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それぞれの世界での夏祭り・7

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それぞれの世界での夏祭り・7
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■遠い夢と隣の友


 快晴の朝、ザンスカール。

「お待たせ!」
 壬生 杏樹は、待ち合わせ場所に先に来ていた二人に声を掛けた。
「おう。というか、どうしたんだ、そのカッコ?」
 シルヴィア・ベルンシュタインは、挨拶もそこそこに杏樹の恰好にツッコミを入れる。
「少し前に見てた夢の事を思い出して、折角だから……というかシルヴィアのその服は?」
 と答えた杏樹の服装は家紋が刻まれた上品な革の鎧、家紋のバトルドレス【ドレスアーマー】だ。
「アタシもおんなじ夢を見てさ。何か奇遇だよな」
 訊ねるシルヴィアの格好はメイドであった。しかも見るからに戦闘力が高そうである。
「まあ、お二人共、同じ夢を……凄い偶然ですね」
 リーリエ・ディアマントは、二人の身に起きた偶然に驚くばかり。
「んじゃ、行くか。海で釣りをするんだろ」
 杏樹からの誘いを受けシルヴィアの手には釣り道具一式、背中には土産やらを詰め込むための境屋印のリュックサックと準備万端だ。
「うん、のんびりとね」
 杏樹はウキウキと行く前から楽しそうである。
「海までこれに乗って行こうぜ!」
 シルヴィアは、隣に停めてあるサイドカー付きバイクCerberusに跨り二人を促した。
「では、マスターはサイドカーにお乗り下さい。私は後部座席に失礼致しますね」
 乗りやすい場所を杏樹に譲り、リーリエは後部座席に跨った。
「うん、ありがとう」
 杏樹は礼を言ってから、サイドカーに乗った。
 皆が乗り込んだ所で、シルヴィアはCerberusを発進させ、『メイドさんネットワーク』を使い予め入手した情報を元に走りやすいルートを選び、『御者の心得』を活かしたバイクテクニックで、悪路だろうが関係無しに進んだ。

「到着♪」
 シルヴィアが運転するバイクは無事にパラミタ内海近辺に到着。三人はバイクを降りた。
 そして、
「早速、アタシは釣りに行って来るぜ! 期待しててくれ」
 シルヴィアは釣り道具一式を持って海の方へ。
「うん、期待しているね。私達は近くで料理の準備とかのんびりしているから。ね、リーリエ?」
 杏樹は、期待に満ちた様子で見送ってから隣のリーリエに目配せをした。
「はい。お待ちしていますので、是非大物をお願いします」
 リーリエは杏樹に頷いてから、同じくシルヴィアに期待の言葉を投げた。
 残った杏樹とリーリエは、シルヴィアが魚を持ち込んだ際すぐに調理出来るように準備を始めた。

「さぁて、穴場を探すとするか」
 シルヴィアは、『野生の勘』を利かせて、釣りの穴場探しのため、砂浜をうろうろ。
「よし、ここが良さそうだ」
 何とか最適な場所を見つけたシルヴィアは足を止め、
「言ったからには絶対に釣るぜ」
 釣り竿に餌を付け海に目掛けて放り投げた。
 しばらくして、
「まず一匹! 大物だ!」
 大物を釣り上げる。
 それをきっかけに、続々と魚を釣り上げ、適量になった所で二人の元へ帰還した。

