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薬物工場制圧作戦

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薬物工場制圧作戦
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 正面陽動を引き受けたエージェントの一人、名和 長喜は設置型サーチライトを正面玄関に向けた。早い話陽動兼目つぶしの様なもので、強力な光によりこちらの実人数を悟らせない目的もある。大がかりな作戦と誤認させ、相手を誘引するつもりだ。
 バッ! と音を立ててサーチライトが点灯した。彼はエマージェンシーラウダーを玄関に向ける。きぃーん! とハウリングが止むのを待ってから、
「あーあー、君たちは完全に包囲されている。無駄な抵抗はやめて直ちに投降したまえ。A機関にも御慈悲は有るし故郷の親兄弟は泣いているぞー」
「そうだ。田舎の親御さんは泣いてるぞ」
 同じようなアプローチから始めた火屋守 壱星が声を揃える。
 眩しさに目を細めながら、何人かの構成員が出てきた。当然の様に武装している。長喜はその様子を見て、
「お、投降かー?」
「誰が投降するかー!」
「威勢が良いなー。その元気を社会の役に立てたまえ」
「もう包囲されて逃げ場はないぞ。臆病風に吹かれたか、警備員失格だな!」
 壱星も加勢する。
「なんか、なんだ? お行儀の良い連中だけか? だったら返り討ちに……」
『こ~れは見た目ダッサダサ工場♪ 最悪サイテ~♪』
 そんなご機嫌な罵倒ソングが聞こえて来たのはその時だった。
『給料ないない♪ 環境最悪~♪ ブラック企業だヒュ~♪』
 迅雷 火夜夢風 小ノ葉のアイボーペアがコサックダンスを踊りながら歌っているのであった。警備員ぽかーん。
「何あれ」
「さあ……?」
 迅雷 敦也もメガホンに向かって、何らかのイベントに参加できなかった悔しさを目一杯叫んでいる。俺たちに言われても知らんよ……。警備員たちは顔を見合わせた。
 火夜は東オデッサ法律辞典を頭上に掲げた。
「ほら、火夜ちゃんの法律辞典にも書いてあるよ♪ おたくの工場の仕事環境はブラック企業に値するって♪」
 ブラックどころか違法行為をしているわけで、そんなことは当人たちも自覚している。しかし、ムーンチャイルドで十歳程度の女児から法律を盾に煽られたら流石にイラッとはするようで。
「んだとあのガキめ」
 陽動としては十分成立していた。
「ネバーバードが得意なのはハッキングなんだけど……これも仕事だからやる……」
 コサックダンスで煽る少女二人の横で、ケミカルライトを振っているルティア・テイントの存在がまた「この状況は一体……?」感を醸し出している。
「千雪含む全エージェント不可解な行動……とりあえずケミカルライト振ってみんな応援しとく……フレー……フレー……フレー……」
「俺にも参加させろーーーーー!」
 敦也がその後ろからメガホンで絶叫していた。


「千雪の陽動で敵が集まってきてるな。まあ、あれだけ騒げば当然か……」
 星川 潤也は続々と出てくる警備員たちを見て、千雪の身を案じていた。実際の所、とりあえず奇声を上げて爆竹でも鳴らしておくかと雑な陽動をしている千雪よりも、他のエージェントたちの凝った陽動の方が警備員を集めてはいた。
「よし、千雪はそのまま敵を引きつけてくれ。集まってきた敵は、俺たちに任せろ!」
「ほら、潤也。あたしが水を撒いておいてあげるから、あんたは物陰で待機してなさい」
 と、彼を押しやったのは、同行者のアリーチェ・ビブリオテカリオだ。工場外にある水道を拝借して、アグナオペレートを使って出口周辺に水を撒く。踏み入れれば水が跳ねる程度の水たまりを作った。まるで夕立が過ぎた後のような有様だ。
「こんなものかしらね」
 二人は物陰で待ち伏せた。潤也もアリーチェも、誰も殺したくないと思っているので、使用する対策は不殺に寄っている。息を潜めて、ドアが開くのを待っていた。
「俺、この任務が終わったら、妻に伝えたいことがあるんだ……」
 潤也の呟きに、
「またフラグ立ててる……」
 アリーチェが呆れ顔になっていた。

