クリエイティブRPG

サイエンティスト・リキャプチャー

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サイエンティスト・リキャプチャー
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アンダープレート、イマジンガレリア。
生きる者へ希望を届ける出発地の一角で、轟くのはひとりの男の晴れやかな声だった。

「さあ諸君! 物語の幕は切って落とされた! 我々は我々らしく、正義を掲げ応援してくれる読者の為に心血を捧げようではないか。諦めないことに忠実で、走ることに貪欲で有り続けなければならない。それを我々の読者が望んでいる限り!」

光牙 影路郎はそう言い切ると、板の上に立つ役者のような大仰な振る舞いでイマジンガレリアに集まった者たちの方へ向き直った。精悍な顔つきの中に浮かぶ喜色は拭いきれていなかったが、今更ではあったので無論このメンバーの中に突っ込む要員もいなかったわけではあるが。

「それでは諸君、任務の時間だ。――自称ソルフォードの弟子である我々の仲間を、無事救出し、ここイマジンガレリアで再び言葉を交わすまで、が任務である。努努無理を働き自滅などしてはくれるなよ。血気盛んな若人であれば尚更! ふっ、はは、ははははははは!」

高らかな笑いの咆哮するイマジンガレリア。
ロディニアの、希望の砦から物語は加速する。



「……恐らく、という推測の域を越えられない話にはなるのだけれどね」
燈音 春奈はそう口にすると、メンバーの顔を右から順に確認しながら、浅い息をひとつついた。
「まあ、こういった場合当然だが一般的に我々が持ち得る情報では、敵は一般人をサイボーグへする為彼等のテリトリーへ運ぶことだろう。マッドサイエンティスト・エジソンのアジト内にある研究室……。そこで残忍な行為は行われている。勿論こうしている今も。セイヴァーとしては見逃せない案件だ、が。今優先すべきはこちらの仲間を奪還することだね。エジソンに対立するには、我々の人材と力量が不足していることは言うに及ばず。しかしだからこそ、ここで仲間を失うことは何よりの損害へと繋がることであるわけだ。恐らく自称弟子が連行される場所はエジソンのアジト内だろう。彼は非力な青年だが、ここの研究に尽力していたことは事実なわけだから、このままサイボーグになんてされてしまったら」
「頭がイカレるだけじゃなく、こっちの情報まで引き抜かれちまう恐れがあるってわけだ?」
春奈の言葉を引き継いだのは永澄 怜磨だった。あどけなさの残る顔を僅かに歪めた彼は、小さく舌を打って隣に座る同志へ視線を投げた。
「ま、春奈の推測ってやつに過ぎないけど」
一方で軽口を叩いた男はルドラ・ヴァリオス。こんな口ぶりではあるものの、自然を愛する穏健派なのだから人は見かけによらない。
三人は目を合わせあって。
それぞれ変身すると戦闘準備を整えた。

「まあここで話していても拉致があかんわい。ソルフォードの誘引体質にも困ったもんじゃが、それも面白い。ひとまずさくっと捜索を割り振るか」
提案を示した男はゲルハルト・ライガーである。年齢は六十を超えているがまだまだ現役の教授であり、頭の回転も良かった。
「わるいてき ころちょうね」
「うむ」
ライガーへそう声をかけてきたのは私 叫。こちらは怜磨より格段に年端の及ばない子ども同然の姿である。愛らしい容姿でこてんと首を傾げるさまはこの場所における癒しに等しい。言っていることはあまりにも直情的ではあるが。
「巨大個体用にオレと私 叫と『正義の通り魔』がこのメンツの中に残ってるしまあ急ぎでのバランスは取れてるだろ。多分。その場凌ぎでも最終的に勝てば官軍だ」
豪胆に笑う男は龍造寺 八玖斗である。黒髪をポニーテールに纏めながら戦闘準備にとりかかっていた。
「まあ。名前で呼んでくれないなんて意地悪な方。悲しくなってしまいます」
しかし彼の言葉に水を差す声ひとつ。松永 焔子である。
「へいへい。欠片も思ってねえくせにな」
「そんなことありませんわ。私達、仲間ですもの」
うふふ、と綺麗に微笑んで笑う焔子に、八玖斗ははあっとため息を吐く。
「私は空中から捜索致しますわ。視界が広範囲になるからお役に立てると思います」
「オレはとりあえず先行組についてって標的確認したらバイクで追跡するわ」
焔子と八玖斗が順当にそう口にする。なかなか息が合うようだった。
「今回は<ランドセル型基地局I>のお陰で情報共有も円滑にいきそうじゃ。いやあ文明の利器さまさまというわけか」
「ぶんめい えらい?」
「おお、えらいえらい。持つべきものは探究心よ」
ライガーに頭を撫でられ嬉しそうな顔で笑った私 叫は鈴が鳴るように笑う。
「ぶんめい えらいなら じゃまするやつは ころちょうね」
「余り羽目を外し過ぎないように」
私 叫をやんわり窘めると、春奈は顔つきを凛と構えた。
「それじゃあ各自、準備を」
春奈の言葉に全員が視線を交わし合う。それから同時に頷いて。
「――行こう」

エンジンのモーター音は活気に溢れていてけたたましく戦慄いている。
車体を温め切ったセカンドスピナーの気合は十分らしかった。
「頼むぜ~、相棒」
ぽんぽん、とハンドル部分を軽く叩く青年は火屋守 壱星。今回の捜索における先行組である。
「つっても北西って言われたところでなあ。ひとまずゲルハルトの指示通りに動いてくしかねえかあ。おーい、ゲルハルト! 聞こえてんだろ? セカンドスピナー走らせながらじゃ思うように情報も聞けねえからさあ、共有しっかり頼んだぜー?」
<ランドセル型基地局I>へ語りかけながら、壱星は目を輝かせる。唸るエンジン音を浴びて、生き生きと水を得た魚のように弾んだ声を出した。
「いっちょかますぜ!」
速度を上げて、風を切って駆け抜けていく。