 シルヴィアが釣りに励む間。
「日除けのためのパラソルはここでよろしいでしょうか?」
「うん、ここにしよう! 椅子とテーブルも広げるね」
 リーリエと杏樹は、近くの海の家から借りたパラソルを立てて折り畳み式のテーブルと椅子を広げた。
 続けて、
「食器と……」
 杏樹は人数分の食器を並べ、物言いたげにクーラーボックスをちらり。
「冷たい飲み物の準備も万全です」
 察したリーリエがクーラーボックスの蓋を開けて、キンキンに冷えたジュースを見せた。
「あとは、期待して待つだけだね!」
 杏樹は椅子に座って一息入れようとした所に、
「戻ったぜ! これだけありゃ、十分だろ」
 シルヴィアが帰還し、バケツを砂浜に下ろして大漁ぶりを見せつけた。
「十分どころか、ご馳走だよ!」
 杏樹は大層喜び、拍手を送った。
「暑い中、お疲れ様です。冷たい飲み物がありますよ」
 リーリエは、飲み物が入っているクーラーボックスを示した。
「ありがとうな」
 シルヴィアは、クーラーボックスから飲み物を取り、
「んー、冷たくて美味しいぜ」
 ゴクリ。乾いた喉が一気に潤う。
「では、皆で調理をしましょう」
 リーリエの提案を受け、皆で調理という事になった。
「まずは手分けをして下処理だね。火を起こすのは任せて」
 杏樹はエアストダガーを使い、鱗や内臓をとったりと下処理をしてから『ファイアーボール』を起こし、
「ちょうどいい火力に調節して……(……なんで私、こんな知識持ってるんだろう? きっと夢の中に出てきたんだろうね)」
 『魔法知識』を活かして火力を調整して、ガスコンロの代わりにして使う。ほんの少し脳裏に夢の中の自分をよぎらせながら。
「あ、そうそう、お味噌汁をどこでも味わえる味噌玉を作ってきたよ。さすがに内海の水はそのままじゃ飲めなさそうだから、ボトルに入れてきた水を沸かして、一緒に食べよう」
 杏樹は、用意しておいた味噌玉を使って手際よく味噌汁を完成させる。
「お、いい匂い♪ こりゃ、アタシも腕を振るわなきゃな」
 漂って来る優しい味噌の匂いに鼻をひくつかせてから、シルヴィアは『レディー・スイーツ!』で清潔に保ち、下処理を始めた。
「折角ですから、シルヴィア様、この機会にメイドらしい淑女の嗜みも……」
 リーリエが楽しそうに言うも、
「いやぁ、アタシには似合わねーと思うぜ……? ま、こうしてみんなで一緒に料理したりするのは結構楽しいんだけどな」
 シルヴィアは丁重にお断りする。
「そうですか。とてもお似合いだと思うのですが……またの機会に致しましょうか」
 リーリエは残念そうに言った。
「だって、そこはやっぱり本職のリーリエさんに譲るわ……うん」
 シルヴィアは苦笑を浮かべるばかり。
「では、この腕を振るわせて頂きます」
 リーリエは『家庭料理』の知識を遺憾なく発揮させる。
 調理を終え、パラソルの下、三人は賑やかに昼食を摂った。
 その後は、『ハウスクリーニング』の知識を持つリーリエがトライアルクリーナー片手に速やかに後片付けをした。

 食事風景はというと、
「釣りたてが一番だな。口の中で溶ける」
「塩加減が絶妙だよ」
「お味噌汁も美味しいですよ」
 シルヴィアは刺身を杏樹は焼き魚をリーリエは味噌汁を味わう。
「お二人が見たという夢ですが、案外それは夢ではなく実際に起きた事なのかもしれませんね」
 リーリエは改めて二人が見たという夢、ヘルムート王国での出来事を話題にした。
「うん、そうかもしれない。妙にリアルだったし」
 杏樹は食事の手を止め、
「持って来たこのナイフなんだけどね? いつの間にか側にあって、なぜか懐かしい気持ちになるんだよね」
 エアストダガーをテーブルに置き、愛おしげに触れる。
 続いてシルヴィアが夢の話を語る。
「アタシの方は何故かアンジュ『お嬢様』の護衛っつって、一緒に戦ったりしたんだよなぁ。魔法を使える格闘家、みたいな感じでさ」
 シュッシュッとパンチを繰り出しながら。
「メイドの姿でですか?」
 聞き返すリーリエにシルヴィアは、
「そうなんだよ。なんでかはよく分かんねーんだけどさ」
 ケラケラと笑った。
「リーリエの言うとおり、案外本当に異世界にでも行ってたのかもしれないね?」
 と言って、杏樹は刺身を頬張った。
「自分が元と似た姿、あるいは異なる姿で、『元々その世界の住人』として存在していた事になっていた……興味深いお話です。私の場合はどのような形だったのでしょうか……想像しかできませんが」
 リーリエは、頭を巡らせ異世界の住人となった自分の姿を想像する。
「……また、ちょっと行ってみたい気もするけど」
 杏樹は呟いてから、
「今頃あっちの『私』はどうしてるんだろう」
 物思いに真っ青な空を見上げた。

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