■一曲、踊ろう
快晴の夜、神州扶桑国の六明館学苑。
「賑やかだな」
花瓶に持参した花束を生けつつ男性用礼服を着た
春夏秋冬 日向は、踊りを見て学んだり血刀士達の手合わせを見学する。
日向が『天眼』の夜なんぞ関係ない視力を使うのは社交ダンスだけではなく、
「問題はダンスだけではないな。相手がいなければ始まら……ふわぁ」
相手だ。とは言え、欠伸がこぼれる。
「っと、折角の夜会で寝落ちはシャレにならねぇ。眠気覚ましに……」
眠気に負けまいと、グラスを給仕に貰い眠気が吹き飛ぶコークフィアを注ぐ。
「……俺みたいな奴がいるな」
コークフィアを飲みながら周囲を見る日向は、椅子に座り眠気と戦う16歳の少女血刀士を発見。
もう一人分のグラスを貰いコークフィアを注いでから、
「こんばんは、眠気覚ましにどうだ?」
声を掛け、コークフィアを差し出した。
「……ありがとう。眠るのが好きだし、いつも眠たそうとか言われてるんだけど、今回は起きてたいと思って、友達をがっかりさせたくないから……」
少女は貰ったコークフィアを飲みながら、料理物色中の同い年の少女をちらり。
「では、コフィアクッキーもどうかな」
炭酸が苦手な人にと思っていたコフィアクッキーを差し出した。クッキーの苦味が目覚ましになればと。
「ありがとう、わたしは余川 橘(よがわ・たちばな)。よろしく」
橘は、貰ったコフィアクッキーをもぐもぐしながら名乗った。
日向も名乗ってから、
「よければ、一曲どうだろうか?(ダンスは男から誘うものだと聞いたからな)」
手を差し出し、ダンスに誘った。
「いいけど、踊りなんて知らないよ」
橘は、差し出された手に戸惑うばかり。
「俺も踊った事は無いが、こういうのは技能云々ではなく楽しんだ者勝ちだ」
日向は彼女を励まし、不敵な笑み。
「うん、じゃぁ、眠くなる前に」
笑みに釣られ、橘は手を取った。
日向は、『不退転の決意』を胸に橘と共に踊りの輪に加わり、
「♪♪(他の人の動きを見て踊り方を再確認して、彼女をリードする。楽しんで貰う為に努力は惜しまねぇ)」
『天眼』の冴えた目で周囲の踊りに合わせ、
「♪♪(足を踏まないように)」
『霊醒』を発揮させ、橘の動きを予想して足を踏まないように、
「♪♪(他の人にぶつからねぇように)」
『制霊圏』を展開させ、他の人にぶつからぬように気を付けながら踊る。
「♪♪(楽しそうだな……眠そうだが)」
日向は、橘の表情に楽しさと眠たさを見て取った。