クリエイティブRPG

双つ名のテゴナ店、本日のメニュー

リアクション公開中!

 111

双つ名のテゴナ店、本日のメニュー
リアクション
First Prev  13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23  Next Last


 「これまでの美の数々、興味深く素晴らしいものでした。おかげで、次への期待が高まります。少なくとも、もう生半可なものでは納得できないでしょうね」
 テゴナは芝居がかった口調で言うと、視線を詩籠へ向ける。彼はそれを受け止め、頷いた。
 「半端なことをやるつもりはないよ。そこで聞いてて欲しい」
 (……まあ、騙されたのは気分悪いけど、アーティストとして腕試しの機会と思えば、やる気は出たから)
 「MC  K#G。今から、ラップを唄う」
 詩籠は宣言すると、自分の左胸を両手で押さえてから切々と歌いだした。

 「胸に収まった小さな光景
  過ぎてなお忘れない憧憬
  歩み止めたのは俺の方で
  今も囁いてる君のその背へと

  名前と伝えたかった幾つか
  ままならなかった 挨拶すら
  近くに居させて 胸の内で請うた
  言えなかった 拒まれそうだから

  夕焼けに一人立つ君を永久に
  忘れないと誓った日が終わり
  胸に留めた別れ時の残照
  瞼に浮かべては濡らす感傷の

  涙 沈む夕日がまるで
  君へと差すこの想いのようで
  生まれ変われるならあの暖かな
  光になり抱きたい透けた腕で

  そして願う 時よ止まれ
  止まれ 止まれ」

 それは『終わった片思いなのに、今も哀しみの中で想い人を瞼に浮かべる』という叙情的な歌詞だった。詩籠は歌い終わりに、その切なさを表すように、見えない人を抱くように自分を抱いた。
 テゴナは、自然と目を瞑っていた。『片思い』という感情は縁遠いものだ。しかし、それを理解したくなるような熱が、詩籠のラップからは感じられた。
 「恋、というものは詳しく存じませんが」目を開けると、テゴナは言った。「例え、そこに秘められた感情が悲哀だとしても、他者を想う瞬間は、幸福なもののように、貴方のラップを聞き思えました。他の方の美に勝るとも劣らないものだ。……良いでしょう。その美を、認めます」
 詩籠の唄が終わると、閉幕後の劇場のような静寂が訪れる。
 それを破り、カーテンコールの喝采に似た賑やかさで締めを飾るは、花のような二人の少女。
 「ようこそ、フルールの舞台へ!」
 シャーロットとルルティーナによる、舞が始まった。

First Prev  13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23  Next Last