■昼のフラグランド
快晴の昼、『ヒロイックソングス!』の小世界フラグランドのフィフスシティの出入口。
「久しぶり! 前回の生配信に参加してくれてありがとう!!」
桃子が親し気に声を掛けた相手は
「あぁ、久しぶりだな」
ジェノ・サリスだ。
「今、生配信として『ヒロイックソングス!』の世界を紹介しているんだけど、フラグランドの紹介をお願い!」
桃子は早速とばかりに生配信出演のお願いだ。
「あぁ、引き受けよう」
ジェノは快く引き受けた。
フィフスシティに入り、
「ここは聖歌庁が新たにゲートを開いた事で、往来が可能になった世界だ。地下での暮らしを強いられていたが、今は地上で暮らす事が出来ている。それで……」
ジェノは歩きながら紹介を始めた。
しばらくして、
「俺が紹介するのは、OCM加工場だ」
ジェノはOCM加工場の前で足を止めた。
「ここでは、OCM……オルガノレウム循環構造材と呼ばれる物質を使って、物資を加工する場所だ。OCM以外にも食料や調味料、生活必需品といった加工用追加素材があり、それらを使い、各種物資の製造が可能になる」
ジェノは簡単に工場の説明をしてから、
「詳しい事は中に入ってからだ」
工場への侵入を誘った。
「いいの!? 製造工程を配信しても!!」
思わぬ展開に桃子は、好奇心から声を弾ませた。
「問題無い。むしろ、歓迎だ」
ジェノは即答した。
「?」
桃子は訳が分からないと首を傾げた。
「新発想を持った人材を勧誘したいんでな」
ジェノは理由を明かし、不敵な笑みを浮かべた。
「なるほどー。少しでも力になれたらいいんだけど」
桃子は得心し、先を行くジェノについて行った。
OCM加工場に入り、製造工程を見学する中。
「俺は食糧生産……フラグランド仕様のカレーを制作している。現在、『5th Faith Carry』として、フィフスシティ以外の街にも販売されることが決定した」
ジェノは、自分が関わっている生産ラインについて語った。
「おおー、すごーーい!! アタシも食べてみたいなぁ!!」
拍手して感心する桃子が持つ動画配信用端末機に向かって、
「そう、努力すれば、自身の思い描く物を作り出して広めることも可能だ。戦わなくてもいい。戦闘用装備獲得の予算も必要ない……新しい発想で、この世界に流通する新しい何かを作ってみないか?」
ジェノは力強い言葉で呼び掛け、大いに宣伝した。