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新クレギオン

歪められた正義

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歪められた正義
【!】このシナリオは同世界以外の装備が制限されたシナリオです。
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宣戦布告(プロローグ)

 乗り合いのヴィーグルが停車したのは、郊外にそびえた山の裾野だ。
 ここから先の山道は、守衛と門に遮られている。
 スーツ姿の中年男と若い女性は、入構手続きを済ませた。そして門をくぐり抜けた先に停留していた乗り合いヴィーグルへ乗り込んだ。
「木立の合間を行く感想は、いかがなものかな? アウロラくん」
「葉っぱが色づく頃になれば、きっと素晴らしい景色が見られると思います」
「ああ、そうかもしれんな。人工樹木にも、そんな機能があったか」
「落葉までするかどうかは分かりませんけど」
「真っ二つに割れて、中から何か出て来そうなのはあるか?」
「ここからでは何も分かりません」
「だろうな。何か怪しいものが飛んできた時は、その色気で頼むよ」
「そうね。考えておくわ。それにしても――」
 事務的に中年男をあしらうのは、秘書を務めるアウロラ・白蘭
「――さすがは大企業って所かしら」
 曲がりくねった道がたどり着いた場所は、山々に囲まれた広大な工業施設だった。
「これがマックロ研の実物大か。西側の馬鹿でっかい白い箱がマックロ研、東側の半分山裾にめり込んだようなマッチ箱の黒いヤツが、マク重だな」

 マックロ研の談話室へ通されると、しばらくして壁のモニターがオンラインになった。
 そこにに映し出されたのは、灰色のスーツに身を包んだ目つきの笑っていない中年男だった。顔つきは面長で骨張っていて、いわゆる強面の部類だ。白髪の交じりはじめた短髪を整髪剤で整えてある。いかにも神経質そうな感じで圧迫感があり、会話をするにも急かされているような気がしてきそうな雰囲気だ。
「どうも初めまして。マクガーネル・マシニング・ファクトリーの代表を務めます、ネレイド・マクガーネルです。社則により、一般の方と直接対面する際にはモニター越しになることをお許しください」
「はあ。わたくし、編集長のデニス・モールシュタットと申すものです。こちらは助手ですが、それだけにしておいてはもったいない子です」
「アウロラ・白蘭と申します(のっけから相手を徴発していこうなんて、飛ばしすぎでしょ)。腕を買って頂けているようで光栄です」
 困った表情をつくりデニスをフォローするアウロラに、ネレイドが苦笑した。
「パワハラが過ぎますな、デニス編集長。さて――」
 アウロラの容姿は男性の目を引くのだろう。デニスと会話する時とは角度の異なる視線が、ソファに座っているこちらの上体をなぞらえたことに彼女は気付いた。
「――今日は我が社の製品についての取材をとお伺いしておりますが。広報ではなく私をご指名いただいたのは何か理由がおありですかな。手短にお願いしたい」
「貴重なお時間と、またとない機会をどうも。早速ですが、御社の製品についての声をご覧いただき、率直な意見を伺いたい」
「本来は検閲を通ったものに限るのですが……まあ、イイでしょう特別に。ゴアな表現がないことを望みますよ。私は苦手でしてね」
「アウロラくん、では見せてくれたまえ」

「ではこちらの映像をご覧ください」
 アウロラがウェアラブルコンピューターで再生したのは、あらかじめ編集してきたマクガーネル社の製品をレビューした顧客の配信動画だった。

