■夜のネヴァーランド
快晴の夜、ネヴァーランドの出入口。
「久しぶり! 前回の生配信に参加してくれてありがと~!」
桃子が親し気に声を掛けた相手は、
「うん、モコちゃん、お久しぶりだねぇ」
ノーラ・レツェルだ。
桃子から今回の生配信について聞いたノーラは、
「また出れて嬉しいよぉ。ネヴァーランドは一番思い入れのある世界だから」
快く引き受けた。
「色々、歪だけど……だからこそ魅力的な世界、ネヴァーランドにようこそ(少しの間だけどお姫様気分を味わって貰えたら)」
早速、ノーラは『深夜零時までの魔法』で桃子の衣装を豪華なドレスに変身させた。
「わぁぁ♪」
桃子は驚き、その場でくるりと回り子供のようにはしゃいだ。
「さぁさぁ、あの時計の秒針が一回りする前に内に行こう」
ノーラは、桃子の衣装チェンジと同時に現れた大きな時計を指さしつつ桃子を急かした。
「行こう! この世界を知らない皆に知って貰わなゃ」
桃子はやる気満々だ。故郷の世界『ヒロイックソングス!』を広めたいと。
二人はネヴァーランドの街に入った。
街に入った途端、
「みんなと案内するよぉ」
【スタイル】ロイヤルキャスターのノーラは、近くで調達してきた猫のぬいぐるみに『おもちゃの大舞踏会』を歌う。
さらに、
「♪♪(もっと盛り上げようかなぁ)」
ノーラはさらに望み、小さな楽器を出現させ、ちょっとしたオーケストラ演奏を披露。
「♪♪」
ノーラはぬいぐるみを動かすために歌い続ける。
「何かこれって、ライブだよねっ! 独り占めなんて贅沢だよ!」
美しい歌声と賑やかな演奏と踊るぬいぐるみを前に桃子は、動画配信用端末機をノーラに向け、すっかり観客の一人になってしまい、そのまま紹介動画のはずがライブ配信となってしまった。
無事に箱庭のような世界の街を一巡した所で、
「あぁあ、服が元に戻っちゃった」
桃子の豪華なドレスは時間を迎え、元に戻ってしまった。
それを合図にノーラは歌をやめて、猫のぬいぐるみは踊りをやめオーケストラは静かになった。
そして、
「こんな風にね。ネヴァーランドは絵本のような子どもの夢のような素敵な世界なんだ」
ノーラは画面に向かって、紹介の締めに入る。
「ちょっと共感して貰えなかったら、語り尽くすことも考えたんだけど……たぶん、必要ないよねぇ?」
観客に強制的に多幸感を与える『全ては愛故に』と語る言葉はあれど、すでに必要は無い。美しい風景と楽し気なライブが十二分に紹介になっていたから。