第1章『セイヴァー、突入』
悪に勇気や想いの力で戦い続ける世界「ロディニア」
カディヤックヒルにあるアンダープレートでは中流から下流層の人々が暮らしている。
皆貧しいながらも彼らなりの幸せや平穏を見つけていた。
しかし、それは空に昇っていく一筋の煙により消えようとしていた。
古い本やマンガを集めている倉庫ではサイボーグたちが問答無用で押し入り、本を物色している。
「この辺りの棚は研究に使えなさそうだ。燃やせ」
リーダーが淡々と指示を出すと、他のサイボーグが腕の火炎放射器で燃やし始めた。
「集めた本が・・・・・・」
管理人の一人が拳を握りしめ、詰め寄ろうとする。しかし、すぐにアオタツが彼を止めた。
「本を持ち出すのが優先だ。僕らではサイボーグに対抗できないし、もし負傷してしまったら持ち出せる本も減ってしまう」
そう諭すアオタツも歯を食いしばっている。
「悪かった、考えてみればそうだよな」
「僕だってもどかしいさ。でも、今は本を裏口から持ち出さないと」
アオタツと管理人は燃える本棚に目を向けながらも、本の回収に努めた。
その話を聞いていた
壬生 杏樹と
水瀬 茜にも力が入る。
「貴重な本の数々、濡れてしまった程度ならまだしも、燃えてなくなってしまえば取り返しはつかない」
そして、杏樹は本棚の影から飛び出し、サイボーグから見える位置に立った。
「ならばその『元』を断つ! アカツキ行くよ」
「分かった、ロビン」
茜も本棚の前に来ると、突撃するようにサイボーグの方へ走り出す。敵も火炎放射器を向け攻撃を開始した。
茜は『【BC】クローシールド』で炎を防ぎ、さらに『【BC】暁光の鎧』で炎に臆することなく突き進んでいく。
茜が剣を振るい火炎放射器を破壊しに取りかかる間、杏樹は弓を引き魔力の矢を形成する。
その矢を放ち、彼女もサイボーグの腕を狙った。
「書物という英知の結晶に危害を加える者を逃がすわけにはいかない・・・・・・!」
さらに脚を狙い、サイボーグたちを動けなくしていく。茜の方は剣を振り上げ、本棚を巻き込むように振り下ろした。
「止水剣・水龍!」
燃え始めていた本棚の炎が消えると同時にサイボーグたちも倒れていく。
しかし、存在に気づいたのか、サイボーグの増援が茜の前に現れる。
「炎がなんだ、悪意の炎にこのボクが負けるわけにはいかないんだ!」
彼女は自らに気合いを入れ、サイボーグに目標を定めながら突っ込んでいった。
杏樹も思考を加速させ、それを元に弓矢を構える。放たれた電撃の矢はサイボーグに刺さり、痺れさせていった。
「この辺りのサイボーグは倒せたみたいだね」
茜がサイボーグや本棚を確認する。
「『奪還されるくらいならいっそ燃やしてしまえ』という行動を取らないとは限らない。一気に追い詰めよう」
「了解!」
杏樹と茜はさらに先へ進み、本棚を燃やそうとしているサイボーグの元へと向かった。
そこではすでにマギア(
燈音 春奈)とラフィルト(
永澄 怜磨)が戦っている。
まずマギアが重力を操り、サイボーグたちを引き寄せた。
その間に『【BC】スパークルイグニス』の柄についているスイッチを押し、レーザーの刃を出す。
「人が集めた本を全部燃やすって、酷い事をするね・・・・・・」
そして、引き寄せで飛んでくるサイボーグを次々と斬りかかっていった。
その後ろではラフィルトが『【BC】コバルトローブ』で魔力を強化していく。
強化をし終えると『【BC】バレルリオート』を構え、サイボーグの火炎放射を邪魔するように発砲していった。
「本に手を出すのはアコライトだけじゃねえのかよ・・・・・・」
ラフィルトが攻撃していると、サイボーグも彼に接近し火炎放射器の炎を浴びせようとする。
