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それぞれの世界での夏祭り・7

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それぞれの世界での夏祭り・7
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■騒々しい夏祭り


 快晴の夜、ツァンダ、夏祭りの会場。

「屋台を手伝ってくれてありがとう!」
 小鳥遊 美羽は射的とヨーヨー釣りの手伝いを顔見知りにお願いし、快諾して貰ったのだ。
 その顔見知りとは、
「おう!! 俺達を面白そうなもんに誘ってくれてありがとなー」
「そうそう、オレ達がばっちり手伝うぜ! 夏祭り向けの発明品も試せるしな!」
 双子の兄弟のヒスミ・ロズフェルとキスミ・ロズフェルだ。
「盛り上げてくれるのはいいけど、もし……」
 美羽は可愛らしい顔を少し怖くした。
 言い終わる前に、
「大丈夫だって。な、キスミ」
「おう、そうだぜ」
 これまでの経験から察したロズフェル兄弟は、速攻で否定した。脳内に美羽の見事な蹴りを思い出し恐々。
「ふふふ、賑やかですね」
 隣で食べ物系の屋台をするベアトリーチェ・アイブリンガーは、三人の賑やかぶりに笑む。
「二人共、甚平、似合ってるよ♪」
 美羽は、改めてロズフェル兄弟の揃いの甚平を褒めた。
「夏祭りだからな!」
「そっちも、浴衣、似合ってるぞ」
 ヒスミとキスミは、美羽の可愛らしいミニ浴衣とベアトリーチェの落ち着いた柄の浴衣姿を褒めた。
 四人で和むのもお客が来るまでのひとときまでだ。
 客が来れば
「いらっしゃい! 楽しい射的とヨーヨー釣りだよ。射的は素敵な賞品がいっぱいそろってるよ」
 美羽は笑顔を煌めかせ歓迎する。
「俺達が、発明した魔法と夏祭りの融合を楽しんでくれ!」
「ただの射的やヨーヨーとは一味違うぞ」
 ロズフェル兄弟も悪戯な笑顔で迎える。
 その言葉通りただの射的とヨーヨーではない。
「何だこれ!?」
「可愛い見た目のくせに反撃がえげつねぇ」
「邪魔すんなよ!!」
 射的では法被を着た兎のぬいぐるみが空気砲を発射し、客の弾道を乱し邪魔をする。
「うわっ、なんだこれ爆発したぞ!」
「キラキラ光ってきれぇ」
「見た目だと、どれがはずれか当たりかわからねぇな」
 ヨーヨー釣りでは、見た目が普通と思いきや取った瞬間はずれは爆発し、当たりはキラキラと光るというドキドキ感をはらむ。
「ふふふ、二人のおかげで大繁盛だよ♪」
 美羽は、ひっきりなしの忙しさにニンマリ。
「当然だ!! オレ達が手伝うからには大繁盛間違いなしだからな!」
 キスミはドヤ顔で言い放った。
「追加のヨーヨーを入れるぞーー!! 次のはとっておきだー」
 ヒスミは喜々として、ヨーヨーの追加を行った。

 一方。
「美味しいりんご飴と、わたあめはいかがですか? 冷たいラムネとチョコバナナもありますよ」
 ベアトリーチェの飲食系屋台はというと、
「ラムネのしゅわしゅわ最高だな」
「夏祭りっといたらわたあめだよ」
「バナナにかかってるチョコ、凄い美味しい!」
 料理上手を思いっきり発揮させ他店よりも、客を多く引き込んでいた。
「お買い上げありがとうございます。どうぞ、夏祭りを楽しんで下さいね」
 何よりも店主であるベアトリーチェの笑顔が客の心を和ました。

