クリエイティブRPG

今宵、満ちた月の下で。

リアクション公開中!

 103

今宵、満ちた月の下で。
リアクション
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11  Next Last
 

 ウキウキと浮かれてた様子で京の大路を連れ立って歩く迅雷 火夜夢風 小ノ葉の後を、きょろきょろと辺りを見回しながらガーネット・スライトリーはついて行く。

「わーい♪お月見お月見〜♪またお月見いけるなんて火夜ちゃん嬉しいな〜♪」
 火夜が笑う。
「お月見♪お月見〜♪またお月見いけてボクも嬉しいな〜」
 小ノ葉も笑う。
「お月見ってなんだ?」
 ガーネットは二人に問いかける。
「お月見は綺麗なお月様見るの楽しむことだよー」
 小ノ葉がクスクスと笑いながら答えた。

 彼女たちの楽しげな様を見て、ガーネットは月見の何が楽しみなのかよく分からずについてきたものの、大路の店先にあるお供物を子供達が嬉しそうに取っていくのを、『そういう』イベントなんだと理解した。

「お菓子貰えるイベントだなんて楽しそうじゃねーか!あたしも一緒に…」
「ガーネットはオトナだからダメだよー」
「うん、ガーネットはダメー!」
 口々にそう言われて、ガーネットは愕然とする。
「って、あたしは駄目なのかよ?!年齢制限があるなんてよー…かっーなんてケチなイベントだぜ!」
 ガリガリと乱暴に頭を掻きながらガーネットは不貞腐れた。
「お菓子取るときは……そう! トリック・オア・トリート! って言うんだよね〜」
 火夜は店先の棚に並べられたお菓子に狙いを定め、タンっと土を蹴る。

「待ったー!!」

 小ノ葉が駆け出した火夜に叫ぶ。
「え? なんだ?」
 小ノ葉が伸ばした手をスルリと逃れて走る火夜に、ただならぬものを感じ取ったガーネットが慌てて捕まえに走る。
「ちょっとちょっと!トリック・オア・トリートって言おうとしたでしょ?! お菓子泥棒はハロウィンじゃないからそんなこと言わなくてもお菓子貰えるの! ボク学習したから! ……って聞いてる?! 火夜ちゃん聞いてないでしょ?!」
 なんとか捕獲に成功した火夜に、小ノ葉はガミガミと小言をいう。
 ガーネットに羽交い締めにされ、じたばたと足掻く火夜は小ノ葉の言うことなどお構いなしだ。
「え〜でもそんなの火夜ちゃん知らないも〜ん♪火夜ちゃんがトリック・オア・トリートって言ったらトリック・オア・トリートなんだよ〜だ!」
「何がトリック・オア・トリートだ! コソコソしながら貰えって!」
「ちょっと赤ガミガミおねーさん邪魔しないでよ〜」
 バーカバカバーカ! と悪態を吐きながらも火夜はなんとかガーネットの拘束から逃れた。
「だぁ〜れが赤ガミガミおねーさんだぁ?! 頭ぽやぽや娘が! うるせぇバーカ!」
「あーもう!……ってガーネットもそんなバタバタしないで! ついでに口喧嘩もやめて!」
 ぎゃあぎゃあ言い合いながら店先へと向かう二人を、遠巻きに『お月見泥棒たち』が見つめている。
「トリック・オア・トリート!」
「だからそれはちげぇだろ!」
 なんだか楽しげに見えるのが癪である。
「……はぁー……」
 小ノ葉はひとつ大きく息を吐くと、火夜達の後からコソコソお菓子を貰いに行く。
「……お騒がしくしちゃってごめんね?」
 ばつが悪そうに、へにゃりと眉をさげて、小ノ葉は『お月見泥棒』に言った。
「気にせんかてええよ! なんやよう分からんけど、ウチらも楽しぃよって!」
 そう言うと何やら口々に「とりっくおあとりーと?」と拙い呪文を唱えながら、お月見泥棒を再開する。
「いや、だからそれは違うんだって!」
 泡を食って小ノ葉はお月見泥棒を追いかけた。

