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アラシのヨルに

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アラシのヨルに
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「謎の館、ね」
 単純なルージュ・コーデュロイの感想に「そう思う?」と“不思議と安心できる声”が更に質問を重ねてきた。
「事前に情報は聞いているけれど、探索の依頼を受けた以上しっかりと調査しましょう」
 派生する話題に答えているようにも聞こえる独語。
 先程から万事この調子だった。安心を覚える声だからこそ、それ自体がおかしく警戒対象のままなのだ。
 折よくお付き合いしようと考えていた矢先の探索の誘いに、それに乗ずるならとルージュは羊皮紙を取り出した。
「本格的でしょう?」
 地図記憶の技術でのマッピングだ。正確性はお墨付き。
「神様は信じるのならいるんじゃないかしら?」
 至極あっさりと答えたのが物足りなかったのか、次点の質問が空かさず飛んできた。
「魔神は実際に見てみないと分からないわね。それとは別に、その加護を受けた存在の暴れ方は好きになれないけれど」
 否、質問者は足るを知らない者の様だった。
「家族はとても素敵よ」
 そして、質問の内容のどれもが関連性がない。派生しても二問か三問くらいで終わってしまう。
「実家はとても尊敬しているし、パートナーの優は頑張り屋で引っ張っていく真面目さもだけど、別の可愛さもまたあるのよ。 ――不満はないわ」
 ルージュのそれは、無難な受け答えに感じてしまうほどの素直なもの。
 見取り図の横にルージュは書き留める。極々自然な動作で、暗号の形で記しておくのは声の主について。
 たったのふたりきりの状況について。
「合わない人はいるでしょうけれど、それも受け入れてこそ愛だと思うわ」
 故にルージュは狼狽も当惑もしない。害意が無ければそれまでと思考停止にも陥らない。
「後悔はしてもそれが糧として今と未来に繋がる事よ」
 終始一本調子だった質問者の声に、笑みが滲んだ。 ……ような気がして、ルージュは地図に書き込む手を止める。
 笑った? と訝しむが笑い声というほどはっきりとしたものでもなかった。
 “嵐が止んだようだ”と館が静寂に包まれれば外の様子を伺うため玄関の扉を開ける。夜明けの明るさにルージュは目を細め、“帰ろう”と囁く声に、彼女は羊皮紙を握りしめた。
 帰らずの館。
 何が有ろうとも最後は迷わずに脱出するべく、一切と足を止めずに、ただ歩む。
 羊皮紙に何も書き残さなかったことに気づくのは、また別の話だ。



…※…※…※…




 傍らに彼女の姿はない。
 代わりに姿の見えない隣人が話しかけてくる。
 嵐とはいえ、同行者とはぐれるほどの雨と風だったか? 思い返しては焦り自分への苛立ちを感じているエーリオ・ブランシェットは、その場で立ち止まり真っ暗で視認できない相手がいるだろう横を向く。
「長い金髪のエルフの女性を見なかったか? 連れなんだ」
 避難した館の内部を提案を受け入れて探索しているのも、そもそもは彼女が先に到着していたのを期待してのことなのだ。こうして歩き回っても再会は愚か痕跡ひとつ見つからないのではたまったものではない。
 それもこれだけ質問を受けて答えているのだ、自分も答えを知りたくて問いかけてもいいだろうと聞いてみたが、知らないの一言で話は終わってしまった。
 ため息を吐く。
「とりあえず探索を続けよう」
 こう暗いと眼鏡の意味もあるんだかないんだかわからんなと、添えて。
「家族、か……」
 再開した質問攻めになんだか不思議な心地に陥る。姿も確認できない初対面同士。警戒心を解いてはいけないと思いつつもその声は幼げでふわふわとしている。
 歩きながら暇つぶしのようにエーリオは口を開いた。
「家族というか両親は厳しかった」
 名家だから仕方ない。と言い訳もできるものだが。
「奔放な姉貴のツケもあってひたすら勉強させられてな」
 時に、
「知識は力になるし姉貴は嫌いじゃないが“このやろう”とは何度か思った」
 姉に感情が高ぶることもあった。
 結果として、姉貴と亡き妹と過ごした日々を夢に見て、責めているのは自分自身だった。
 自覚していたか無自覚だったか、蓄積していき、夢でなんか見たくないと精神が帰結してしまった。そうなると必然的に眠れなくなった。 ……否、眠りたくなくなった。
 それを知ってからは今ではカミツレが枕元で甘く香るけれども。
「日溜まりの花が枯れないことを僕は願っている……」
 囁きは静かな館の中、誰の耳に届くことなく消えゆく。



…※…




 ふと気付けば門の前にいておかしいとエーリオは腹の前で両腕を組んだ。
 抜けた記憶とシルノの姿を求めて周囲を確かめようとするも、背中に触れてきた掌の感触に全身が警戒に凝る。
「一人では帰れない」
 せめてもの抵抗も虚しく。
「大丈夫」の一言とともにエーリオは前に門の外へと押し出された。

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