■子供達と海の思い出を
快晴の昼、フェイトスター・アカデミー付近の海岸。
「下拵えは済ませて来たので、皆で串に刺して行きましょう」
カガミ・クアールことカガミは、以前引率して山登りをしたフェスタこどもクラブの子供達、主に女の子達と昼食作りをしていた。
「ねぇ、ニンジン無しはだめ? アタシ嫌い」
人参嫌いの少女が串の材料に人参を見て渋い顔。
「この魔法のソースを塗れば、人参も美味しくなりますよ」
カガミは、用意して来た手作りのソースを見せた。
途端、
「魔法のソース!?」
少女の目がキラキラ輝き、作業が速くなった。
「見て、見て、沢山刺したよ!」
花冠を作るほどの器用さを持つ少女が、ドヤ顔で完成した串を見せつける。
「上手ですね」
カガミは褒めながら頭をなでなで。
女の子達ばかりでかしましいと思えば、
「出来たー」
「ボクが作ったの全部食べていい?」
「なぁなぁ、これでいいか」
男の子が三人ほど混じっていた。
「あら、男の子は皆、泳ぎに行っているのかと思いましたが。貴方達は、こちらに来てくれたのですね」
カガミが嬉しそうに歓迎した。
「ぼく、運動嫌いだから」
「手伝ったら、沢山食べれるよね!」
運動嫌いと食いしん坊と
「……おれは別に」
大人のお姉さんに興味があるおこちゃま。しかも、カマーベストの様なデザインの襟付きのホルターワンピース水着にパレオ風にしたソムリエエプロンとあって、さらに魅力的だ。
「それじゃ、少し力仕事を手伝って頂きましょうか」
何でもお見通しなカガミは男の子にお願い事をした。
「おれに任せろ!!」
おこちゃま少年が一番に名乗りを上げた。
「では、この荷物を運んで下さい」
カガミは適度な箱を少年に渡し、自分はクーラーボックスを抱え、近くまで運ぶ。
「楽勝だぜ!」
手伝うおこちゃま少年は、抱えるクーラーボックスの上に載るほど豊満なカガミの胸が気になりちらちら。
何とか荷物を運び終えた後、
「火には、気をつけて下さいね」
完成した串を焼き網や鉄板で焼いて行く。
「ねえ、まだぁ」
「これとあれもぼくの分」
「いい匂いだぁ」
子供達は焼けていく串に釘付けだ。
「魔法のソースをつけて……」
カガミは、主に人参が刺る串に魔法のソースを塗って焼いて行く。
「わぁあ、美味しそうな匂い。食べれそう」
人参嫌いの少女を食べる気にさせる。
出来上がりまであと少しの所で、
「そろそろ出来上がりますし、海にいる皆を呼びに行きましょう」
カガミは、子供達と一緒に海で遊ぶ皆を呼びに行った。
砂浜でバーベキューの準備が進む間。
「皆さ~ん、波はそんなに怖くないですよ」
カガミ・クアールことクアールは、子供相手に水泳教室だ。ほとんどが男の子だ。
そのため、
「……」
クアールの抜群のプロポーションを割増しにする水着姿にどぎまぎする子ばかり。その水着とは、チャイナドレス風ラッシュガードに頭には鈴付きのカチューシャ、三つ編みにした銀髪の先には鈴という事務所から届いた際どい物。
浮き具をつけた子供の腰の深さから水泳教室を始める。
「泳ぐの初めてだよ」
「こんなの怖くないぞ。プールで慣れてるもん」
好奇心旺盛な子供達が喜々と海に浸かる。
「……本当に? 怖くない?」
気弱な少年は、今にも泣きそうな顔で砂浜から動かない。
「慌てなければ沈みませんよ~。おねーさんがついてますから大丈夫ですよ~」
クアールは力強い言葉で励ます。
「……おねーさんがいるなら」
気弱な少年は山登りの事もあり、勇気を出して海へ。
「よく頑張りましたね」
クアールは褒めてから、
「それじゃあ、おねーさんの所まで、ゆっくりでもいいので泳いで来て下さい」
安定してきたと見てから、膝をついて腕を広げて待つ。
「行くぞ~」
「プールと違って面白い」
「……が、頑張る」
やんちゃな子供達や気弱な子供が次々とクアールの元に泳いでいき、
「は~い、よく出来ました~」
ゴールした子供達を、一人ずつしっかり抱きとめ褒めながら『よしよし』と頭を撫でた。
何とか、子供達が海に慣れて、泳げるようになると、
「今度は鬼ごっこです~、おねーさん泳ぐの速いですよ~」
クアールは、鬼となり平泳ぎで子供達を追いかける。子供相手のため手加減はしているが、なかなか速い。
「絶対に逃げ切ってやるぜ~」
「負けねぇぜ」
一番に逃げ始めたのは、悪戯小僧達だ。
「悪戯にはやられましたが、泳ぎでは負けませんよ~」
クアールはあっという間に追い付き、
「ぎゅ~っと、はい捕まえましたよ~」
不敵な笑みを浮かべ悪戯小僧達を真っ先に一網打尽してから、他の子供達も捕まえた。
「もー一回だ」
「今度は絶対に捕まらないぞ」
悪戯小僧達がリベンジを訴える中、料理組の呼ぶ声が聞こえ、
「そろそろお昼ですね~、向こうで呼んでいますよ~」
泳ぎは終いとし、昼食となった。
「魔法のソースすごい! ニンジンも美味しいよ」
「このお肉、美味しいよ!」
「これ全部、ボクの分」
皆、あっという間に平らげた。
食事後、デザートとして西瓜割りを子供達とワイワイしたという。