◆エピローグ 受賞者発表とお片付け◆
お祭りの時間はどんどん終わりに近付いていき、エッグハントの終了時間となり参加者達が集計場所へと集まって来た。
その様子を見ていると、少し不思議なことがあったのだがその理由に気づいた人はあまりいなかったかもしれない。
実は、どの参加者も見付けた卵が増えると移動には少し気を使うことになった。
何しろ、皆が持っているのは本物の卵なのだ。
そう、固ゆで卵とは言え卵である。
あまり衝撃を与えると割れてしまう。
生卵ではないので、割れても大変なことにはならないだろうが、それでも中身はゆで卵だ。
もし雑に扱ってバッグの中で殻が割れ、ゆで卵同士が激しくぶつかったり圧迫しあったりしたら、どうにかなる かもしれない。
そもそも、ゆで卵だと分かっていても、何となく雑に扱いづらかった。
人は卵を雑に扱えないものだ。
誰しも1度は生卵が割れて大変なことになったところを見たことがある。
なくても、何となく想像はつく。
卵をたくさん見付けられるような想像力や推理力のある者なら、なおさらだろう。
そんな訳で、エッグハントが終盤に近付くにつれ、卵を多く見付けている者ほど動きが鈍いというか動きが違ってきていたのだが、そのことに気付いていたのは何人いただろうか。
もしかしたら、誰もいなかったかもしれないし、意外といたかもしれない。
とにかく、エッグハントの集計が運営スタッフ達によって行われた。
卵を数えた後は見付けた参加者にそのままプレゼントされることになっている。
そのまま持ち帰って良ければ食べて欲しい、ということだ。
勿体ないので。
理由はそれだけである。
優勝者が決定し、いよいよミミによって発表されることになり、参加者もそうでない者も、発表の場にいる者全てが多かれ少なかれドキドキしながらその時を待っている。
ミミが設置されている発表台に上がると、皆の視線が集中する。
まずは今日のお祭りに参加してくれたことのお礼など、挨拶から入ったがすぐにその時は訪れた。
「それではエッグハントの優勝者を発表するミャ!」
そう言ってミミが白い封筒を取り出す。
中から1枚のカードを出すと、そこに優勝者の名前が書かれていた。
「優勝は〜……法華津 友恵ちゃんだミャ〜!」
誰からともなく拍手が起こり、静かになるのを待ってミミが続ける。
「皆すっごく頑張って卵を見付けてくれてたミャ〜。あんまり極端な差はなかったんだミャ。すごいミャ〜!」
ミミが参加者達に向けて拍手する。
「とにかく、今回優勝した友恵ちゃんにはミミから賞品をお贈りするミャ! 賞品はなんと〜……」
そう言ってためながらミミがスタッフから受け取った人参型のパネルを皆に見えるように掲げると、そこに賞品名が書かれていた。
皆がそれを読むより早く、ミミが発表する。
「人参1年分だミャ〜!!」
静まり返って皆がミミの掲げたパネルを見る。
どうやら間違いではないらしい。
そこにも人参1年分と書かれていた。
しかし人参1年分とは、一体どれくらいなのか誰も分からない。
賞品が人参だから、というよりもそのせいかもしれない。
受け取る友恵もだが、それを聞いた皆もどう反応するのが正しいのか判断できないようだった。
とりあえず、といった雰囲気でまばらに拍手が起きる。
何となく、ミミがしょんぼりして見えた。
「え、えーと……あっ! さらに今回ゲームに参加してくれた皆には、行坂 貫くんからご馳走が振る舞われるんだミャ!」
今度は皆が歓声を上げた。
夕方になり、ちょうどお腹が空いている頃である。
ミミが優勝者の発表を行っている間に、その近くにテーブルが設置されていた。
その上には貫がアライブクリエイトで作った器に盛り付けテクニックを駆使して綺麗に盛り付けも行った料理 の数々が並べられている。
器には優勝おめでとう、enjoy Easterといった言葉がソースで書かれており、見ているだけでもワクワクしてくる。
「皆で美味しくいただくミャ〜! もちろんミミもいただくミャ!」
そう言ってミミも、いつの間にか合流していたイアンも貫の料理を皆と食べはじめる。
ミミもイアンもウサギのびーすとなので食べているのは主に野菜だが、どれも美味しそうだ。
そこへシャーロットが一緒に卵を食べようとユキを連れてやって来た。
「あ、ありがとミャ〜」
シャーロットが持ってきた卵を受け取り、ミミが食べ始める。
話の流れでミミの視力の話になった。
「そうなんだミャ〜目は良くないんだミャ」
「今度アイドル御用達のイケてる眼鏡屋さん紹介するね☆」
「アイドル御用達だミャ? 嬉しいミャ! よろしくだミャ〜」
シャーロットと約束を交わすミミ。
アイドル御用達と聞いて何やら想像が膨らんでいる様子である。
料理を食べ終わり、お祭りも完全に終わってからもミミの仕事は終わらない。
片付けがあるからだ。
特に、エッグハントのために隠した卵は全部回収しないといけない。
本物の卵を使っているだけに放置しておくのはまずい。
エッグハント参加者達が持ってきた卵の集計は、このためにも役立つ。
ミミが隠した卵の数から見つかった卵の数を引けば、残っている卵の数が分かる。
イアンも手伝い、卵の回収を行う。
アイドル達の中にも手伝いを申し出てくれる者が何人かいて、ミミはその言葉に甘えることにした。
隠した場所はきちんとマップに書いてある。
皆でその場所を確認してから探し始める。
どこに隠したかのメモを見ながらの探索なので、楽は楽だがどこから卵を見つけて来たか、参加者達から聞いてはいないのでそれなりに大変な作業ではあった。
行ってみたけど隠した卵が全部見付けられていた場所、まったく手付かずの場所、卵が残っている場所、様々なのだ。
それでも、手伝ってくれたアイドル達がいたお陰で、ミミが予想していたよりずっと早く片付けを終えることができた。
「大変だったけど、楽しかったミャ。またやらせてもらえることがあったらいいミャ〜」
片付けも終え、帰路についたミミが笑顔で話す。
「その時はまたワタクシも呼ぶでアール」
「そうするミャ〜次はお兄ちゃんも卵を隠すミャ!」
「それは楽しそうでアール。誰も想像できないような場所に隠すでアール」
などと話しながら帰っていく2人。
なんだかんだ、2人もたっぷり楽しんだようである。
――fin――