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それぞれの世界での夏祭り・7

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それぞれの世界での夏祭り・7
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■甘いデート


「海翔さん、気になるお知らせが……」
 狩屋 恋歌が貰ったチラシを手に息せき切って現れた。
「どうした?」
 狩屋 海翔が訊ねると、
「久しぶりのデート、ここにしましょう。ここに」
 恋歌は、チラシに記載されているオルトアースの項目を指さしながら訴えた。
「何々、お菓子の食べ放題ぃ?」
 示された箇所を見た海翔は、確認するように聞き返した。
「はい!」
 甘い物好きの恋歌は揺ぎ無い返事だ。
「まあ、悪くはねーな」
 妻の可愛らしい主張に海翔が選ぶは賛成一択だけ。
「本当ですか? 甘いものはあまりって……」
 恋歌は嬉しくなるも、ちょっぴり遠慮さが顔を出す。
「気にしないでいいって、俺は俺で楽しむから大丈夫だ」
 海翔は、にかっと気持ちの良い笑顔と共に言った。甘い物が得意ではない事よりも妻の笑顔が最優先だ。
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
 恋歌は可愛らしい笑顔を咲かせ、大層喜んでみせた。
「あぁ、そうだ。食べ過ぎて動けなくなったらすぐに言えよ。お姫様抱っこが待ってるからさ」
 海翔はちょっかいを入れたくなったのか、余計な事を口走った。
「……もぅ、海翔さんったら」
 恋歌は口を尖らせ、
「ほらほら、行くんだろ」
 妻の表情の変化を堪能した海翔はカラカラと笑いながら、歩き出した。
「待って下さい」
 恋歌は急いで後に続いた。

 快晴の午後、オルトアースの食神都市オーサカ。

「わぁ……!」
 食べ放題の会場に入った途端、並ぶお菓子の姿に恋歌の目はキラキラと輝く。
「おぉう……」
 海翔は押し寄せるお菓子の量に思わず引きつつ、
「……嬉しそうだな」
 隣の妻の様子に小さく呟いた。
「好きなの取って来いよ。席は適当に取っておくからさ」
「で、では、行ってきます」
 海翔に笑顔で見送られながら、恋歌は喜々とお菓子を取りに行った。

「チョコケーキにクッキーにモンブランに……どうしましょう、たくさんあって迷っちゃいますね」
 並ぶお菓子達に恋歌は、取り皿片手にきょろきょろと大忙しだ。
 結果、
「とりあえず……これと、これと、これと……」
 『とりあえず』が沢山となり、取り皿があっという間にいっぱいになってしまう。チョコ系の和洋菓子が中心だ。
 そして、
「そろそろ……」
 海翔と合流しようと周囲を探し、
「あぁ、いました、いました」
 少し離れたテーブル席にる姿を見つけ、向かった。

 恋歌を見送った後。
「さて、俺も行くかな」
 海翔もお菓子を取りに向かった。
「結構、甘そうな物が多いなぁ……甘すぎるものはそれほど得意じゃないからな」
 取り皿を手に取り、お菓子を物色するがどこをみても甘い物ばかり。お菓子食べ放題なので当然と言えば当然なのだが。
「甘さが控えめなのは……」
 甘さ控え目を探す海翔が選んだのは、
「このビターチョコとか、和菓子とかにするか」
 ビターチョコや和菓子を数個。
 恋歌より数が少ない事もあってか、すぐに物色を終わらせ、近くのテーブル席に腰を下ろした。
 待つ事少しして、
「海翔さん、お待たせしました」
 恋歌が現れ、嬉しそうに向かいの席にちょこんと座った。
「良いものあったか?」
 海翔の問いかけに、
「はいっ」
 恋歌は、お菓子沢山の取り皿を見せつけた。
「こりゃ、すごい量だな」
 海翔はカラカラと笑って返した。
「えへへ、食べ過ぎてもお姫さま抱っこしていただけるそうなので、いっぱい取ってきちゃいました……なんて」
 恋歌は悪戯な笑みを湛えて、夫の言葉をそっくりそのまま返してから、
「食べれる量ですから大丈夫ですよ」
 笑顔が愛らしいものに変わる。
「海翔さんも、楽しめるものがあってよかった」
 恋歌は海翔の取り皿を覗き込み、ほっと安堵。
「それじゃ、食べようか」
「えぇ、いただきます」
 海翔はビターチョコを恋歌はチョコケーキを食べる。
 途端、
「ん……美味しい……♪」
 恋歌は、甘い甘いチョコの味に至福の満足顔とばかりにゆるゆるだ。
「幸せそうだな」
 見ているだけで幸せだとばかりに、海翔の顔に自然と笑みが広がる。
「……ほっぺについてんぞ」
 海翔は、自分の顔を使って指さしながら場所を教える。
「え? ど、どこですか?」
 恋歌は拭おうとするが、微妙に位置が外れてしまう。
「少し……」
 海翔は再度指示をしようとするが、もどかしさもあってか手を伸ばし恋歌の頬についたチョコクリームを指ですくいとり、ペロリ。
「……ごちそうさま」
 幸せそうに笑って見せた。
「あ……ありがとうございます……」
 夫の行動に恋歌は真っ赤になりながら、
「あの、じゃあ、これ……お礼に……」
 少しどぎまぎとこし餡八つ橋を手に取り、
「あーん」
 海翔の前に差し出した。
「……えと、お礼?」
 海翔はまさかの申し出に緊張し、差し出されたお菓子と妻の顔を見比べる。
「あーん」
 恋歌が再度促すと、
「……あーん」
 覚悟を決めた海翔はちょっぴり照れくさそうに、差し出されたこし餡八つ橋をパクリ。
「どうですか?」
 味を訊ねる恋歌に向かって海翔は、
「あぁ、あんまり甘くなくて美味しい」
 もぐもぐしながら嬉しそうな恥ずかしそうな笑顔で答えた。
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