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急募!! 一日メイド!!

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急募!! 一日メイド!!
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◆おじさまメイド

「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様!!」
 ユベルニアにあるメイド喫茶『お帰りなさいませご主人様☆』にやや落ち着いた声色が響き渡った。
 声の主は紫月 幸人 、A機関に属しているエージェントである。
 落ち着いた声色に穏やかな仕草。
 そこに若干の貫禄を感じてしまうのは、彼が様々な死線を潜り抜けてきた証左だろう。
 年相応の穏やかな振る舞いの中に、少しだけ織り交ぜられるスパイスのような危うさ。
 オーナーのウウェ・ユレが「なんでうち執事喫茶も併用しなかったのか」と悔やんでいたくらいだ。

「うん、今日も完璧だよ俺!!」
 ……そう、彼は執事ではない。一日限りのメイドとして働いている『男のメイド』なのだ。

「オジサン、どうしてメイドしてるの?」
 先程、入店してきたお嬢様方に紅茶を楽しんでもらっている時の事だった。
 一人の少女が興味津々といった様子で幸人に語りかけてきた。周りに座っている少女らも面白そうだと頷き合い、幸人の言葉を待っている。

「……なんでいるのかって、そりゃあアレですよ」
 アレ、と幸人は視線を後方へと向ける。
 釣られた少女達が辿り着いたのは、ここのオーナーであるメイド長のウウェだ。
 彼女はじゃんけん勝負をご主人様と楽しんで……いや、あれはチップを巻き上げているのだろうと、幸人は小さく笑う。

「ソコのメイド長に賭けで負けたんですよ。オジサン本職はギャンブラーだからね」
 ここで働く事になったのは、立ち寄った機関の支部での出来事が起因している。
 幸人がウウェという女と別件について話し合っているとき、一つの賭け事を持ちかけられたのだ。
 内容は簡単。負けた方が勝った方の仕事を手伝うというもの。
 負けてもそう酷い事にもならないだろうし、勝てば旨みがある。二つ返事で引き受けたものの……相手のイカサマが多種多様なものが多く、見破っても次の手が立ちはだかる具合であった。
 後で聞いたところによれば、予めカードに香りを付けて人狼の力を使って嗅ぎ分けたり、カードの傷跡をチェックして動いていたそうなのだからえげつない。

「まぁ、オジサンも負けたとはいえカードには自信があるよ。普通に勝負……よりは、お嬢様のことを占ってあげよっか?」
 幸人はタロットカードを取り出し、綺麗にシャッフルしていく。
 こういった年齢の女の子ならば……色恋沙汰が良いだろうか。それとも学校に携わるものが良いだろうか。
 幸人は適当にタロットを引いた、と見せかけながら小アルカナのカードを一枚差し出した。

「これは棒が4本。これからは平和で穏やかな時間が持てる、という意味だったかな。もしかしてだけど、今って忙しかったりしない? 例えば……学業とか」
 笑顔で尋ねてみれば、少女は「そうなんです!!」と食い気味に答えた。
 人間というのは、こういった結果を良い風に解釈をしたり、過去の問題と勝手に結びつけたりしてくれる。
 要所要所でそれらしいアドバイスを投げ、より良い正解へ導いてやれば自分で勝手に落とし所を見つけてくれるものだ。
 つまるところ、こういった占いは人生相談としての側面が強い。
 たとえ引いたカードが偶然ではなく、幸人が選んだものだとしても、悩みの尽きぬ人間にとっては良いガス抜きの場となってくれる。

「……なんだかスッキリしました。オジサンありがとう」
「それは何より。メイド冥利に尽きますよ」
 幸人はタロットカードをしまい、手を振ってくれた少女らから離れた。

「あー、楽しくなってきたわー」
 暫くやってもいいなこれ、何ならこういったタロットで悩み相談をしていくのも、良い仕事に繋がるかもしれない。
 幸人がそんな事を考えつつ店内を歩いていると、不審なグループを発見した。
 小声でぼそぼそと相談している具合だ。店内が落ち着いた内装だからといって、あそこまで声を絞る必要もないだろう。理由があるとすれば……そう、他者に聞かれたくない話、とか。

「……裏の手伝いは片手間になるから、今回はサポートした方がいいかもしれないなぁ」
 例えば、相手が商談やらこちらの邪魔をしにくいように誘導をするのが良いだろう。
 騒がしい客を隣に配置すれば良い隠れ蓑になってしまう。できれば、静かに楽しんでいるような客層を配置して、不穏な会話を牽制させたいところだ。
 後は盗聴器が隠されていないかのチェック。それは店の誰かに任せてしまうのも良い。

「一度メイド長にご相談いたしますかねぇ」
 ついでに、やたら盛り上がっているじゃんけんに乱入してみようか。
 次こそは勝ってみせる。幸人は意気込んでその場を離れ、メイド長の元へと向かった。
 彼がじゃんけんに勝てたかどうか。それは、ウウェと幸人のみぞ知る事である。
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