咄嗟に水柱を生み出し、炎を消していった。サイボーグの数が増え、今度は水鉄砲のように盾代わりに発射する。
「研究だか何だか知らねえが、人の守りてえもんを土足で踏み荒らしてんじゃねえよ!」
ラフィルトはサイボーグと同時に本も濡らし、未然に燃えるのを防いだ。
さらにマギアもサイボーグたちの攻撃を『【BC】ファルケタロン』で防ぎ、すぐに素早く剣を振るっていく。
「ここにある本は悪を成すために集められた物じゃない。あなた達には渡さないよ」
サイボーグが殴りかかってきたが斥力で威力を弱め、先に斬りかかった。その間にラフィルトが手の中に魔砲を形成する。
「下がれ! まとめて止めてやる!」
彼の言うとおり、マギアは一度サイボーグたちが離れた。ラフィルトが引き金を引くと、水が勢いよく放たれる。
そして、敵に当たった瞬間、水柱が上がった。その場でだけ洪水が起こっているような状態の中、マギアが剣を振り上げる。
「後は任せて。一撃で終わらせる!」
剣を一気に振り下ろすと、溜められた力が斬撃となりサイボーグを斬り裂いていった。
炎が無事鎮火した通路は水浸しになり、サイボーグの残骸が並んでいる。
「この辺りの本を別の場所に移動させよう。今度は残骸で本が汚れてしまいそうだし」
杏樹は弓矢をしまい、本を手に取った。隣にいた茜も同様に本を回収する。
「戦う場所がちょっと狭かったから本を汚したり同士討ちになったりしたらどうしようかと思ったけど、なんともなくてよかった」
「本やマンガはアコライトだけ考えればいいと思っていたが、他のヴィランも絡むと厄介だな」
と、ラフィルトがサイボーグの残骸を持ち上げた。
「敵がどうあれ、私たちは人々を守るだけだよ」
マギアは言うと、彼女らも杏樹たちと共に本を集め、被害がまだ少ないところへ運んでいった。
* * *
その頃、リーダーのサイボーグが本棚を物色していた。本の背表紙を眺め、時折中身を確認する。
「・・・・・・この辺りで使えそうな物はなさそうだ。ここは燃やして構わない」
リーダーに言われ、他のサイボーグたちが火炎放射器で燃やそうとし始めた。
その瞬間、突然敵の目の前に水柱が飛び出してくる。
「濡らしてしまっては本が傷んでしまいますが、仕方ありませんねっ」
シスネ(
エスメラルダ・エステバン)はサイボーグに水柱を当てていった。
同時に本棚も濡らし、消火活動に努める。攻撃により、サイボーグたちが困惑している間に、シスネはその手元を見た。
「どうやら別のサイボーグが回収を担当しているみたいですわね」
本を持っていないのを確認すると、手の中に魔力を集める。すると、巨大な星芒形の塊が生み出された。
そして、投げるように魔力の塊を放つ。塊は強い光を放ち、高速で回転しながら敵を切り刻んでいった。
火炎放射器ごと切り刻まれたサイボーグたちは次々と倒れていく。
しかし、シスネの存在に気づきサイボーグの増援が向かってきた。
「本棚は後回しだ。先にセイヴァーを始末するぞ」
サイボーグたちがシスネに直接火炎放射器の炎を浴びせそうとしたそのとき、彼女の目の前で水柱が上がる。
そして、その水流が火炎放射器から出る炎を防いだ。
「いったい誰が」
シスネが振り返ると、彼女の後ろには同じセイヴァーであるアリス・リドル(
騎沙良 詩穂)が立っている。
「本を弾圧するとは・・・・・・アレクサンドリア図書館のようにはさせません」
アリス・リドルが防いでいる間にシスネは管理人たちの元へ走り出した。
「感謝しますわ。わたくしは濡れた本を乾かしに行きますわ」
シスネが離れると、アリス・リドルは攻撃態勢に入る。彼女は一度本棚の後ろに隠れ、勇気の力で弓矢を形成した。
