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それぞれの世界での夏祭り・7

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それぞれの世界での夏祭り・7
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■ロディニアで盆踊り


「……夏祭り……行って、お手伝いをしたい」
 貰ったチラシを見るエルミリア・ライガーが目を止めたのは、ロディニアの項目。
「ふむ、ギルティアス神災などの犠牲者の方、棄教者の方の悲しみを少しでも癒したいんじゃな?」
 傍らのゲルハルト・ライガーは、察した。エルミリアの表情の意味も。
「うん、ギルティアス神災などで亡くなられた方の遺族や縁者が四十九日、百箇日を経て故人にお別れをした後、初めて迎える新盆だから……盆踊りや精霊流しを開催して、大切な時間を過ごす事が出来ればと……」
 エルミリアは、トーンを落として思いを語る。失った命、残された者の憂いの顔が蘇り胸の奥が重くなる。
「お盆か……日本由来のしきたりではあるが、故人やご先祖との時間を大切に過ごすことは間口も広い。受け入れられると良いな」
 優しい心根を持つエルミリアが誇らしいゲルハルト。
「じゃぁ……」
 ゲルハルトの口調からエルミリアは察したのか、見上げる表情が少しずつ明るくなった。
 つまり、
「協力しよう」
 ゲルハルトは何かをしたいというエルミリアの思いを汲み、力添えをする事に決めたのだ。
「ありがとう、じいじ」
 エルミリアは、頼りになる助っ人に心から満面な笑みを浮かべた。
「早速、準備をするか」
 と言うなり、ゲルハルトは一足先にロディニアに赴き準備に取り掛かった。
 その準備ぶりはというと、
「少々、頼みたい事があるのだが」
 ゲルハルトは、表の顔の大学教授として各界のコネで後援者を募集していき、盆踊りの開催・運営に必要な資金・資材・要員を調達していった。
 しかも、必要な物を調達するだけでなくエルミリアと共に『盆踊り準備会』を組織して準備と運営の事務局機能を取り仕切っていった。

 快晴の夜、ロディニアの閉園中の遊園地『ピアリィ・ランド』。

「じいじ、似合ってるよ」
「エルミリアも、似合っておる」
 『盆踊り準備会』の者として、現場に来た水色の浴衣のエルミリアと祭りの法被のゲルハルトは、互いの恰好を褒め合った。
 そこに、
「やっと、来た来た」
「櫓というのが出来ましたよ」
「教授とお孫さん、お願いします」
 集めたボランティアの者達がやって来た。
 ボランティアの案内で、櫓が設置された広場に向かった。

 会場に到着するなり二人は揃って、櫓に上がった。
「準備はよいか? 太鼓を鳴らすぞ?」
 ゲルハルトは太鼓の前に立ち、撥を手に持ち構える。
「……いつでもいいよ!」
 エルミリアは深呼吸をしてから、覚悟を決めたとばかりに凛々しい表情で合図を送った。
「よし」
 ゲルハルトはどんと、勢いよく撥を叩きつけ腹に響く重低音を会場に響かせる。
 続けて、
「♪♪(あの事件以来、高校の生徒も半数がいなくなって、亡くなった子もいる、家族が亡くなって働きに出た子もいる、不登校になった子もがらんとして、席にお花が飾ってある教室)」
 エルミリアがマイクと小型スピーカーが一体となった【BC】マジカルマイクを通して、≪歌唱Ⅱ≫の見事な声量を発揮させ、カディヤックヒルズ音頭を朗々と歌い始めた。ボランティア達がさくらとなり盆踊りを踊り始める。
 途端、
「何か始まったぞ」
「俺達も参加してみようぜ」
「面白い踊りね」
 太鼓、歌、踊りに誘われ次々と客達が盆踊りに加わり始めた。
「はぁっ」
 ゲルハルトは太鼓を打ち続け、
「♪♪」
 エルミリアは歌を続け、ロディニアの住民達や仲睦まじい夫婦に素敵な思い出作りの手伝いをする。
 ふと、頭上に爆ぜて色鮮やかな花火が咲き誇る。
「♪♪(花火、綺麗)」
 エルミリアは、気付いて眺めながらも歌をやめるわけにはいかず、感動を胸に収める。
「♪♪(見事な花火じゃ)」
 ゲルハルトも花火を楽しみながらも太鼓を叩き続けた。
 幾つかの花火が打ち上がった所で、
「じいじ、踊って来るよ」
 エルミリアはゲルハルトに言い置いてから櫓からおりて、踊りの輪に加わった。
「♪♪」
 夏祭りを盛り上げるために踊るエルミリア。
 時折、エルミリアは知った顔を見つける度に、
「8月が終わったら卒業だから、高校ではもう会えなくても、お祭りくらい一緒に遊ぼ?」
 明るい調子で声を掛けて手を引っ張って踊りに引っ張り込んだり、
「久しぶりだね、元気だった? 盆踊り楽しいよ! 一緒に踊ろ?」
 笑顔で再会を喜び踊りに誘ったり、
「前みたいには無理でも新しく友達になろうよ!」 
 落ち込む相手を励まそうと必死になったりと夏祭りを盛り上げるだけではなく、ロディニアの住人達の心に寄り添うのも忘れない。
 最後は精霊流しに参加し、
「お父さん、お母さん、今年も来てくれてありがとう。私、元気だよ!」
 エルミリアは愛する故人の霊を弔った。
 そんな彼女の横顔をゲルハルトは家族として気遣い気に見守りつつ、
「…………」
 故人の霊を弔った。

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