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アイドル大図鑑第3回目の生配信

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アイドル大図鑑第3回目の生配信
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■夜のオルトアース・1


 快晴の夜、オルトアース、星獣都市ハコダテ。

「再会出来て嬉しいし、今回も生配信に協力してくれてありがとう!! おかげで夕暮れに染まるハコダテを紹介出来たよ!!」
 桃子は足を止め、夕方に声を掛けてきた事で再会し、ハコダテをたっぷり紹介してくれた小山田 小太郎に感謝を伝えた。
「いえ、協力する事が出来て、光栄です」
 小太郎は口元を柔和にし逆に感謝を返す。
「ハコダテは本当に賑やかだよね」
 桃子は星獣を連れる行き交う人達の姿を目で追いながら、しみじみと言った。
「そうですね。何度かその共存が危ぶまれた事がありながらも、それを乗り越え、今も共に生きる彼らの笑顔はとても尊く……そして、魅力的な街だと思います」
 小太郎もまた星獣と住民達の姿に目を細めつつ、ハコダテでの冒険も思い出していた。
「次はどこを紹介しようか? あと、皆は元気にしてる?」
 桃子が次の紹介先と再会してから気になっていた小太郎の連れの近況を訊ねた。彼らともこれまで幾度となく交流したから尚更。
「直接その目で確かめて下さい。次に案内する場所で最後です」
 小太郎は意味深な物言いをするだけで、明確には答えず歩き出した。
「直接って、皆来てるの? 何か嬉しいなぁ。というか、最後って何かあるよね?  演武? 歌? 期待してもいい?」
 小太郎の言い方から桃子はがっつりと期待し、足取りが軽かった。何せ、小太郎達のライブを幾度も鑑賞し心躍る経験をしてきたので自然と期待も高まるというもの。

「ここが最後です」
 小太郎の案内の足が止まったのは、
「ここって、スターフォールだねっ! 中は真っ暗闇で、入っても迷った末に外に出ちゃう不思議空間だよ! 調査も進んでないし……」
 スターフォール(函館五稜郭)の入口の前。
 桃子は訳が分からず眉をひそめていたが、
「ステージがあるよ! わぁぁああ、久しぶりーー!!」
 ステージやそこに立つ顔見知りの三人を発見するなり目の色が喜色に変わり声も大いに弾み、手をぶんぶん振りながら近付いた。撮影はばっちりだ。

 小太郎に案内された桃子が来る少し前。
「ハコダテに来るのも久しぶりだ。街並みを改めて見ると、やはり人と星獣達が共に歩む今の姿の方が私は好きだな」
 堀田 小十郎は、星獣と人で溢れる賑やかな街の姿を前に感慨深く言った。傍らには連れて来た星鼠・翼【≪星獣≫オカリナネズミ】があった。
「だな。今じゃ、ハコダテの人らと星獣は切っても切れない絆で結ばれてるってね? そんで以て、そんなハコダテ市民の心の拠り所が小夜と奏って訳だ! いやはや……こりゃあ兄として、鼻が高いってもんだぜ」
 睡蓮寺 陽介もまた小十郎と同じ気持ちだ。からかいと誇らしさがないまぜになった顔で隣の睡蓮寺 小夜に視線を投げた。
「……兄さん」
 小夜は、陽介の褒め言葉に照れたらしい様子を見せた。
「さて、小太郎さんとモコが来る前に準備をするとしよう……この地に、笑顔の花を咲かせる為に、な?」
 小十郎の言葉を合図に、
「だな」
「はい」
 陽介と小夜も行動を開始。
 三人はスターフォール(函館五稜郭)へ行き、ライブの準備を整えた。使用許可はプロデューサーたる小太郎が桃子に声を掛ける前に取った。

 再び時間は戻り、
「久しぶり~!! これってステージだよねっ! またライブを見せてくれるの!? ばっちり撮影してもいい?」
 手を振りながら来た桃子はすっかり紹介動画はどこへやら、彼らのライブをよく知るためか、アイドル好き丸出しである。
「おう、ゲリラライブだ! 魅力をこれでもかってくらいお届けするから、ばっちし撮ってくれよな。最後まで飽きさせはしねぇからさ」
 陽介はにかっと笑いながら答えた。
「もちろん! 歌うのは……」
 桃子は返事をするなり小夜の方を見た。幾度もライブを見て歌唱の腕前を知っているから。
「はい、わたしと奏です。精一杯頑張るので、最後まで見てくれたら嬉しい、です……」
 小夜はふんわりと笑みながら答え、
「人と星獣……皆が楽しそうに過ごすハコダテが、わたしは好きだから……」
 傍らの蒼い燕の姿をした星獣の歌鳥・奏【≪星獣≫フルートバード】に優しく触れながらハコダテに抱く思いも重ねた。
「じゃぁあ、今回も期待するよ! そして、ハコダテを知らない人達に素敵な歌声をたっぷりと届けちゃうからねっ!」
 桃子は動画配信用端末機を構えた。
 いよいよ、ゲリラライブ開始だ。

