第1章『エージェント救出』
東トリスの境にある危険地区。その下には研究施設があった。エージェントたちは手分けして救出、調査を開始した。
その一人である七つ星(
邑垣 舞花)は『クローキングジャケット』を身につけ仮面を被り、
研究施設内にある新米エージェントたちが囚われている部屋へ向かっていった。
「囚われたエージェントの救出に尽力したいですね。役割分担ということで、私は敵の制圧に専念しますね」
七つ星は中にいる研究員にばれないように様子を窺う。たくさんの透明な箱が並び、ライカンスロープや人間が入っている。
研究員はカードを機械に通しパスワードを入力すると、被検体を検査した。
彼女が状況を把握しようとしていると、他のエージェントたちが研究員を取り押さえ始める。
室内が混乱し始めると、彼女は隠れるように移動しながら研究員へ近づいた。
着ている服のおかげか周囲の背景に紛れ込み、対象は七つ星に気づかない。
七つ星は気品を保ちつつ冷静に片手銃である『PMGーS』を構えると、躊躇いなく早撃ちしていく。
1発目は敵が持っていた銃を飛ばし、2発目は足元を狙い無力化していった。
しかし、研究員の一人がライカンスロープが入った箱を解除していく。
中からは魚人型のライカンスロープが出てきて七つ星へ襲いかかった。
「なるべく使わずに済ませたかったのですが・・・・・・」
彼女は銃に『【銀弾】エルマーク』を装填し、目の前に来たライカンスロープに放った。
一方、Unknown(
綾瀬 智也)はさっそく目立たないように室内に侵入し『サイコフェレッツ』を放つ。
「時間が勝負の分かれ目というのなら迅速かつ慎重に行動して味方を救出しましょう」
3匹は見つからないように箱が並ぶ部屋を進んでいった。しばらくして、そのうちの1匹が尻尾を立て合図を送る。
Unknownはその辺所へ音を立てないように向かった。
そこにいた研究員の急所を殴り気絶させると、Unknownは服を奪って研究員の変装をした。
彼は他の研究者にバレないように気配を遮断し尾行していく。部屋を歩き回りながら部屋の構造を確認していった。
入っているライカンスロープや人間の順番に法則はなさそうだった。
被検体の人間は地上にいた者たちよりは若く、まだ子どもとも呼べる年齢の者までいた。
彼はその箱の一つに触れると、残留した魔素から情報を読み取る。
先ほど打った数字がいくつか浮かび上がり、そこからパスワードを推測していった。
だが、検査をしない彼に怪しむような視線が刺さる。
「救出は研究員を排除してからのようですね」
Unknownは『ボールペン型発煙筒』についているボタンを押し、放り投げた。
地面に落ちた瞬間、煙幕が発生する。
他のエージェントたちの侵入もあり、現場が混乱する中、背景に混ざりながら研究員の一人に接近する。
そして、相手が銃を向けるより先に『コンパクトブレード』を顔の前につきつけ、黙らせた。
「カード渡してもらってもよろしいでしょうか?」
彼が手を伸ばせば、研究員は首にかけていたカードを手渡した。
Unknownはそのカードを受け取ると、気を抜いた研究員に蹴りをお見舞いする。
「残った研究員も排除していきますよ」
「僕は解錠を試みている方々のお手伝いを」
ブラキストニ(
美月 慎)は室内に入ると、研究員に銃を向け素早くかつ正確に急所を狙っていった。
研究員たちが動けなくなっている間に箱の一つをハッキングし、鍵の部分を壊していく。
「みなさん、早く脱出をしてください!」
彼は被験者たちを誘導するように声を上げた。
その頃、セキセイ(
川上 一夫)は他のエージェントとともに室内へ入っていった。
彼は『DGー1回転式拳銃』を構えると、素早く研究員に発砲していく。
撃った弾は壁や床に跳弾し研究員たちの急所に当たっていった。
しかし、研究員の一人がライカンスロープの入った箱を解錠する。
イノシシ型のライカンスロープはセキセイを見つけると、猪突猛進してきた。
彼はすぐにライカンスロープの方へ弾丸を放った。着弾すると、意識を揺さぶるような衝撃が周囲に起こる。
イノシシ型のライカンスロープが頭を抑え、昏倒している間にセキセイは『【銀弾】イワン』を装填し直した。
そして、銀の弾丸を放つと力が入らなくなったのか、ライカンスロープは倒れていった。
その間に『拘束白衣』を投げつけると、ライカンスロープに巻きつき締め付ける。
ライカンスロープや研究者たちを対処すると、エージェントたちが解除した箱の中に入っていた。
そこには一人の少女がうずくまっていた。
