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朽ちた夢、その残骸(第2回/全2回)

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朽ちた夢、その残骸(第2回/全2回)
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●ヒラニプラ


 火屋守 壱星がたどり着いたとき。まるで棒人間のようなパペットたちが周囲一帯を黒々と染めていた。
 パペットたちは逃げる人々を追い、相手が女性であるとか、幼い子どもだとか、一切お構いなしに剣を振り回している。まさに感情のないロボットの動きそのもの。
「うはぁ。うじゃうじゃいやがるぞ」
 その光景を目にした瞬間、つい驚嘆の声を漏らしながらも壱星は足を止めず、まっすぐその中へ走り込んで行く。そして今まさに幼子を抱えた女性を真っ二つにせんと振り上げられた剣を、星輝銃で撃ち砕いた。
 剣を砕かれたパペットは、バランスを崩してたたらを踏む。その隙に疾風迅雷で距離を詰めた壱星の拳がパペットを吹き飛ばした。
「ここは俺たちに任せて、逃げて!」
 何が起きているか理解が追いつかずに立ち尽くしていた女性は壱星の声にはっとなり、「ああ、ありがとう、ありがとう」と礼を口にしながら彼の横を走り抜けていった。
「皆さんも! 早く!」
 壱星は視界に入る全て、目につく限りのパペットを撃ち砕きながら、声の限りに叫ぶ。パペットたちの注意が迎撃する自分に向いている間に、一人でも多く逃げおおせるように。
 相手が生きた兵士なら。壱星の攻撃にひるみ、尻込みするだろう。だがパペットは単純な外見どおりの中身をしているようで、周囲の仲間がいくら撃ち砕かれようとも平然として、前進をやめなかった。壊れた仲間を踏み越え、剣を手に、圧倒的多数で波のように押し寄せるパペットの群れは壱星を取り囲み、徐々にその輪を縮めていく。
 そのただなかへ果敢に駆け入っていくは晴海 志桜里だった。
 エミーリア・ハイセルターの常夜の妖気による後方援護を受けつつ空賊王のブーツで滑るように割り入るや両手に携えた飛翔剣とブルーブライト――二刀の構えでパペットたちを次々と薙ぎ払い、壱星の元へたどり着く。
「大丈夫ですか、壱星」
「志桜里、助かった」
「そんなことは後にして、いいから2人とも早く出て!」
 志桜里と壱星を内側に閉じ込め、再びパペットの輪は閉じようとしていた。そうはさせまいとエミーリア・ハイセルターの常夜の妖気が輪の一端を切り裂いて、退路を切り開く。
 包囲から抜け出た3人は体勢を立て直し、壱星はトライアルアーツによる接近戦へと切り替える。
 そうして3人で、絶望にその場にへたり込んでいる者やパニックを起こして逃げ惑っている人々へと追いすがるパペットたちを各個撃破し、人々が逃げる時間を稼いでいたが、いかんせん、相手の数が多すぎた。
 目前のパペットを切り払い、開けた視界でエミーリアは黒い六角柱を見る。開けた1面から続々とパペットが排出されている。あれが入口だろう。その数は、3人が破壊する数より多い。
(無尽蔵とでもいうのかしら?
 折りたたまれて入っていたとしても、あの数はさすがに異常ね……)
 どこからか――たぶん遺跡から――転送されているのだろう。
 推測を告げると、志桜里も壱星も彼女に賛同した。
「つまり、この事態を終息させるには、あの黒い六角柱をなんとかしなきゃいけないってことだな」
 言うは易く行うは難し。わかっていても、そこまで手が回らない。
「まずいですよ、壱星。この調子だと、何時間かかるか……」
「ああ。わぁーってる」
 息つく暇もない戦いに、目に入りかけた汗を振り飛ばす。
(柱はここだけじゃない。3本あるっていうのに)
 このままだとこっちの持久力が底をつく。かといって、襲われている人々を見捨てて前進するなど論外だ。
「こうなったらイチかバチかだ。
 おい、志桜里、リア。ここはおまえたちに任せて――」
 俺は柱の破壊に向かう、と言おうとしたところで、エミーリアが後方に視線を向けていることに気付いた。
「2人とも、あれを見て」
 エミーリアの指を追って、彼女が指し示す方角へと目を向ける。逃げる人々の背の向こう、彼らの向かう先に、こちらへ前進してくる者たちの姿があった。
 彼らは全員教導団の軍服をまとっている。
 それが何を意味するかに気付いて、壱星は目を瞠った。
「射程距離に入り次第、撃て! かの敵どもから無力な民草を護るのだ! われらが力はそのためにある!」
 戦闘に立ち、サーベルを振り上げているのはキアラ・ウォーレス少尉だった。手や頭に包帯を巻いているが元気そうだ。
 彼女の言葉に従い、団員たちはパペットに照準を定め、引き金を絞る。
「突撃!」
 銃や剣を手に、雪崩を打って突貫した教導団員たちが、パペットを押し戻し、人々を救出しいく。
「よかったです……」
 目前の光景に、ほっと一息つく志桜里。
 壱星はさらに先を考えていた。
「志桜里、リア。ここの六角柱破壊は俺が引き受けた。おまえたちは残りの2本に向かってくれ」
 他の2本にも教導団は部隊を送っているだろうが、やはり人々の救出を最優先で行っているに違いない。だが柱を破壊しなければパペットの供給は止まらない。
「え? でも――」
「事態は一刻を争う。3人で手分けして対処するしかないんだ」
 そこまで口にして、ふと一抹の不安が差し込んだ。
「……できるよな?」
「あら、壱星が一番心配なのだけど? さっき包囲されて危なかったのは壱星のほうでしょ。
 変に失敗しないでよね、迷惑だから」
 エミーリアの強気の返答に、あわてたのは志桜里だった。
「ちょ、ちょっと! エミーリアさん、言い過ぎですよ。
 きっと大丈夫ですから、壱星を信じましょう?」
 ――ね?
 エミーリアはちらっと壱星を見て。
「まあ今回は信じてあげるわ。だから、私の信頼を裏切って、大けがなんて負ったりしないことね」
 わかりにくいようでわかりやすい、ちょっと屈折したエミーリアの言葉に、壱星は苦笑した。そして六角柱に向かって走り出す。
 させまいとするかのように立ちふさがるパペットは等活地獄で吹き飛ばし、再び彼を包囲しようとする動きを見せたパペットたちには、放電実験の全方位電撃をお見舞いしてやった。
 思ったとおり、ロボットには電気がよく通る。
「見てのとおりだ! 俺の心配はいらない! 向こうは任せたぞ!」
 そう叫ぶ間もたたき込まれていく拳は、これまでにないほどの威力でパペットたちをはじき飛ばしていった。