 快晴の夜、ツァンダ、夏祭り会場。

「さすが蒼空学園があるツァンダの夏祭りだな。日本の夏祭りで見るような屋台がいっぱいあるぞ」
 星川 潤也は屋台群を見回し、見覚えのある屋台がちらちらと目に入っては懐かしさを覚える。
「来たからには楽しまなきゃもったいないわね」
 アリーチェ・ビブリオテカリオも、可愛らしいミニ浴衣を着ていたりと言葉以上に楽しむ気満々だ。
 早速、
「りんご飴、美味しいわね」
「たこ焼きも美味しいぞ」
 アリーチェはりんご飴、潤也はたこ焼きを食べながら屋台を見て回る。
「んー、何かお土産になる物を買って帰らないとなぁ」
 潤也は楽しみつつも、頭によぎるのは奥様の事。新婚さんなので尚更だろう。
「お土産ねぇ、食べ物もいいだろうけど、アクセサリーとかどうかしら? 形に残るわよ?」
 アリーチェはりんご飴を食べつつ、気遣いから助言をした。
「アクセサリーか、それいいな!!」
 潤也にとって大層参考になる。
「ま、まあ、あんたが選んだ物なら何でも喜ぶだろうけど」
 アリーチェは、りんご飴の最後の一口をもぐもぐしながら乙女心を説く。口調とは裏腹に心根は優しい女の子だ。
 ここで、
「あら、美味しそうなわたあめとチョコバナナね」
 アリーチェは、ベアトリーチェの屋台に出会った。
「はい、りんご飴やラムネもありますよ」
 ベアトリーチェは控えめながら、素敵な笑顔でアリーチェ達を迎えた。
「ラムネを頼もうかな。丁度、喉が渇いたし」
 潤也はラムネを注文し、たこ焼きと一緒に食べたり飲んだり。
「わたあめをお願いするわ」
 甘い物が好きなアリーチェが注文する物は、決まっている。
「……あの二人……」
 たこ焼きを食べ終えラムネを飲む潤也が隣の屋台の騒がしさに惹かれ、見てみると顔見知りの双子を発見。
「屋台のお手伝いをしてくれているんですよ」
 ベアトリーチェが簡単に事情を教えた。
「……大丈夫かしらね」
 彼らの前科を知るアリーチェは心配しつつ、綿飴をパクリ。
「でも、面白そうだし、覗いてみよう」
 ラムネを飲み終えた潤也は、隣の屋台へ行った。
「チョコバナナをお願いするわ」
 アリーチェは綿飴の次にチョコバナナを注文し、ひとまず見学に徹した。