「助けに来ましたよ。さぁ、早く逃げましょう」
セキセイの言葉に少女が顔を上げると、その半分には鱗が生え魔獣化し始めている。涙目の彼女は首を振った。
「だって、あたしがここを出たら、みんなが傷つくって」
「とんでもないです。貴方も含めここにいる人たちは皆被害者です。私は囚われている人全員を救出したいのです」
セキセイが手を伸ばすと、少女はその手を握った。
月夜鳩(
高橋 凛音)は護衛の
忌ノ宮 刀華とともに地下研究施設に向かっていた。
「中の研究員が救出の妨害をして来るじゃろ。ならば、向こうの思う様にさせない為、妾は救出チームの支援に回るかの」
「凛・・・・・・じゃない、ゲフン! 今回の任務は月夜鳩の護衛として、
この“月光刀(自称)”の刀華さんが敵に作戦の邪魔はさせないですよぅ〜」
『アンチエーテルアーマー』に身を包んだ彼女が部屋に入ると、月夜鳩に背を向ける。
「作業完了したら、合図お願いするですねぇ〜」
月夜鳩がシステムに侵入し箱の解錠を試みている間に刀華は周囲を見渡し警戒した。
すると、箱から飛び出してきたライカンスロープが襲いかかってくる。
いち早くその殺気に気づいた刀華は自身の血を呼び覚まし能力を引き上げた。
そして、一瞬で踏み込み、日本刀である『浄玻璃』で居合い斬りをした。
『【銀弾】エルマーク』の効果もあり、ライカンスロープは倒れたまま動かなくなる。
刀華は次の攻撃に向けて『浄瑠璃』を一度鞘に納めた。
その間にも研究員やライカンスロープが彼女や月夜鳩の元へと向かっていた。
刀華はライカンスロープの足元へ刀を振るい、わざと足止めする。
すると、背後にいた研究員の弾がライカンスロープに命中した。
当然弾一発で倒れることはなく、怒ったライカンスロープは研究員に襲いかかった。
「月夜鳩の所へは通させないのです!」
刀華が守っている間に月夜鳩は長手袋である『月夜の操者』を身につける。
『リリーフサーバー』でサポートを行いながら、直感的にハッキングを開始した。
「さて・・・・・・嫌がらせ開始じゃ!」
箱のセキュリティを解除し、被験者や捕まったエージェントたちが入っている箱を開けていく。
さらに、すぐに研究員に権限が戻されないように培ってきた情報を頼りに、システムの不具合を偽装していった。
「これで時間稼ぎになるであろうか。その間に箱の情報も調べて」
彼女は室内の全体図をコンピュータから手に入れ、それを他のエージェントたちに送った。
その図にはどの箱にどの人物がいるか示されていた。
敵の研究員も月夜鳩のハッキングに気づき、復旧しようと機械を弄り始める。
「救助完了までは“嫌がらせ”を続けるぞぃ・・・・・・」
コンピュータ内での攻防戦は続き、痺れを切らしたのか研究員は銃を向けながら迫ってきた。
月夜鳩は箱と箱の間にある通路に移動すると、『アイシクルグレネード』を研究員に向かって投げる。
数秒後に爆発すると魔素に反応し、研究員の足を覆うように氷塊が出来た。
「役目は果たせたかの。それでは撤退しますじゃ〜」
月夜鳩が居合いで敵を遠ざけていた刀華に声をかける。
すると、刀華は最後の一人に一撃入れると月夜鳩を抱きかかえ、その部屋から脱出していった。
「エージェントの方や捕まっている方が心配です。お助けしなくては」
ミケ(
人見 三美)はベル(
アナベル・アンダース)とともに
研究施設内に囚われている者の元へと向かっていた。
目的の部屋に到着すると、ミケは音を立てないように静かに移動し中へ進んでいった。
研究員にバレないように閉じ込めている箱を詳しく見てみる。
鍵部分はカードを通す部分とパスワードを打つボタンがあった。研究員はそれぞれ違うパスワードを入れている。
そのうち他のエージェントたちの侵入により室内が騒がしくなってくると、ミケは物陰から飛び出した。
「箱に囚われた方を救う為に、箱の開錠を目指しましょうか」
彼女が研究員に接近しながら『武装ランドセル』を向ける。そこから閃光弾が発射されると、その光で研究員が怯んだ。
その間に魔素を通じて空間そのものに干渉し、研究員の目の前に瞬間移動する。
そして、『アミュレットダガー』で攻撃し研究員を倒していった。しかし、その間にライカンスロープも襲いかかってくる。
ミケは『【銀弾】イワン』をダガーに付与し、それで斬りつけていった。
敵を無力化すると、彼女は囚われたエージェントがいる箱の前に立つ。
装置に触れると、超能力でパスワードの情報を読み取った。その番号を入力し、研究員が持っていたカードを通す。
