物の中からひらひらした物が吐き出されて宙を舞ったような気もしますが、見なかったことにしておきましょう。


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