クリエイティブRPG

描かれるものは希望か絶望か

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描かれるものは希望か絶望か
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序章 その声こそは!
 怒号と悲鳴の中に朗々とした声が響く。現れたいくつもの人影が、さっきまで目にしていた憧れに似て希望に満ちいていたから、アコライトは敵意を向け、蹂躙される人々は祈りを向けた。

1章 退けよ汝ら!
「覇理圏ブルーウルフ、人々の声に呼ばれここに参上!」
 その視線に応えて、青井 竜一が名乗りを上げた。それに即座に反応してレーザー銃の銃撃が飛んでくるが、《ロングレンジショット》の技術を生かした移動射撃で冷静に対応していく。《聖域》を展開した上でのブリッツガーダーでの防御は堅く、アコライトの攻撃を阻んでいる。
「的になってくれるとでも思っていたのか!」
 相手の判断力を削ぐための挑発を交えての射撃戦。読み通り、堅固な防御を断ち割ろうと徐々に自分へ狙いをつける気配が増えていく。同時に一点を攻撃しての突破を試みようとしているのだろう。
「(こいつはちょっと厄介だな!)」
 一気に決着をつけるべく竜一は動いた。
「覇理圏・銃狼の型!」
 ブレイブアタックによる今まで以上に精密な動きと冷静な精神で狙いを定めて連続で引き金を引き、確実にひとりまたひとりと地に倒れ伏すのを確認する。
 その強さに、アコライトの動きが一瞬止まる。その隙にカートリッジを素早く交換しながら、どのアコライトにもよく聞こえるように竜一は宣言した。
「これはお前たちの土俵での正々堂々とした勝利だ。さあ、観念するなら早いほうがいいぞ!」
 ならば近づくまで、と距離を詰めていくアコライトの視界をきらきらとしたものが遮る。
「あんたたち! 無抵抗の人に乱暴するなんて、恥ずかしいと思わないの?」
 アリーチェ・ビブリオテカリオが《バタフライスケールズ》の鱗粉を振りまきながら啖呵を切った。アコライトたちは視界を遮られ短時間ではあるが足を止めたところに《マジックミサイル》を撃ち込まれ、武器を取り落としたり腕を押さえたりと攻撃の手立てを奪われる。拾いに走ろうにも、乱戦の中で遠くに弾き飛ばされてしまっては動きようもない。
 動きの止まったアコライトたちにアリーチェは気遣わしげに、しかし多少怒っている風で語りかける。
「ほら終わり終わり、仲間と一緒にそこでへばってなさいよ……あっ、べ、別に、敵でも傷つけたくはないなんて、ぜんっぜん! 思ってないんだからねっ!?」
 積極的に戦いたくはないが乱暴はやめてほしいという、その不器用だが優しい心根が通じたかはわからない。だが、相手取った者たちに抵抗の意思がなくなったことだけは確かだった。
「何を言っている!」
 ――相手取っていない者たちはその甘さを侮りとみて激昂し、近接用の棍をアリーチェにふりかざすのだが。
 そこに割って入り、アコライトたちと刃を交えるのは世良 潤也だ。
「できればそうやって優しくしてもらってる相手に対して不意打ちはやめてほしい、いや、こういう乱暴自体やめてほしいんだが……仕方ない、邪魔させてもらうぞ!」
 突入時から展開していたエネルギーシールドを外すことは叶わず、潤也はレーザー銃の攻撃を盾で防ぎつつもう片方の手でソレノイドソードを振るう。あくまで峰打ち、しかし《剛力》とソレノイドソードの電撃を用いて確実に意識や意志を刈るための力を込めた攻撃がアコライトたちを打ち据えていった。それに怯むことなくなお飛びかかってくる者には返す刀で《ラッシュハザード》を撃ち込み出鼻をくじく。ひとり、ふたり、と倒れ伏す者が増えていく。
 しかし、そんな苛烈な戦意のやりとりであっても、激昂した相手であっても、潤也は語りかけることをやめはしない。
「これ以上手荒なことはしたくない! 退いてもらえないか!?」
 聞き入れられずとも命までは取らない。それが心優しき少年の矜持である。たとえ、聞き入れられずに敵が継戦の意志を示しつづけ、倒れ伏した者を起こすために癒やし手がやってこようとも。
「……前に出てきましたね」
 反逆と愛の神話から想起されたブレイブソースを持つ者――すなわち堕天使魔法少女ルシェラの姿を取った優・コーデュロイはアコライトの制式武装で身を固めた妖精たちを見てつぶやいた。こちらの狙い通り、負傷を癒やそうとセイヴァーズの近くまで踏み込んでくるところに、矢ををつがえる。
「減らしていきましょう」
 そう言いながら放たれた《螺旋羽牙》が、妖精の肩を射貫いた。思わず詠唱を中断して苦悶の声をあげるのに対して、優はその楚々とした見目で淡々と語りかける。
「味方の回復はさせません。消耗戦は、お互い望むところではないでしょう?」
 そう語りかける優に、手傷を負った妖精は両手を挙げて降参の意思を示した。もとよりギルティアス教国への恭順ではあっても信仰ではない妖精の立ち位置としては、そうすることが自然なのかもしれない。
 しかし、それを越える事情もありうるのだろう。無事な妖精族は答えず、魔法で攻撃を仕掛けながらも散開して観客たちを確保しようと動き始めた。優は放たれた攻撃を受けながらも踏みとどまり、ふたたび弓を引き絞り撃ち抜いていく。
 戦場は混沌とした空気を帯び始めた。