すると、扉が開きエージェントが出てきた。
「碌でもない事を企てているのだろう。皆を救出し、此処で企てを止めるとしよう」
ベルも室内に入り、様子を窺う。
「囚われた者を救うには、箱の開錠が必要か。
その為に、研究員の不意を突いて開錠に必要なカードやパスワードを聞き出す事になるでしょう」
ベルも気配を抑え音を立てないように研究員に接近すると、後ろから首に腕をかけ拘束する。
研究員も抵抗するが、腕で絞めているうちに力なく膝をついた。その物音で他の研究員たちも銃を向けてくる。
ベルは咄嗟に引き金を引く前に銃身を蹴り上げ、その間に研究員を取り押さえた。
「抵抗するな。カードを渡してもらおうか。パスワードも念のため。まぁ、当てにならない可能性は大きいが。
推測の為の材料の一つとして聞いておこう」
ベルは情報を聞き終えると、『アイアンワイヤー』で拘束する。
そして、カードとパスワードを入れ、箱を解錠した。彼女は研究員を入れ、被験者を連れ出す。
「もう大丈夫だ。さぁ、早くここを出よう」
彼女は被験者に『魔力遮断マント』を被せ、部屋から連れ出した。
「さて、どうやって壊そうか・・・・・・!」
紅目の猫(
ダークロイド・ラビリンス)はニヤリと笑いながら
『シザーグローブ』と『ストライクブロー』を装着していく。それらには『【銀弾】エルマーク』が塗られていた。
「言っても無駄だと思うが、無茶な行動はするんじゃねぇぞ。」
ジャック(
卯月 神夜 )は『【銀弾】エルマーク』を塗った『バスターソード』を振り、
紅目の猫の支援をする。研究員が箱からライカンスロープが飛び出してくると、
ジャックもハイイロオオカミに翼が生えた姿に変化した。
「私が皆さんを守りますから、安心して下さい!」
プリズン(
マリン・ムーンリース)もジャックと同様に紅目の猫のサポートに回る。
2人が前に出て研究員やライカンスロープの相手をする中、彼女は銃に『【銀弾】イリヤー』を装填していった。
そして、『DGー1回転式拳銃』と『エーテルブーストガン』を使い、後方から狙っていく。
研究員も対抗するように銃を撃つ中、プリズンは1発目で銃を破壊する。
敵が怯んでいるうちに彼女は接近し、2発目で急所を攻撃した。
研究員たちの攻撃が止む間にライカンスロープが勢いよく走って向かってくる。
プリズンはコートを脱ぎ、それに注意を向かせた。周囲の魔素が揺さぶられたことにより敵はコートを彼女と勘違いする。
ライカンスロープがコートに攻撃している間に、プリズンは背後に回り込んだ。
そして、壁に跳弾するように弾を放つと、弾はライカンスロープの頭に命中した。
ジャックも敵の引っ掻き攻撃を空中を飛びながら回避していく。しかし、室内であるせいか移動できる範囲も少なかった。
「これは短期決戦になりそうだ」
彼は翼で攻撃を防ぎながら剣を振るった。内部に貫通した斬撃により、ライカンスロープは倒れる。
やがて、ジャックは追い詰められたことにより怯んだ研究員に近づいた。
「さぁ、パスワードを教えてもらおうか」
彼がせまっていく。研究員はハイイロオオカミを目の前にし、震えた声で説明しカードを置いていった。
ジャックは元に戻り、言われたとおりに解錠する。
その頃、紅目の猫は銃を向けてくる敵の動きを観察しながら接近し、次の弾が来る前に銃口を蹴り上げた。
そして、『ストライクブロー』をした拳で殴り抜ける。
「お前らは箱を解除するカード所持及びパスワードを知っている可能性がある。本気で壊すわけにはいかない」
彼女が気絶した研究員を横に避けていると、今度はライカンスロープが襲ってくる。
飛びかかってくるも紅目の猫は楽しそうに微笑んだ。
「やっと良い獲物が来たな」
彼女は目の前に来たライカンスロープの首を掴んだ。敵もあがくが、力が強く外すことができない。
そして、箱を破壊するような勢いで壁に叩き付ける。その間にも別のライカンスロープが現れ、飛びかかってきた。
紅目の猫は壁にめりこませながら急接近し、『シザーグローブ』で切り裂く。
そして、ドラッグを飲み、トドメの一撃を食らわせると、全身爆弾となった彼女の身体は爆発した。
ジャックやプリズンが音のした方へ向かうと、そこには爆発で攻撃した紅目の猫が立っていた。
まだ、戦闘したりなさそうな表情をするが、同じようなことをすれば彼女がただですまないことをジャックは分かっていた。
「まったく無茶しやがって。片付いたんだし出るぞ」
彼は暴れたりなさそうな紅目の猫を取り押さえる。プリズンにも声をかけ、部屋を脱出していった。