「なぁなぁもちろんあたしにも菓子くれるよな? くれるよな? な? な? なぁ?」
 ウザ絡みとも言えるほど、ガーネットは火夜と小ノ葉に戦利品の菓子をねだる。
「座れそうなところに座ってお菓子食べよう! ガーネットには一個もあーげない♪」
「うん! お菓子食べよう♪ボクもさっきから煩いガーネットにはあーげない! あっかんべーだ♪」

「……なんでくれねーんだよ?! このドケチ共がー!」

 月に吠える。
 ガーネットの切ない叫びは、京の澄み切った夜空に吸い込まれていった。
「あーあ、マスターがいてくれればなー……んなこと言っても仕方ないか……菓子くれねーなら鼓で演奏でもするか! 綺麗なお月さんもきいてくれよ!」
 気を取り直したガーネットは、鼓を取り出し構えた。
 ポン……と、乾いた音が響く。
「前はお兄ちゃん演奏してたけど〜、ガーネットはヘッタクソだね〜」
 金平糖を口に放り込みながら、火夜が言う。
「確かにおにーさんも演奏してたねー…おにーさんのフルートは上手だったけど…ガーネットはヘッタクソだね?どうやって叩いたらそんな音でるの?」
 呆れたように、小ノ葉もそれに同調した。
「……下手くそ言うなし!? 初めて演奏すんだから仕方ねーだろ!?」
 ムッとしながら、羞恥に頬を染めたガーネットが目をついと逸らせた。
「あ、照れてる〜」
「照れてるんじゃないよ、恥ずかしがってるんだよ」
「あー、うっせぇんだよ! そのうち上手くなるんだから、そン時ゃ吠え面かくなよ!」
 言いながらガーネットが再び鼓を打つ。
 カン……と、明らかに間違った場所を打った音が、大路に響き渡った。

「……呼ばれても行かねーぞ俺は……ガーネットが絡むとマジめんどくせーからな……にしてもマジで下手くそな演奏だぜ……」
 大路がよく見えるように、屋根の上に登った迅雷 敦也は、手にして来た甘酒を飲みながら月を眺めていた。
(お守りならガーネットに任せときゃいいかと思ったが……やっぱ駄目だな……)
 お月見泥棒をしている小ノ葉と火夜、それに付き添うガーネットの様子を見守っていたものの、コドモにコドモの世話を頼んだのが間違いだったと今更ながらに思った。
「しっかし、俺が一緒のときも菓子くれなかったが……歳俺より離れてない同性のガーネットにも菓子やらないのかよ……」
 眼下ではきゃいきゃいとはしゃぎ声が上がる光景が繰り広げられている。
(あ、知らない子に菓子もらってら)
 お捻りがわりなのか、ガーネットに手渡される饅頭。それでも尚且つ自分たちの菓子を分けてやらない火夜と小ノ葉。
「……いや、ガーネットだからやりたくねーってかもな」
 ひとりごちて甘酒の瓶を傾けると、ポトリと一雫落ちるばかりだ。
「ま、もうそろそろ良い頃合いだろう」
 敦也は、とっておきの酒を取り出す。
「先ずは一献」
 盃に月を浮かべる。
「お月様みながら飲む酒は旨いぜ……高いとこからだからかすげー綺麗に月見えるし……花見のときよりかは心晴れたから……少しはうまく感じるのかもな……」
 月を肴に、盃を傾ける。
「……っにしても、騒がしいな……火夜たちだし騒がしいのは当然か……」
 騒がしくした分は、あとで店の人にきちんと謝罪しておこう。ファミリーの頭領であり、火夜の兄貴でもある俺が謝るのが道理ってもんだ、と思いながら敦也は小さく笑った。

 
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11  Next Last