そして、本棚の隙間から矢を放ち、火炎放射器を攻撃していく。
「サイボーグ研究に使う、ということはロボットが出てくるような本かな? それならSF系の本棚あたりに行けば」
アリス・リドルは目星をつけ、攻撃しつつ目的の本棚まで進んでいった。
その本棚の正面まで来ると、彼女はサイボーグに向かって弓を引く。先ほどの矢に水の力が加わり高速回転していた。
サイボーグたちが接近してきた瞬間、その矢を放つとウォータージェットのように身体を貫いていく。
そして、急所に穴が開いたサイボーグは倒れていった。
「サイボーグはなんとかなったね。他にもギルティアス信者も注意しないと」
アリス・リドルは周囲を警戒しながら、別の本棚がある場所へと移動した。
一方、倉庫の入り口には
火屋守 壱星と
金剛 楓夏が立っていた。
「サイボーグが火災を起こしている、だとッ!? こんな住宅密集地で火災を起こすとか、許せねぇ暴挙だな!」
壱星は意気込むと同時にブレイブコンバーターを使い、『愚炎』に変身する。
「おお、いっせー先輩が珍しく燃えてるっすね。貴重な本もあるみたいですし、サイボーグの暴挙を止める手伝いをするっすよ」
楓夏も変身し『ルナガイスト』の姿になると、自分の持っていた武器を愚炎に見てもらった。
「・・・・・・これで問題ないな」
一通りメンテナンスを終え、彼女の武器が持つ性能を高める。
そして、武器を返すと愚炎は『【BC】セカンドスピナー』のエンジンを鳴らし、正面から倉庫に入っていった。
すると、さっそくサイボーグたちとで出くわす。
「今度は誰だ!」
サイボーグに問いかけられ、愚炎はポーズを決めた。
「赫奕の灰燼、愚え」
次の瞬間、サイボーグたちが火炎放射器の炎を放つ。咄嗟に水柱を生み出し炎を防いだ。
「やっぱりこういうのは聞いてくれねぇんだな」
愚炎は発生している水柱を凍らせていく。その氷の塊を持つと、自ら起こした嵐に乗せてサイボーグたちにまき散らした。
氷はサイボーグに当たった瞬間溶けていき、周囲は水浸しになっていく。
「重罪を犯していることを理解しやがれ!」
愚炎が囮となっている間にルナガイストは本棚の影に身を潜めた。そして、サイボーグの頭を狙い、弾を放つ。
ルナガイストの存在に気づいてない敵に命中し、あっさりと倒れた。
「まずは1体・・・・・・かな?」
唐突に倒れたサイボーグに他の者が驚く。
「敵は一人じゃない。警戒せよ」
サイボーグが見回した瞬間、ルナガイストが本棚から飛び出した。敵が火炎放射器を向けようとすると、素早く蹴りを入れる。
そのあとすぐに放射口に『【BC】ポリスニャンナイン』の銃口を突っ込んだ。
「塞いじゃいますよ☆」
そのまま弾を発砲し火炎放射器を使えなくする。その間に別のサイボーグがルナガイストに殴りかかろうとした。
その瞬間彼女はすぐに銃を抜き、振り返らずに放射口に撃つ。
「残念でした☆ 憤怒衝破」
そのまま身体を破壊するように蹴り上げた。
そして、サイボーグが困惑する間に『センサースコープ』で照準を合わせると、銃を切り替えると肉球弾を放った。
愚炎も『【BC】セカンドスピナー』に搭載していた『【BC】ガトリング砲』を撃ちまくり、サイボーグを巻き込んでいく。
やがて、周囲のサイボーグが片付き2人とも武器を下ろした。
「よし、これで上出来なんじゃないか?」
周りを確認していた愚炎がくしゃみをする。
「なんか寒くない?」
「先輩の攻撃のせいじゃないですか☆」
ルナガイストはツッコミを入れ、すぐに笑った。それを見て愚炎は照れくさそうに頭を掻く。
「そんなに笑うなよ。さっさとサイボーグの足止めをしに行こうぜ」
2人は本棚の奥へと進んでいった。