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<スカイドレイク外伝>元・大カーンの多忙な外遊録

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<スカイドレイク外伝>元・大カーンの多忙な外遊録
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~ ひとつの世界のために ~

 今は抑えこむことでしか対処のできない、人々の不満。それを解消に向かわせる方法は、互いに手を取る――とまでは言わずとも、相手を利用したほうが自分も豊かになると思わせることであろう。
「つまり……いつも通り……技術研究ですね」
「再び各国の技術者を集めて技術交換会を開き、互いの技術を組みあわせた新しい技術を作るのですね。ええ、そして私は、そのパトロンたる令嬢として振る舞えばよい……ああ、そのことにもすっかり慣れてしまいました。昔のお転婆娘だった私こそが間違いで、今の私こそが本当の私……

 ……なわけあるかいにゃー!!!」

 今日も今日とてのルイーザ・キャロルの要求に、リデル・ダイナが激しく抗議した。
「何がいつも通りじゃいー! ほっぺにちゅーくらいの報酬がないと割に合わんにゃ!」
 などとわがまま(とも言えない文句)を言いたい放題しつつ、けれども最初の来賓がやって来る前には、しっかり気持ちをリセットしてみせる。慣れたのは本当だ。できれば、こんなのに慣れたくはなかったけれど。



 議題は、まずは交流の基盤作りからだった。五島連合内はもちろんのこと、ワハート・ジャディーダ国内にもオルド連邦内にも航路が確立されている。ワハート・ジャディーダ-オルド連邦-新龍島の間も繋がっていると言ってよく……あとは、それと五島連合をどうやって繋げるかが重要だ。
「議事進行を」
 リデルがルイーザに指示(するフリを)すれば、ルイーザは同席者たちに紅茶と茶菓子を用意した後にこのようにきり出した。
「まずは……オルド連邦の代表者の方。連邦側は……何を提示でき……各国に……どのような利用を求めるのか……案があればお聞かせ願えますか?」
 この場は敗戦国に無条件の技術提供を要求する場ではない。そう面々に知らしめるための一言だった。ハン国時代には伝令役であったという男はしばし考えこむと起立して、このようにルイーザの期待へと応えてみせる。
「我が国には300年の遊牧の中で培った、近隣諸国の空図と測位技術がある。そして、それはあなた方も同様のはずだ。まずは各国の測位系と測時法を共通化し、相互変換なしに利用できるようにされるのはいかがか?」
 規格化とは軍事力と経済力の強化であることを、誰よりも知る国ならではの意見であった。問題は、どの国を基準とすればいいのかであるが……実のところそれに関してはさほど苦労せずに決まった。スカイドレイク世界の各国が用いる単位系は、各国が特定の分野で慣用的に用いる単位を除いては、どの国でも似たような名前の単位が、数%の誤差内で定められていたことが明らかとなったからだ。であれば、その中で最も厳密な定義を持つ国――五島連合のものを基準とする方向で纏まるのは必然であったろう。
 各国の体系は共通化され、オルド連邦が五島連合の、五島連合がオルド連邦の空図を利用して、誰でも、どこにでも飛んでゆける。交流が増えれば各島間に安全度の高い航路が生まれ、物流コストの低下は富の格差を是正する。
 ではそれを利用して、何を互いに交易するのか?
「星導工学者の意見としては……オルド・ハン国が侵略路線を必要としたのは……」
 オルド人が拡大路線を取らねばならなかった最大の理由として、彼らが生活を依存する飛竜の群れを維持するために、大規模な領空面積が必要であるためとリリアン・プロモートは試算していた。
 個体あたりの必要資源量のみで言うなら五島連合の牛やワハート・ジャディーダの羊より遥かに経済的なれど、飛竜は、彼らが肉食であることがメリットをうち消して余りある。牛や羊は主食となる植物を星導器や魔術で比較的簡単に栽培できるが、飛竜には人工的な制御の埒外にある、野生生物の存在が不可欠だからだ。
 事実、リリアンのフィールドワークの結果は、オルド人の長年の飛竜の遊牧により、オルド共和国を中心とした空域の生物資源量が他空域と比べて有意に落ちこんでいる証拠を示唆していた……オルド人には、そのぶんを補う方法を見つけることが急務。一方で、彼らの飛竜素材やその加工技術の中には、諸外国にとっても有益なものが含まれている。もちろん飛竜兵自体も有益な対空戦闘要員だ。
「食糧と……技術……。貿易品目としては……互いに魅力的なものではないかと思うのですが……いかがでしょうか?」

 各国が具体的にどの程度を輸出に回せ、どれだけの需要を見こめるのかという突っこんだ話になると流石にこの場で応答できる各国担当者も減ってはきたが、それでも明らかにおかしいという声が上がらなかったあたり、リリアンの推定はそれなりに各国人の肌感覚と合致するものだったのだろう。
 ……はい、思わず研究に没頭しすぎてましたね。ルイーザもリデルも外交に根回しに忙しかった傍で好き放題調査に感けてたけれど、これも必要なことだったので。



 何にせよ、この日、ビジョンは共有された。
「皆さんで……全ての人々が手を取り合い、スカイドレイク連盟に輝かしい未来を」
「各国の皆様が……この世界を……導いてくださることを願って」
「これから皆で……明るい未来を」
 そんな世界に向けて、ルイーザらは羽ばたいてみせる。
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