 そんな中、敵陣の真っ只中に松永 焔子が躍り出た。バイコーンに騎乗し機刀モラルタを《拡散》を用いて広範囲に振り回すその姿はまさに海を飛ぶ鮫のごとく猛々しい。むろんアコライト側からも的としてみられたその威容は種々の攻撃に晒されてはいるのだが、《バッシュガード》と《マジックシールド》を巧みに使いこなしてしのぎ続ける。
 ならば至近距離から数で押しつぶすのみ、と多くのアコライトが接近してきたのは、焔子にとってまさに狙い通りといったところだ。
「かかりましたわね、この『正義の通り魔』の術中に! まとめて噛み砕いてさしあげます!」
 必殺の《メガロドン》が炸裂した。焔子の腕は見る間に巨大な鮫のあぎとと化し暴れ回り、アコライトたちの武具はたちまち鋭い歯に破壊されていく。その牙にかかったアコライトの表情には死の恐怖が浮かんでいるが、実は防具の下の柔い肉に対していささかの傷もつけまいと加減が入っている。焔子の心中には、教国の愚行を阻止するという意志はあっても、教国に利用されている者に対しては無力化にとどめ暴力を必要以上に行使しない、という考えがあるからだ。
「責務は果たしますが、必要以上の乱暴はいたしません。さあ、投降なさい!」
 他方、奥側に進もうとするアコライトの前に、砂原 秋良が《デーモンウイング》で降り立つ。ここに来るまでは気配ひとつ感じさせずにいて、しかし今はその実力を隠さず気迫としてあらわす小柄な少女。アコライトたちはたじろぐものの、包囲する形で攻撃を仕掛けていく。
「――さあ、悪の敵のお出ましです」
 己のブレイブソースである『パニッシャー・アルコル』としての名乗りを上げ、秋良は閃光刃を抜き放って応戦する。
「怒りも祈りも力に変えて」
 レーザー銃を構える一手の隙を狙い胴を薙ぎ、
「悪の敵としてこの刃を振るいましょう」
 棍を振り抜くのを躱して狙い澄ました突きを喰らわせる。一撃で膝を折る者もいれば、二度三度と立ち上がる者もいた。しかし、その瞳たちから敵意は失せない。
「……降伏の意志はなさそうですね」
 さまざまな練度の者がいるが、ことここで相手取る者たちに限っては、セイヴァーズに屈してはくれなさそうだった。そうしたことがわかってなお、秋良の視線はまっすぐにアコライトたちに向けられている。悪の敵として、何が悪かを見定めるために。
「あなたがたが未来の前に立ち塞がる不条理や理不尽だというのなら、明日の笑顔の敵だというのなら、私は斬り拓きましょう」
 その戦いのるつぼをあとにして、アナベル・アンダース人見 三美がさらに敵陣の奥へと踏み込んでいた。
「三美、行こう」
「ええ、力を尽くしましょう」
 狙うのは、先ほどから散開を始めているアコライトの一団だ。把握している会場の構造からいっても、ここから奥に散られてしまうと、やっと形成されはじめた避難経路を狙われるおそれがあった。三美はブースターブルームで前を行くアコライトたちを視界に捉え、まずは呼びかける。
「必要以上の攻撃を私たちは望みません。どうか投降か撤退を」
 聞き入れられるとは思わないが、それでも無用な戦いはしたくない。しかし願いもむなしく飛行しているところを狙われているという殺気を読み取って三美はブルームから降り、Re:バスケット★カノンを用いて散弾を放つ。それは多くのアコライトたちに手傷を負わせ動きを止めさせているものの、倒れ伏す者はいない。
 そうこうするうちにさきほど倒しきれなかった妖精のひとりが幾人かの傷を癒やし、魔法とレーザー銃の複数同時攻撃を放ってきた。浅いが数多い攻撃に、《マジックシールド》をはじめとした数多くの防御越しでも思わず膝をついてしまう。
 立ち上がらなければ、と足に力を込める。と、ふっと衝撃が止んだ。見れば、相対する妖精の顔から血の気が失せている。
「……お前たちが問答無用というのは、最初からわかっていたつもりだったが」
 その心はやはり癒やせなんだか、と《シャープストライク》を放ったアナベルがかすかな無念を言葉尻に浮かべながらつぶやく。そして一カ所に固まっていたアコライトに対して、三美の《サポートアタック》の手助けを受けながらソレノイドソードをふるって放電気絶させていった。場のアコライトたちが倒れ伏し沈黙したのを見計らって、アナベルは三美に避難経路の安全確認を取り、次いで尋ねる。
「怪我はないか」
「人数差で少し数は多いですが、たいしたことはありませんよ」
 その答えにアナベルは手早く傷の深さと数を確かめ、ハイグラックで塞いだ。
「教国の好きなようにはさせられんな。次だ」
「はい、アナベル様」
 それ以上は時間が惜しいとばかりに、ふたたび二人で避難路を維持するために駆けていく。視線の先にいるアコライトたちに向け、三美が《シャイニングバードストライク》を喚ぶ。

 戦闘の音は、まだ止みそうにはなかった。
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