■夜のフェイトスターアカデミー
快晴の夜、フェイトスターアカデミーの中庭。
「久しぶり! 前回は素敵なお店の紹介ありがとう!!」
桃子が親し気に声を掛けた相手は、
「いいえ、こちらこそ」
『令嬢の嗜み』を活かして丁寧に挨拶を返す
風華・S・エルデノヴァだ。
本日の生配信を知った風華は引き受け、
「そうですね……インフルエンサーの心得に則りつつ、お題『未来と今』とでも……記念ですね(未来飴の配信当時、垣間見た姿は丁度……あの場面をいち参考に計画と過程を考えて来て……)」
未来飴当時から歩んできた道と今日がよい区切りであるという思いに。
「……記念回だね」
桃子も生配信を通し風華の歩みを見た者として察した。
そして、
「未来飴で見たステージに立つ姿……あの時誓った目標は日常は勿論、舞台でも機会を見て袖を通すロリィタファッション、その道のモデルでしたね」
風華は脳裏に焼き付く未来を振り返る。今夜もまた季節感を考え涼しげに映る寒色寄りの白で固めたロリィタ衣装『歩み出す少女の恍惚』を纏っている。
「……そして学びを新たにプロデューサーの後輩の一人として、モコ先輩にはプロデューサー的ご視点から是非」
風華は前置きをし、真っ直ぐに桃子を見る。
「先輩だなんて……アタシはただアイドルが好きなだけだから。沢山の努力をして磨いた最高の技術と心で観客達を笑顔にしている姿を凄く尊敬してて、元気や勇気や夢を貰えるし……」
照れ気味にアイドル好きを語る桃子の思いは、
「アタシもあの時と同じ。その舞台を見たい」
未来飴の時と同じ。
「あれから、素敵な仲間達、ファンの皆様、沢山のご縁と共に歩んで迎える本年、あの日お話しした未来像に、追い付けていそうですか?」
風華は微笑んでから、画面向こうの皆を釘付けにする『神格のカリスマ』を放ちつつ、桃子に問うた。
「アタシには分からない。でも前にも言ったけど、沢山の人を笑顔にするのだけは分かるよ! お店を案内して貰って素敵な服やブランド主宰としてのお仕事とか……技術も凄いけどそれ以上に楽しいとか楽しませたいとか心を感じるから」
桃子は自分の思いを必死に言葉にした。
「ありがとうございます」
風華は礼を言ってから、
「では、最後に抱負を」
表情を凛とさせ、双眸は真っ直ぐ未来を見つめ、
「今後もアイドルとして、先輩のように魅力を伝えられるプロデューサーとして研鑽を深める所存です」
力強く宣言してから、桃子の手を取り、手元に『花葬』でネムノキの花を咲かせ約束に。