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さまよえる蒼い契約者・後編

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さまよえる蒼い契約者・後編
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 崖上で必死に手を伸ばす
 あの人の姿が遠ざかる

 ――だいじょうぶ
 ハルカ、こわくなんてないですよ?





「『核』って巨神アトラスの力の塊なんですよね。どうやって作るんですか?」
 庭で歓談しているハルカ達を屋内の窓から眺め、ヨシュアがオリヴィエ博士に訊ねた。
「そうだね……アトラス火山のマグマの中に、力の淀みが溜まる場所があるのだけれど、500年に一度くらい、そこがいっぱいになって破裂するタイミングで、媒体になるものを投げ込む感じだね」
「媒体……」
「『核なるもの』と呼ぶそうだよ」
「ああ、それであれを『核』と呼ぶんですね」
「力の淀みは『核なるもの』を媒体にして結晶化し、結晶化したものが、投げ込んだ者の手に戻って来る、といった感じかな」
「媒体は、何でもいいんですか?」
「“純粋なもの”である必要があるそうだよ。
 何しろ巨大な力の塊だからね、かつてはタイミングの度に、それを管理する人達だかが『核』を作成して回収していたというけど、時が経ち、国が風化していった今はどうなっているんだろうね」
「……訊いておいて何ですけど、博士、随分詳しいんですね」
「研究者としては、押さえておきたい知識でしょ」
 オリヴィエは微笑した。




 オリヴィエ博士宅の雑草だらけの庭で、木陰にテーブルを持ち出し、ハルカ達は寛いでいる。
「ハルカさんは、何か憶えていることはありますか?
 捜索場所について心当たりとか。
 何でもいいですよ、思いもかけないものが手掛かりになることもありますし」
 影野 陽太はハルカにそう訊ねた。
 ハルカは首を傾げる。
「おじいちゃんは考古学者なのです。
 パラミタで冒険がしたいので、パートナーを見つけたいと言っていたのです」
「契約者ではなかったのですのね」
 そう言ったエリシア・ボックに、ハルカははい、と頷く。
「でも、今何処にいるのかは分からないのです……」
「そうですか」
 仕方ありませんよ、と陽太は深追いしない。
 今は無理でも、捜索の道中で思い出すという可能性もあるのだし、と思っている。
(根気が必要そうですものね)
 エリシアもそんな陽太を見ながら思う。
 自分の死を自覚させ、尚且つ生を望ませること。
 ハルカを生かす為の条件を脳裏で繰り返し、ハルカと目が合って微笑んだ。
 何故だろう、ハルカとは不思議な縁を感じる。
 こうなったらとことん手を貸しますわ、そう心の内で思った。
 陽太は少し考え、提案する。
「探索……調べ物、の定番といえば、やはりイルミンスール大図書室でしょうか。
 考古学者でもあるハルカさんのお祖父さんも、ひょっとして立ち寄っている可能性もありますし、まずはそこへ行ってみませんか」
「はい」

「皆さん、よろしかったらお茶をどうぞ」
 月見里 迦耶によるエレガントティータイムで、お茶とお菓子が用意された。
「こちら、イチョウの葉のお茶です。忘れていることを思い出す効果があるんですよ。
 こちらはローズマリーのクッキーです」
「ありがとうなのです」
「悪くない味ですわ」
と言ったのは共に相伴に与ったエリシアで、陽太も珍しそうな表情をしつつ飲んでいる。
「それから、早速こちらも作ってみました」
 ハルカの持つ『核』を入れる為の収納袋である。
 ハルカが好きだと言ったオレンジ色の素材で、紐も首から提げて負担にならないよう、丈夫かつ柔らかいものを選んでいる。
 防水性とクッション性にも優れ、『核』を、それを納める箱ごと入れることができた。ついでに勝利祈願のお守りも縫い付けてある。
「仕事が早いですね」
 陽太が感心した。
「ありがとうございます」
 迦耶は微笑み、ハルカは嬉しそうにそれを受け取ると、早速『核』の入った箱を入れて首から提げる。
「邪魔ではありませんか?」
「全然大丈夫なのです。
 迦耶さん、素敵な袋をありがとうなのです」
 ハルカの礼に、迦耶は優しく微笑んだ。

「おじいさんは、どのようなお顔なのですか?」
 迦耶はお絵かきセットを取り出しながら訊ねた。
「よろしかったら、似顔絵を描いてみていただけますか」
「お絵描きは得意ではないのです」
 言いながらも、ハルカはクレヨンを手に取った。
「おじいちゃんは、ちょっと小柄で、あたまがつるつるなのです。
 でもオヒゲはふさふさです」
 言いながら、出来上がった絵を見てしょんぼりする。タコのようだ。
 迦耶はにこりと笑った。
「愛嬌のあるお顔ですね」
「そうなのです! おじいちゃんは茶目っ気たっぷりです」
 ハルカも笑顔になる。

