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薬物工場制圧作戦

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薬物工場制圧作戦
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 高橋 凛音はあらかじめ、事務所の構成員の中から、自分と同じような背格好の人物に接触していた。
(今回は薬物組織のルート情報などの奪取任務じゃ、市民の為にも必ず確保して来ますぞぃ)
 彼女の情報を得ると、ついでに周辺情報を頭に叩き込む。
 永見 玲央と養子縁組をしていると言う永見 博人も事前準備を特に入念に行なった一人だった。
「やっぱり、事前情報って重要だよね」
 雇用したワナビや内通者に依頼して事務所の見取り図、使用している機器の情報を入手した。彼が「ワナビのお兄ちゃん」と慕う協力者は、期待通りの仕事をしてくれていた。内通者の補足もあったが、ハッキングを駆使してかなり正確な見取り図を入手してくれている。
 サイバー犯罪集団でもないため、システムそのものは一般的な物だった。現物をA機関で用意し、解析。メカニックである博人が各種スキルを駆使すれば、システム構造の把握もそう難しくはない。
「見取図はエージェントの皆で共有ね」
 マシンチャイルドはにこりと笑ってそれを複製した。
「ガサ入れ? っていうんだよね。突入の直前に事務所内のシステム機器を制御下に置くね」
 逃げようとする奴は閉じ込めるつもりだ。
 ジェイク・ギデスは、ネットカフェから情報技術を駆使して、潜入先の電気会社についての情報を集めていた。
「ん? この数字はおかしいな……」
 公開されている決算報告書の収支について首を傾げる。明らかに事業内容や規模と合わないような……? 経済知識を持つジェイクはすぐにそれに気付いた。彼は現場で釘を刺せる程度にその矛盾点などを書き留めた。

 決行の日、突入組で最初に現場へ向かったのは川上 一夫エスメラルダ・エステバン、そしてジェイクだった。一夫はユニバーサルクロースを用いた変装で警察官に扮している。彼は戦闘が得意ではないし、好きでもない。だから資料入手という形で他のエージェントに貢献しよう。
「違法薬物の製造容疑で捜索に参りました」
「わたくしは監督署の方から参りました。立ち入り調査です。組織図に従業員名簿、労働環境を確認いたします」
 エスメラルダも、毅然とした事務員として振る舞った。彼女が言っているのは別に嘘ではない。監督署の方角から来たし。身分は名乗ってないし。ジェイクも眼光鋭く屋内を見渡し、
「国税局だ。俺の言葉は政府からの言葉だと思え。俺に何かあったら、どうなるか分かっているだろ?」
 後ろめたいことのある相手には効果覿面だった。ガラの悪い男が一人、前に出るが、警察官を装う一夫の前では下手に動けないのだろう。なんだか苦しい言い訳をしている。エスメラルダとて、素直に出す、正直に答えるなんてことはまったく考えていない。彼女は相手が机に置いたファイルに手を当てた。インファートで嘘を見抜こうにも、どいつもこいつも真っ赤な波動を放っている。だから、ここはサイコメトリーで読み取ってしまえ。
 一夫もトークセンスを活かして聞き込みをしながら資料を探した。
(ホント、叩き甲斐があるぜ。埃どころか粗大ゴミがでてきそうだ)
 収支の矛盾点を突きつけ、相手が狼狽えたのを見て、ジェイクの目がまた鋭く光る。芝居が下手にも程があった。悪あがきの様にジェイクの立場を疑ってくるのには、ライセンスを突きつける。一番聞かれて困るのはエスメラルダであったが、警察制服の一夫とライセンスを所持しているジェイクを目の当たりにすると、疑う気も起きないらしい。