「久しぶり! 面白そうな事をしているな」
 潤也が美羽の屋台に登場。
「久しぶり!」
 ロズフェル兄弟は、揃って再会を喜んだ。
「おいおい、それ結婚指輪じゃん」
「結婚したのか?」
 ロズフェル兄弟は、潤也の指に嵌まる結婚指輪に気付き、びっくり。
「あぁ、最近したんだ」
 潤也は、照れと幸せが混ざった表情で報告した。
「おめでとう!!」
 ロズフェル兄弟は揃って心から祝った。
 そこに、
「いらっしゃい!! じゃんじゃん楽しんでいってね!!」
 他の客の相手を終えた美羽が現れ、笑顔で歓迎した。
「じゃぁ、まずはヨーヨーに挑戦だ」
 潤也はヨーヨー釣りに挑戦した。
 挑戦に成功しヨーヨーを水から出した瞬間、
「このヨーヨー光るんだな。水中ではただのヨーヨーに見えたのに」
 潤也は、ヨーヨーに起きる異変にびっくり。
「綺麗だろ!!」
「びっくりしただろ!!」
 ロズフェル兄弟は揃ってドヤ顔だ。
「確かに面白いな」
 潤也は、手の平で煌めくヨーヨーをつきながら言った。
「射的も面白そうだな」
 ヨーヨー釣りの次は射的が気になる潤也。
 標的として並ぶ商品の中に
「あのブローチ、似合いそうだな……」
 可愛らしい箱に入った魔法で七色に輝くブローチを発見。同時にブローチを身に着ける奥様の姿を想像し、挑戦する事にした。
「反撃されるとか、大変そうだけど、絶対に取って帰るぞ」
 潤也は銃にゴム弾を詰め込み、『シャープシューター』の技術を生かし、標的にしっかりと狙いを定め撃つ。
 しかし、
「くっ……」
 厄介な反撃に遭いゴム弾は明後日の方向に。反撃がなければ見事に打ち倒していただろう。
「この程度であきらめるもんか! 絶対に取って見せる」
 潤也は妻のためと強い決意で表情を一層引き締め、引き金を引く。
 そうして、潤也が射的に挑んでいる間。
「楽しそうじゃない。あたしもやってみようかしら」
 チョコバナナを食べ終えたアリーチェが参戦。
「是非是非!」
 美羽が歓迎した。
「おう、是非やって行ってくれ」
「オレ達の力作だぞ!」
 ロズフェル兄弟も顔見知りという事で一層歓迎し、ドヤ顔だ。
「……力作ね」
 アリーチェは、ロズフェル兄弟の前科から警戒の一瞥をしてから、
「これにしようかしら」
 可愛らしいヨーヨーに狙いをつけ、こよりを水に浸す。
 そして、
「取ったわ」
 アリーチェが目的のヨーヨーを釣り上げると同時に、
「よしっ、取ったぞ!」
 潤也が反撃を視野に入れた読みと『シャープシューター』の技術を生かし、標的を打ち倒し、見事にブローチを手に入れた。
 アリーチェが釣り上げたヨーヨーは、
「……どうやらはずれだったみたいだけど、何かおかしいわね」
 煌めかない所か、妙な音を立てて始めるなり、
「はぁあ!!」
 ヨーヨーを頭上に投げ、
「あぁ、やっぱり双子の発明品が暴走しちゃったかぁ。しょうがないなぁ」
 この先の展開を察した美羽は、溜息を吐くなり【バーストフライ】で、魔力による足場を形成し、空中を高速移動し今にも爆発しそうなヨーヨーを全力で蹴り上げへ、空の彼方へと押しやる。
 続いて、
「はぁぁあ」
 念には念をとアリーチェが、ロズフェル兄弟が巻き込まれないように加減をした『烈風脚』による蹴りと衝撃波で、二人揃って蹴り飛ばした。
「ぐわぁぁぁ」
 ロズフェル兄弟は見事に蹴り飛ばされ、地面に蹲った。
 美羽が蹴り上げたヨーヨーは空の向こうで爆発し、地上に伝わるのは僅かな衝撃だけで済んだ。
「お疲れ」
「うん、無事夏祭りを守る事が出来たね♪」
 アリーチェと美羽は互いを労い安堵し、和やかな空気が戻った。
「いやいや、俺達は守られてねぇぞ」
「すげぇ、いてぇ」
 蹴られた所をさすりながらロズフェル兄弟は、盛大に文句を垂れた。
「まったく……助けてあげたんだから、文句言うんじゃないわよ」
 アリーチェは腕を組み、ぴしゃりと言い放った。
「なんだよぉ」
「痛いんだぞー」
 ロズフェル兄弟は、ますます痛みと不満をあらわにする。
「ヒスミさん、キスミさん、大丈夫ですか?」
 心配したベアトリーチェがやって来て優しい言葉と一緒に、
「今、回復魔法をかけますね」
 『リカバリ』で、蹴られた痛みを回復した。
「もう、痛くねぇ」
「ありがとうなー」
 痛みから解放されたロズフェル兄弟は、大仰に感謝した。
「何かすごい事が起きたな」
 潤也が驚きつつ言葉を挟んできた。
「爆発素材の量とか種類を色々試しててさ。やっぱりオレが言った通り、もう少し量を減らした方が……」
 キスミがごにょごにょと事情を話し、
「面白そうって、賛成したじゃんか」
 ヒスミは口を尖らせる。
「つまり二人共、悪いって事ね」
「これは全部、回収だね」
 覚えのある展開に、アリーチェと美羽に容赦なんぞ一切ない。
 結果、速やかに暴走品を回収し、事なきを得たもののイルミンスール魔法学校の方に情報がいき、双子は日頃の生活態度と合わせて長時間の説教を受けたという。

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