「デハだうじんぐヲ試シテミルカ」
 そう言ったのは護堂 月光である。
 姿が見えず、声だけするのにハルカはきょろきょろと見渡した。
 迦耶の髪の中から、するりと一匹のヤモリが姿を現す。
 否、ヤモリにしか見えないが一応ドラゴニュートであった。
「ハルカさんは、ヤモリは平気ですか?」
 無口な月光の代わりに迦耶が訊ねる。
「ハルカはナメクジ以外は大丈夫なのです」
 頷いたハルカに、月光はハルカの手の上に乗る。
 迦耶がハンドヘルドコンピューターからパラミタの地図を浮かび上がらせ、それを水平に広げた。
 ダウジングペンダントをハルカに渡す。
「これを地図の上に垂らしてみてください。そして、お祖父さんのことを念じてみてくださいね」
 ハルカは手の甲に月光を乗せて、言われた通りにペンダントを垂らす。
 ペンダントはゆらゆらと振り子のように揺れはじめ、イルミンスールの森を指して止まった。



 アキラ・セイルーンは、オリヴィエ博士から魔法具店主の名刺を見せて貰い、その表裏を確かめた。
「名刺っつっても名前が書いてあるんじゃないんだな」
「存在を刻み込む、という意味で名付けたのかもしれないね。普通にダウジングカードなんだけれど」
「あの店主、名前なんてーの?」
 問いにオリヴィエは首を横に振る。
「聞いていないね。
 真名を知られるのは支配されるのと同時、とする種の人らしい」
「成程……ちなみに最近何かトラブルに巻き込まれてたりとかは?」
「私が知る限りでは無いね」
 念の為に訊いてはみたが、予想されていた回答である。
「まあウチらの騒動に巻き込まれた線で確定だろうな。
 ここで見捨てるのも後味悪いし、しょーがない、助けに行ってあげますかねぃ」
「同じ魔女の誼じゃしの。あの良店がなくなるのも惜しい」
ルシェイメア・フローズンがそう言ってオリヴィエを見た。
「さて店主が攫われたのは人質交換狙いと考えられるが、流石に『核』との交換には応じられぬ。
 てか人様を攫うような奴との交渉など、元より応じる必要はないわい」
オリヴィエは、ルシェイメアにずいと寄られて首を傾げる。
「オリヴィエよ、貴様腕は立たずとも口は立つじゃろう。
 誘拐犯が接触してきたら、のらりくらりと躱して時間を稼ぐのじゃ。
 その隙にワシらが救出して来よう」
 オリヴィエは、ぽかんとルシェイメアを見て苦笑した。
 まさか自分も来いと言われるとは思っていなかった。
「私より、余程君の方が口が立つと思うけどねえ」
「店主は貴様の友人であろうが」
「借金を踏み倒せるチャンスかもしれないね」
 オリヴィエは立ち上がる。
「ああ、そういえば……」と、何かを思い出して二人を見た。
「遠出は面倒だし、転送装置を使おうか」
「は?」

 どれが何だか分からないガラクタが堆く積まれる別室の隅に、その転送装置はあった。
 アキラは嫌そうにそれを見る。
「何ゆえ、このような物を貴様が所持しておるのじゃ?」
 ワープやテレポートの技術は貴重であり稀少である。
 場末のゴーレム技師の物置で埃をかぶっているなど予測もつかないことだった。
「何ゆえだったかな……骨董品だし、私には使えないものだから忘れていたよ」
「使えない?」
「移動に魔力を喰うんだよ。
 移動する距離に比例して消費する魔力も増える。私は魔力はからっきしでね。
 けれど大人数で移動するなら魔力も分割できるから、私一人分くらい賄えるかなと。
『核』もあることだしね」
 ハルカの祖父の捜索も、イルミンスールに行けばどうだろうという流れになっている。
 イルミンスールにいると思われる魔法具店主の誘拐がハルカの『核』を狙ってのことなら、ハルカの祖父の手掛かりもまたそこにある可能性は充分にあった。
『核』の魔力を利用すれば、パラミタの何処へでも転移できるだろう。
「整備もしたことなかったからなあ。動くかな」
 ぶつぶつ言いながら調整しているオリヴィエを見ながら、アキラは更に嫌そうな顔になる。
「じゃあ、君は留守番を頼むね」
 まあ良いだろうと立ち上がって、オリヴィエはヨシュアにそう言った。
「はい」
 少し安堵して、ヨシュアは頷く。
 自分は行くべきか、足手まといにしかならないが、と不安に思っていたのだ。

 一度に転送装置に乗れる人数には限りがあったが、オリヴィエとアキラ達、邑垣 舞花ノーン・スカイフラワーDDM- 23の魔法具店主救出組に、ハルカの祖父を探す陽太とエリシア、迦耶と月光、全員が乗るに足りた。
「もう一人乗れそうですか?」
 魔法具店主の誘拐に居合わせた後、流れでオリヴィエ宅に来ていた高瀬 誠也が、少し考えて訊ねる。
 店主の救出とハルカの祖父の捜索、どちらにも加わりあぐねたが、とりあえずイルミンスールに行ってみようと考えたのだった。
「いいんじゃないかい。
 1ダースまでは定員内のはずだから、多分」
 操作パネルを見て、オリヴィエは答えた。
 
 
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