 変装した凛音は席に座って仕事をしているフリをしていた。彼女は入れ替わりのために、対象の事務員をパルサーウォッチで無力化させており、その人の端末を拝借している。やがて、味方が合流し始めた。他の構成員たちの注意がエスメラルダたちに向いている間に、月夜の操者とパソコンを接続。リリーフサーバーを用いてコントロール下に置き、販売ルートの情報などをコピーし始める。
 博人も同じように各種スキルを駆使して制御系を支配下に置いていた。セキュリティの固い所は、持ち前のスキルで突破する。だが、まだ封鎖はしない。
(あ……)
 凛音は一人が隠し持っていた棍棒を取り出して、背後から一夫に忍び寄ろうとしているのを見た。コップでも落として気を引こうとしたそのとき、カナコ・ハインケル桐野 亜紀のペア、青井 竜一が踏み込んできた。
 構成員の一人が、一夫に躍りかかろうとしたところで、竜一がDG-1回転式拳銃を発砲した。パン! と乾いた音がして、銃口が一瞬光る。棍棒が手から飛び、回転して壁にぶつかった。そこからは大乱闘だった。凛音はここが潮時と見て接続を解除すると、混乱に乗じて建物から飛び出した。
(後は任せますじゃ!)
 そのタイミングで、博人が出入り口のシステムに干渉し、建物を封鎖した。凛音に続こうとした構成員たちはドアを叩いて何やら怒鳴っている。
「亜紀! 殺さないようにね」
「殺してはいけないんですね? では瀕死にさせます」
「やりすぎは駄目」
 カナコの言葉に、極めて真面目に返す亜紀。カナコはツインスレイで相手の武器を落としながら、当て身で無力化した。亜紀は独特な緩急を加えた三影歩法で相手を惑わしながら近づくや、手の中に隠し持っていたコインを、その顎先に向かって弾き飛ばした。ピン、と軽い音を立てるや、硬貨は弾丸の様に飛び出し、敵を伸す。
 竜一は唯一わかりやすい武器を持っているため、より武器を持つ構成員に狙われた。ダブルガジェットで銃器と暗器を巧みに使い分ける彼に勝てるはずもない。カナコと亜紀の側も優勢で進み(亜紀の気迫に圧されている構成員もいた)、あっという間に事務所内は制圧された。
 ジェイクは構成員たちから携帯端末を押収すると、クラックコントロールで情報を抜いた。透視能力も使って、必要そうな書類の場所も探っていく。
「メンドクセーな」
 口癖でぼやきながらも、彼の顔は獲物を追う猟犬の様だ。
 その間に、竜一はさっきまでの容赦のない立ち回りが嘘の様に穏やかな態度で構成員たちに接していた。スパイコロンは、人間に好感を持たせる調香になっている。
「素直に情報を話してくれたなら、協力的だったと情状酌量のための口添えをしてもいい」
「こちらもその様に報告します」
 一夫も肯いて見せた。二人の話術により、幾人かは少しだけ態度が和らいだ様だ。だが、一人の目に映る狡猾な光を、嘘感知が可能な竜一は見逃さない。一夫もインスピレーションでそれには気付く。二人は目配せした。こいつの話は信じない方が良さそうだ。
「なるほどな」
「そう言うことですね」
 相槌を打ちながら、二人は油断なく相手を観察していた。やがて、相手があるキャビネットをしきりに気にしているのがわかった。
「なるほど、資料の隠し場所はそこか」
 竜一の言葉に、口をつぐむ。
「もう観念して、全て話したらどうだ?」
 スパイと言うよりも、私立探偵の言葉で彼は告げた。一夫がその棚に歩み寄り、開けようとするが鍵が掛かっている。
「開けて頂けませんか?」
「鍵がどこかに行っちまってなぁ……」
「そうですか」
 一夫はあっさりと肯くと、机の上にあった針金クリップを取った。ロックピックの技術でもってさっさと解錠してしまう。相手は唖然とした。それはそうだ。まさか警察官が針金解錠をできるなんて思いもしないだろう。鳩が豆鉄砲を喰らった様な表情に、竜一が苦笑して肩を竦めた。一夫はもう一つの棚を差して、
「こちらも開けて頂けませんか?」
「自分で開けたら良いだろ」
 構成員はそっぽを向いた。
「ご自分で開けた方が、罪が軽くなるのでは」
 そこへ、エスメラルダがやって来た。サイコメトリーで読み取った、他の隠し場所から押収した書類を抱えている。
「ここはわたくしが」
 アタッシュケース・PMG-Sを持ち上げた。これに銃が仕込まれていることを、エージェントたちは知っている。彼女がケースから発砲して鍵を破壊すると、構成員は飛び上がるほど驚いていた。無駄と悟り、残りの鍵については自ら開けていくのだった。

(人誑かしての情報収集は私の得意分野ね。問題はあの子か。上手くコントロールしなくちゃ……)
 カナコはマーダーズアイで殺気を放つ亜紀を気にしながら、内心で溜息を吐いた。これからやるのは、二人で話し合った演技である。その筈だ。そうよね亜紀?
 兎にも角にも、始めないと始まらない。目配せすると、亜紀はサードディグリーで尋問を始めた。要するに力尽くである。腕をねじ上げ、床に倒した。
「喋らないなら殺します。私は本気です」
「ぎゃああ! 痛い! 痛い!」
 関節を外さんばかりに力を入れると悲鳴が上がった。
「駄目よ、亜紀。それはやり過ぎ」
 カナコが割って入った。双方芝居である。これによって、カナコへの態度を軟化させようと言う作戦だ。
「やだ、怪我してる。待って、今手当するわ」
 優しく応急処置を施した。その間に、亜紀は一人に目を付けて物陰に引きずって言った。
「やだーっ! 助けてくれー!」
 どちらかというとパニック映画みたいな悲鳴を上げながら連れて行かれる構成員。彼女は他から見えない位置でその人を気絶させると、疑似輸血パックを自分に浴びせた。口に入るとトマトの味がする。それを舐め取りながら、万能鍵を引きずって戻って行くと、残りは震え上がった。別の一人をまた床に倒し、鼻先に万能鍵を振り下ろして威圧する。
「ひえ……」
「こらこら。止しなさいってば」
「でもお姉様」
「駄目よ」
「はい……」
 亜紀は引き下がった。これは演技だ。しかし、カナコが優しくホットチョコレートなんかを振る舞いながら尋問する様に、嫉妬が抑えきれない。お姉様から優しくホットチョコレート!
 カナコは後ろからその殺気を感じて内心で冷や汗を掻いていた。マーダーズアイとかじゃなくて本気のやつである。
 その本物の殺気と、カナコの丁寧な演技が功を奏し、こちらでも情報を引き出すことに成功した。
「話してくれてありがとう。本当に、心から感謝するわ」
 カナコが優しく微笑み掛けると、また背後から怒濤のような殺気が押し寄せてくるのを感じるのであった。

 一行はそれぞれが得た情報をまとめてA機関に送った。機関の方で整理して、工場の制圧に向かうエージェントたちに渡してくれると言う。担当者によれば、これだけの情報があれば十分で、工場制圧は上手く行くだろうとのことだ。
「後はあちらにお任せしましょう」
 エスメラルダがほっと息を吐きながら、工場の方角を見た。
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