 一方、少し離れたところでもまた、別の陽動が行なわれていた。
 コードネーム2こと行坂 貫は変装Ⅰにて姿を変えていた。罵倒や奇声、大声などによる陽動は長喜たちに任せ、自分は火を使う。ピッチマイアズマを、外から見えるところに放り出して火柱を生じさせた。人間サイズの炎は決して小さいとは言えない。使っている貫の方はこれが燃え広がらないと知っているが、有事に備えている者たちは「燃え広がる」ことを前提に動く必要がある。避難の前に初期消火が可能か、逃げるとしたらどっちに逃げるべきかを確認する必要があるからだ。
 貫が三本目の火柱を立てようとしたその時、慌てて様子を見に来た構成員が彼を見て度肝を抜かれた様だった。まさかスタイリッシュ青年が火を放っているなんて思わなかったのだろう。彼は口角を上げる。衣装を翻して、鳩の群をけしかけた。驚きに悲鳴が上がる。白鳩を掻き分けてこちらに向かってくる相手を視認するや、彼はメジャーナンバー22を手品のように浮かべると、弧月を振るって衝撃波を叩き付けた。
 火の様子を見に行っただけの仲間がなんだかやられているらしい。その知らせを受けて、慌てた様子の警備員が次々とおびき出されていった。

「何かが呼んでいる、これは魂の叫びか?」
 タイムトラベラー? のゲルハルト・ライガーはユニバーサルクロースで扮装すると、シングルバルーンを膨らませて乗り込んだ。四人乗りの気球は一人で乗ると広々としている。高度を取る間に、工場内の電光掲示板を乗っ取って犯行予告を行なった。ワナビは、それに乗じて工場の電子制御されている扉を全開にさせた。更に、フェイクスクリーンであらゆる画面に警告文と称した怪文書を表示させる。

「ふははははははは!!
 親愛なる東オデッサ市民の諸君!

 我が名は<Professer L>!!
 遥か未来、ワルーン星域から来たタイムトラベラーだ!

 諸君らも知っての通り

 この世界は滅亡する!!

 今、この地から忌むべき瘴気が溢れだし、世を穢しておる!

 それがこの世界の滅亡の<序曲>となるのだ!!

<Professer L>」

 自信満々に世界の滅亡を説かれて面食らう中の警備員たち。なんかさっきは「投降せよ!」みたいな声も聞こえて来たような気がするのだが……? 取締系とタイムトラベラー? の愉快犯が同時に来ているのか……? 鳩の声も聞こえたし一体何が起こっているんだ……?
 ゲルハルト単独でも混乱するのに、他のエージェントが自由に陽動しているものだから、警備員たちの精神的余力は既に赤ゲージだ。とりあえず様子を見に行こう。
 と、彼らは大慌てで開け放たれたドアから飛び出した。おや、雨でも降ったのだろうか? 出口周辺が水浸しだ。
「ギャッ!?」
 踏み込んだ瞬間、突然弾けるような痛みが走って、彼らは文字通り飛び上がるほど驚いた。潤也のパルサーウォッチから放たれた電撃が衝撃を与えたのだ。
 パルサーウォッチは、至近距離から撃てば気絶するかもしれないし、しないかもしれない、過信は禁物……程度のパワーしかないため、水たまりに撃ってまとめて感電から気絶、と言うのにはちょっと力が足りない。だが、敵の度肝を抜くには十分だった。それはそうである。水たまり踏んだらバチッ! なので。
「何だ今の!」
「こっちも無駄な殺生はしたくないから、しばらく寝てなさい!」
 物陰から飛び出したアリーチェが東オデッサ法律辞典の角でぶん殴った。突然のことが重なり過ぎた警備員はその場で気絶。大の字になって倒れた。潤也が武器を取り上げる。
 別の警備員がアリーチェに反撃しようとしたその時、空から大量のビラが降ってきた。プロフェッサーLの怪文書である。
「うわあ!? 何だこれ……さっきの怪文書!!!!」
「ふははははははは!! 親愛なる東オデッサ市民の諸君!」
 上空からエマージェンシーラウダーを通した高笑いが轟く。そこには、ゲルハルトを乗せたシングルバルーンが浮かんでいたのだった。
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