* * * * * * * * *


 映像には人里離れた荒れ地のど真ん中に、一般向けのヴィーグルが一台置かれていた。
 目的地までは自動で運転され、顧客は中央のテーブルを囲むように配された席に座れる。
『今回は、マクガーネル・ヘヴィ・マシナリー製のRVをレビューします。レジャーから引っ越しまで、何でもこなしてくれる万能ヴィーグルに思えますが、これから購入を検討される方は次の点にご注意ください』
 高瀬 誠也はヴィーグルの側面を軽く叩いてからフロントへと回り込んだ。
『まずはこの全周に渡ったウィンドウですが、防汚コーティングが弱い。郊外の荒れ地を半日も走ると、とにかく汚れが張り付きます。プライバシー保護モードが不要なくらいというから、凄いですよね。このため、定期的に窓の掃除が必要になります。とはいえ、車内からボタンをひと押しするだけなんですけどね。このボタン押しはあまり意識させて欲しくない機能ですよね。他社では自動のもあります』
 誠也がヴィーグルの側面に立つとドアがスライドされた。座席について話を続ける。
『2つ目の問題点。ジェネレーター、いわゆるエンジンですね。これが発するノイズの封じ込めが甘くて、通信機器に支障が出る。特にジェネレーターが過熱しているときには症状が顕著に表れます。平文送信の電波がジャミングされてリアルタイムで変調される暗号化通信さながらに送信内容が劣化します。全天候型通信ナビがよく正常に動いてるなあと感心します。この辺りが高度な技術を積んでいる、という事なのでしょうか。このため、人命に関わるような社外パーツを取り付ける場合には、マク重に相談しなければならないという手間が掛かります。ダメじゃん。クレームものだよ』
 車外に出た誠也は、タイヤの傍にしゃがみ込んだ。
『3つ目です。はいコレ、タイヤの減りが早い。同業他社を調べてもマク重だけですよ。アレですか、新品購入時のバッテリーは試供品ですとか、そういうノリなんですかね。うちのタイヤは試供品レベルです。そーですか、理解しました。ですが、スペアタイアが試供品と同等の品質のものを2本も床下へ積んでいるというのは評価できます』
 誠也の上半身が大写しに切り替えられた。
『さて、4つ目。これはハッキリ言って、ヤバイです。外の空気を取り入れる「外気導入」と、車内の気密を保つ「室内循環」の切り替え機構にバグがあります。あくまでも希にです。頻繁に希。いやこれ、致命的じゃないですか? 呼吸に不適切な大気成分である恒星系なんかで、居住ドームの間を行ったり来たりするのには恐ろしくて使えないです。ドームを抜けたら外気導入モード固定になって、車内の空気が抜けちゃいました。シャレになりません、というか死にます。死』
 ヴィーグルを含めた辺りの全景が移る位置までカメラが引かれて、誠也が訴えた。
『マク重さん、リコールを実施すべきではないでしょうか。今回のレビューはココまで。私は簡易宇宙服に身を包んでから、コイツに乗ってレンタカー屋まで帰ることにします。それでは次回のレビューも、よろしくお願いします』

* * * * * * * * *


「充分な品質管理は行われている。まあ、人為的なミスでしょうな。調査のご依頼は渉外までお願いできますかな、帰り際にでも案内させます」
 と、顔の表情をひとつも変えずに言ってのけたのは、代表のネレイドだった。
「ハッハッハッ。そうさせてもらいますよ。社長、死人は少ない方がいい」
「まったく同感です。死神にまで上り詰める気はありませんからね。一企業の代表で、たくさんだ」
 デニスとネレイドの笑わない視線が鋭く交差していた。モニター越しとは言え、お互いの表情がヒリついているのが分かった。直接の対面であっても、普段からこの調子で行くのだろうか。行くのだろうな、特ダネの為なら。
 ふたりの表情が徐々にニヤケていった。
「楽しそうですね――」
 不穏な空気を察したアウロラが、デニスに助け船を出した。
「――お知り合いなのですか」
「初見だ」
「あっはっは、違いますよ。はじめて御目に掛かっております。驚かせてしまったようで申し訳ない。他にご用件はおありですかな?」
「ああ、もちろんだよ、社長」

 その後、同社の売り出す家電品の粗をひとしきりぶちまけたデニスは、次回の約束まで取り付けるに至った。
「では、ごきげんようデニスさん、えっと、アウロラさんでよろしかったかな。すぐ迎えを行かせます。渉外へも寄りますかな?」
「ぜひに。ではまた後日」
 モニターが暗転すると同時に、談話室の扉が勢いよく開いた。セキュリティ・ロボットと簡易武装に身を包んだ従業員がデニスとアウロラを取り囲んだ。
「帰るぞアウロラくん。さて、キミの出番だ。手並みの拝見と行こう。ああ、葉巻とブランデーが恋しくなってきた」
「お慰みなコトを言って――」
 デニスの腰元へ抱きつくようにして床へ押し倒したアウロラは、セキュリティ・ロボットの一斉掃射を無事に回避した。

* * * * * * * * *


「(うちの関係者と外部の繋がりを洗い直した方がいいな)」
 ネレイドは組織内に諜報部門を発足し、自社と関わりのある人物についての調査を命じた。

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