「壱星くん元気だねえ」
カズコ・カッチンは先頭を行くライガーの背中にそう語り掛けた。ライガーの珍しいため息が聞ける機会に恵まれ楽しい様子である。
「ライガーさんも若者の強引さには敵わないかなあ?」
「カズコ、余り年上をからかうものではないわ」
「えー、でもクレアさんも楽しかったでしょ? さっきの会話」
「そ、れは……」
「もう! 素直じゃないなあ! このこのっ」
「やめ、やめなさいカズコ……っ!」
カズコの隣を歩くのは、ライガー達と先行組を務めるクレア・ロングストリートである。セイヴァーになって日が浅い彼女にとってライガーからの期待は光栄であると共に恐縮でもある。無礼の無いよう気をつけなければ、と思っていたところでもう一方の同行者がカズコであったことから、もう既に雲行きは怪しくなってきてはいるけれど。
「……とりあえず闇雲に探しても意味がないわ。場所を限定的に絞って、出来るだけ人の多い所で情報を集めないと」
「ほんじゃまー、ハイパーループ駅だね」
「駅……。そうね、確かにこの時間帯なら駅は人の往来も多いはず。アンダープレートの外部へ相手が向かうようなら他地域で見かけたかどうかの手がかりにも繋がっていくだろうし……」
「決まりっ! 壱星くん、聞こえてるー? あたしたちハイパーループ駅に向かうから。他のメンバーも情報共有してくれるだろうし、壱星くんはとりあえずバイク走らせてどんどん探し回ってこ! 好きでしょ、そういうの」
カズコが楽しそうに通信機へ話しかけると、爆風音と共に何か叫んでいる声が聞き取れた。
「ふんふん? ……任せとけって? すごい、頼りになるなあ!」
『言ってねえよ!』
「私達も情報はその都度共有致しますので……。すみません、闇雲にバイクを走らせてしまうことになるかもしれませんが……」
『やっ、そんな、全然イケる。ヘーキ! 寧ろ走らせてナンボみたいな』
「壱星くんあたしの時と対応違いすぎない? お姉さんに弱いの?」
『んなことねえよ!』
「あっやし~。ふうん、まあいっか!」
カズコはにっこりと笑って、先頭を行くライガーの方へ駆け寄っていく。ライガーの顔をみつめながらどうやらハイパーループ駅までの最短ルートを相談しているようだ。
二人の様子を眺めながら、クレアは考える。
(だけど、市民からしてみれば余り傾向は良くない筈よね……。誰だって自分が可愛いんだから。情報を私達に流したことが知れて、自分にまでサイボーグからの被害が及ぶかも、なんて考えたら堪らないもの。見かけていたって、サイボーグが恐ろしくて口を割って貰えない事まで想定はしておかなくちゃ)


「ジェノさん、あたしたちはどうしよっか」
「お前はお前で情報源にアテがあるんだろう?」
「あはは、バレてたか。まあねん」
ひと組の男女が適度な距離感で軽口を交わし合う。
大人びたクールな顔つきの先行組、ジェノ・サリス
健康的で凛々しい顔つきの女性、十 刈穂
「まあでもね、アテに侵入するにも豪華なアクセサリーが必要なんだ。ホラ、やっぱり女の子って着飾ってナンボじゃない?」
「成程。俺を侍らせたいわけか。高いぞ?」
「え~。あたしみたいな女の子のアクセサリーになれるのは男として本懐でしょ?」
「はは、戯れ言を」
口元に余裕そうな笑みを下げたまま、ジェノは刈穂の手を取った。
「わあ」
「なんだ? 侍らせるんだろう? 俺を」
「なんか余裕そう。むむむ」
「普段はそう遊ばない。リードしてやってくれ」
「他の女に色目使っちゃ嫌よ、ダーリン」

「酒場と娼館を中心に聞き込みしてくよ。雰囲気に飲まれないよう注意しててね」

『九曜、そっちどう? なんか掴めたか?』
「キミね。そっちどう? じゃないよ。どうせならお姉さんと話したかったのになあ」
『悪かったな! お望みのオネーサンじゃなくてよ! そんなことよりなんか情報!』
「糸口も掴めてないのにできるわけないんだよなあ。こっちも全然見つからないよ。情報尋ねて回ってるけど、サイボーグの話持ち込んだらみんな顔色悪くしてる」
「やっぱそうだよね。もう少し慎重に情報あたってみるよ。任せてほしいかな」
ガリガリと地面を削り続けるランド・ライダーを一旦停止させてから、九曜 すばるは辺りを見回した。大通りからちょっと入ったところにある路地にいつの間にか入り込んでしまっていたようだ。
(恐らくサイボーグもそう気楽に人攫いをするわけじゃないだろうし……。もしかしたら以前もこの辺りをうろついて段取りを組んでいた可能性もあるかな……)
くるんっとランド・ライダーで走行方向へ向き直る。この路地の奥に行けば確か、大通りよりも治安が悪くなるはずだ。
(蛇の道は蛇……。余り行きたい場所ではないがこの際贅沢は言ってられないか。治安が悪くなる分、手に入る『報酬』も多いはず)
がちっとランド・ライダーが地面を捉えた。瞬間、すばるは高速で駆け抜けていく閃光の一部になる。
「ここでしっかり手柄を立てておかないと、クレアさんに合わせる顔がないからね」


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