「久しぶりの人も初めての人も待たせたな。これより行うは皆で紡ぐはアンサンブル……一緒に、笑顔の花を咲かせようぜ?」
 陽介は『大注目!』を使いわくわくするような前口上をし、
「今回も期待大だねっ!」
 桃子に期待させる。
 そんな彼女に向かって、
「これから小夜さん達が歌うウタは、覇権を決めるコンテストで歌われた曲だと聞いています。良かったら一緒に歌ってあげてください。小夜さんも小十郎君達も、きっとその方が嬉しいでしょうから」
 小太郎はちょっとしたお願いをしてから、プロデューサーとしての仕事をするため持ち場へ。
「夜空は包み、星は照らす……わたし達のライブ、どうか聞いてください……『星光と笑顔の花』を」
 【スタイル】セレナータの小夜は前口上を言った後、
「俯く貴方に星光(ひかり)を灯そう(歌と、活力灯る一番星の光を皆に届けよう)」
 グランド・クロスを祈るように抱え、
「行こう、翼、陽介……小夜達の思い出の地にて、再び願いのウタを奏で魅せよう」
 小十郎は『スターフォール・ポテンシャル』を使い、降り注ぐ流星群の中、白き翼を生やし巨大化させた翼と並走する。
「おう、小夜と奏のウタを彩ろう」
 陽介は『ブレイクアップサルテーション』で生み出したオーロラの輝きが流星群を包み、天を裂くような荒々しいダンスで小十郎に迫る。
「♪♪」
 小十郎は、『大殺陣回し』による大きな動きと真に迫る体捌きと翼のウタで応じる。
「では、彼らのプロヂューサーらしく……皆の演武(ライブ)を彩り、魅せるとしましょう」
 小太郎が、展開した自身の精神状態を表すような静かに澄んだ無風景な空間『無風境地』を専心の錫杖で舞台上に広げる。
 そんな中。
「木漏れ日の優しさ 星のきらめき(星を描いて……)」
 小夜は『夜想曲』を歌い、夜空に星を描く。
「はぁぁ」
 陽介は、奇術師の貪欲杖で効果を増した『導きのゼラニウム』の花々を小夜の周囲を花々で満たし、舞台が別世界の如く変わった。
「……幻想演武のお手伝いを」
 小太郎は専心の錫杖を使い、演出効果を演者達にもたらせる。
「♪♪(修めし武技の煌めきと共に……小太郎さんのおかげでキレが違うな)」
 小十郎は寵剣イザナミを振り奏でる笛の音を光と成し纏い『天津奏で舞い』を舞う。小太郎の『クレッシェンド』の力を受け、一つ一つの動きにキレが増す。
「♪♪(武と演奏の共存……人と星獣が織りなす……それが『演奏演武』)」
 小十郎は【スタイル】剣奏者の力を発揮させ、
「わぁぁ♪」
 楽団による『八百万の重奏』で出したアンサンブルが桃子の元に飛び立つ。
「♪♪(動きがちげぇし、映えるな)」
 陽介は【スタイル】アレスの身体能力に加え、小太郎の助力で動きのキレが割り増しする上に、小太郎が放った『信念の光刃』による光の刃が、動く度に美しく周囲を舞い画面を華やかにする。
 さらに、
「♪♪」
 陽介は【スタイル】奇術師の頭の回転を活かし、的確な殺陣を演じる。
「やぁぁぁ」
「たぁぁあ」
 陽介と小十郎は息が合い、冴えた殺陣を繰り広げた。
 演武が続く中。
「何かしてるぞー」
「ゲリラライブだ」
「すげぇな」
 賑やかさに誘われて人々が次々と足を止め、観客となっていった。
「奏」
 小夜は、随分増えた観客達に視線を巡らした後、奏を『≪星獣≫ピッコロフェニックス』に進化させ、
「寂しさ捨てて(思い起こすのは、嘗ての願い……一番星の星獣さんに伝え、託された……わたしがセレナータとなったきっかけ、それは……)」
 小太郎が遣わしたアンサンブルと一緒に『#うちで歌おう』と観客の心に歌への参加を呼ぶかけつつ歌う。栄光を得た当時の事をしみじみと思い出しながら。
 それに合わせて、
「翼、歌おう、小夜の願いと祈りを皆で、届けよう」
 小十郎は翼が響かせるオカリナの音色に合わせて歌い、
「星獣都市ハコダテとそこで生まれたアイドル睡蓮寺小夜のウタの魅力を皆に届けるぜ!」
 陽介も続く。
「みんなで、歌おう……? 皆で歌うのはきっと、一番楽しいから……!(想いをウタに乗せて)」
 小夜は『ブライトレスポンス』で、桃子や動画配信用端末機の向こうに向かって歌への参加を呼びかける。
「……明日を信じて」
 桃子が増えた観客達と共に小夜に続いて口ずさむ。
「♪♪(笑顔祈りしウタを共に歌えるよう促しましょう)」
 小太郎は指揮者の如く杖を振るい、『プチョヘンザ』を使い、近い観客遠い観客の気分をアゲアゲにしようと試みた。
「何か気分が盛り上がってきたよ!!」
 桃子は気分が乗り、歌うと共に手を振り上げた。
「星光(ひかり)と一緒に進もう(百万光年先にまで、届くように……空に浮かんだ一番星まで、聞こえるように……)」
 小夜は心を込めて、奏と一緒に歌い上げる。
「星降る夜も(どうか響け、星光と笑顔のアンサンブル……)」
 小夜の歌声が佳境に入った瞬間、
「♪♪(これだけの光……百万光年先の一番星にだって届くはずさ、きっとな)」
 小夜の思いを察した陽介は励ますように『スイッチ:煌めきを統べる者』の力を発揮させ、桃子を含む観客達の熱狂を示す光球を自分達の元に集め、オーロラの如く美しい煌めきを放った。
 人と星獣が織りなすハコダテらしいライブは無事に終了し、桃子や動画配信用端末機の向こうに感動で胸を一杯にさせた。

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