 推察したとおり、他の2つの地もパペットと教導団が戦っていた。戦いは拮抗し、教導団はパペットの侵攻を防げていても押し戻しきれていない。
 一瞬、彼らに手を貸すべきかとの思いが浮かぶ。そのとき地面が揺れた。壱星を残してきた場所に立っていた六角柱が、横滑りするように倒れていく。
 壱星は、ちゃんと役割を果たした。
 志桜里はぎゅっと手を握り締める。
 彼らに手は貸さない。人々を助けてくれると信じて、壱星の言うとおり六角柱の破壊に専念する!
 大きく深呼吸をして。すっと息を止め、戦場へ走り込んだ。
 1体1体の力は大したことがなくても、圧倒的に数が多い。動きを止めればあっという間に包囲され、数で押される。その前にたたくしかない。
 敵の間をすり抜け、時には頭上を跳び越え。できるだけ回避することで無駄な戦闘は避けた。だが六角柱へ近づくにつれて敵は密集する。回避する余地のない、避けられない攻撃は振り下ろされる前に剣持つ腕を切り落とし、はじき返し。そうして文字どおり道を切り開いた先。
「お願い、効いて……!」
 志桜里は祈るように六角柱へ向かって獅子累々を放った。
 同時に、現われた光の獅子が彼女の背後に肉迫していた剣を、本体のパペットごと吹き飛ばす。

 六角柱がひび割れ、黒煙を噴き上げながら倒れる姿は、他の2カ所からも見ることができた。


「あら。先を越されちゃったわね」
 志桜里が向かった方角の柱が倒れるのを、エミーリアは目を細めて見守る。それを隙と見て、周囲のパペットが同時に襲いかかる。
 だが緑の瞳は何も見逃さない。
「甘いわね」
 剣の結界が反応して、彼女の周囲で浮遊していた光の剣が即座にパペットたちに突き刺さった。
 金色の長い髪を肩奥へ払い込み、前を向く。
 パペットの層は進むごとに厚くなり、今では数え切れないほどのパペットがエミーリアと六角柱の間に立ちはだかっている。
 エミーリアは小さくため息を吐き出し。ブリザードを放った。ブリザードは強力な寒波で金属製のパペットの動きを鈍らせ、足を地面に貼りつかせる。
 動けなくなった彼らを爆破することで進んだ先。六角柱の内部へ入ったエミーリアは、ふと思い立って身にまとったライブラマントでそこにある装置を識別しようとしたが、相手がただの機械のためか、それとも魔力が動力源でないためか、理由は不明だったが、うまくいかなかった。
「残念」
 ぽつっと呟き、あとは関心を失って。残った爆薬を全てセットして、六角柱を内部から破壊したのだった。
 
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