■葦原島の夏祭り
快晴の夜、葦原島の夏祭り会場。
「うわぁぁ」
この地を訪れた
潮浜 七海は、眼前に広がる夏祭りに歓声を上げ、興奮気味だ。
「よーし、今夜は夏祭りを思いっきり楽しむぞー」
七海は元気いっぱいに祭りの輪に加わった。
「賑やかだなぁ。何か、楽しくなっちゃう」
賑やかな祭り囃子、通り過ぎる人達の笑顔、美味しい匂い、五感で祭りを感じる七海は心が踊り声が弾む。
ふと、
「わぁあ、りんご飴!」
夏祭り定番の一つであるりんご飴の屋台を前方に発見し、好奇心から立ち寄り、
「一つ、お願い……どれも美味しそう」
人差し指を立てて、年老いた男性店主に注文した。
「可愛いお嬢さんには大きいのをあげようかね。祭りを楽しんでおくれ」
店主は七海の楽しそうな様子に嬉しくなったのか、並んだりんご飴の中で一番大きなものを選んで渡した。
「ありがとう!」
七海は礼を言ってりんご飴を受け取り、
「んーー、甘くて美味しい」
早速ひとなめ。口の中に広がる甘さにいい顔だ。
七海はりんご飴をお供に夏祭りを歩き回る。
「ん、アクセサリーも売ってるんだね」
りんご飴を大分食べた所で、七海が足を止めたのは装飾品を販売する露店。
「手裏剣に桜の形に葦原島の形……この島ならではのデザインばっかり!」
並んだ髪飾りや腕輪やストラップなどのデザインに巡らす目を楽しませる。
「どれにしようかなぁ……これにしよう!」
七海は大いに迷ってから、気に入りを見つけ購入した。
りんご飴を味わうだけでなく射的やヨーヨー釣りなど、遊戯屋台にも果敢に挑戦する。
最中。
「…………この匂いは」
鼻に入って来たいい匂いに好奇心がくすぐられ、自然と足がそちらに向かう。
着いた先にあるのは、
「たい焼き!」
たい焼きの屋台。
七海は迷う事無く一個購入し、
「んーー、美味しい! 生地はもちもちであんこたっぷり!」
パクリ。頭から尾までみっちりと詰まった餡子ともちもちの生地が織りなす美味なるハーモニーに舌鼓を打つ。
その時、
「ん?」
頭上から盛大な破裂音が聞こえ、
「あっ、花火!」
七海は思わず足を止めて仰ぎ、両の紫の瞳にカラフルに点滅する光の花々を映り込ませた。
「…………綺麗」
七海はそっと感嘆を洩らした。
この後も、七海は夏祭りを存分に満喫した。