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朽ちた夢、その残骸(第1回/全2回)

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朽ちた夢、その残骸(第1回/全2回)
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●ダフマ ~5000 years before~


 むかしむかし。あるところにアンリ・マユという科学者がいました。
 アンリはたいそう研究熱心で、それ以外のことには何の関心も持たず、ひたすら研究に没頭してきました。
 そうして何十年か過ぎた頃。とうとう資金が尽きました。
 研究を続けるためにはお金が必要です。しかし研究一筋で生きてきたアンリには、どうすればいいかわかりません。
 処分できる私財はとうになく。考えあぐねていた彼の元に、ある日美しい少年少女が訪ねてきました。

「ドクターアンリ。あなたの論文に深く感銘を受けました。ぜひあたしたちをあなたの共同研究者にしてください!」

 少女はタルウィ・バリガーと名乗り、隣の少年はルガト・ザリチュで、自分の従兄弟だと紹介しました。
 人付き合いは煩わしいだけと世捨て人のような暮らしをしてきたアンリは乗り気ではありませんでしたが、資金難を知った2人が見つけてきたスポンサーの資金提供はとても魅力的でした。
 さらにはアンリが好きなだけ研究に打ち込めるようにと人里離れた地にダフマ研究所を建て、彼をサポートする研究員を集めたりと、ザリチュはマネージング力に長けながら科学者としても優秀で、アンリのように生体工学に通じており、人工ニューラルネットワークの知識が豊富でした。
 社交的で親しみのあるザリチュに比べるとやや内向的で感情的な性質のタルウィでしたが、やはり遺伝子工学と人間工学の分野に明るく、その知識量はアンリにひけを取りません。
 アンリはこの優秀すぎる2人に研究以外の全てを任せることを決め、そうしてアンリは、何の憂慮もなく好きなだけ研究に没入できる環境を手に入れたのでした。

 ただ1つ。スポンサーの意向を取り入れて開発しなければいけないことだけが不満ではありましたが、それをはるかに上回る恩恵のためには我慢するしかありません。それに、タルウィとザリチュの遺伝情報を用いて開発されたアエーシュマアストーのデータは、アンリのディーバ・プロジェクトにも役立つものでした。

 本来ただの人型兵器でしかないアエーシュマとアストーの個性を確立する上で2体を夫婦と定義付け、さらにその後、アエーシュマの発展型として生み出されたドゥルジを息子と定義したのはザリチュとタルウィの感傷でした。
 なぜなら2人は深く愛し合う恋人同士でありながら、決して結ばれない2人だったからです。
 彼らが育った村では家の結びつきが強く、従兄弟同士は兄妹と同義です。物心つく前からその道徳を植え付けられて育った2人には、互いへの愛情は同時に呪いでもありました。
 その愛と憎しみ、反発する理性と感情による葛藤は年月とともに蓄積され、心を侵してゆき。やがて歪みとなって現れるようになりました。
 自分と同じ姿をしたアストーを憎み。しかし唯一の成功体であるため廃棄処分できないことに苛立ち。それならばとアエーシュマを用済みとして冷凍睡眠槽へ放り込み、かわいがっているドゥルジを痛めつけることでアストーが嘆くのを楽しみ。彼らの後継機として造られたドルグワントをいたぶって破壊することが彼女の日課となっていました。
 すぐ感情を爆発させて、周囲の者達へ当たり散らすタルウィの不安定さに研究員達は怯えていましたが、雇用主である彼女に逆らえるはずもありません。タルウィに忠実なザリチュはむしろ手助けをする有り様。残るアンリは何カ月も人前に姿を現さず、日々メールで指示を出すだけ。報告に苦情のメモを忍ばせても無反応ときては、研究員達は見て見ぬふりをするしかありませんでした。

 そうしたダフマ内の状況にアンリは気付いていました。そしてしばしばタルウィが無抵抗なドルグワントを罵倒し、暴行する姿も目撃していましたが、無言で通り過ぎていました。
 このとき、自身が死の病に侵されていることに気付いたアンリは研究半ばで斃れることを恐れるあまり、ますます研究にのめり込んで、それ以外の事は埒外だったのです。


 こうして、起こるべくして悲劇は起きたのでした……。
 
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