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さまよえる蒼い契約者・前編

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さまよえる蒼い契約者・前編
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 おねがい アトラス
 ハルカを かえして

 炎の海にのまれながら
 最後に願ったただひとつのこと





 ミューレリア・ラングウェイはふと、虚空を見つめて眉をひそめた。
「んん? 何だ?
 今私の直感がピキーンと反応したぜ。不穏な気配を感じるな……」
 周囲を見渡してみるが、一見して普通と変わらない、いつもの空京である。
「パラミタには、鏖殺寺院っていうテロリストも存在するし、ちょっと警戒しておくか」
 漠然と気配を感じるものの、その方角まではわからなかったので、適当に町を歩き回ってみる。
 不審者と思われる者はいなくもなかったが、それらが不穏な気配を纏っていることはない。
 明らかに怪しいと思って声を掛けてみたら、ただの国頭 武尊だったりもした。

「……ん?」
 ふと、道の隅の方を、忍ぶような様子で歩いている人影に目がとまった。
(違うな、あいつでもない……でも何か変だな)
 感じている不穏な気配とは違うが、フラフラとしているのが気になり、声を掛けてみる。
「おい、大丈夫か?」
 びく、と立ち止まった人影は、ミューレリアに答えず再びスッと歩き出す。
 しかしやはりその動きがぎこちない。
「……おい?」
 不審さを感じ、肩に手を置いて止めようとした。
 触れた途端、ビクリ、とその人物が反応する。
 がばりと振り返ったその形相を見て、ミューレリアはチッ、と舌を打った。
「何だこいつ、ゾンビじゃねーか!」
 死臭も分からず、一見して判別できなかった。
 ミューレリアは咄嗟に、星弓パビルサグを構える。
「オオオッ!」
 一転してそのゾンビは好戦的になり、雄叫びを上げた。
 何かがピリッとミューレリアの肌に刺さる。
「ゾンビがバラライズボイス? フン、そんなもの効かない!」
 トン、と一歩下がって距離を取り、ミューレリアは光の矢を放った。
 矢はゾンビの身体を貫き、破裂する。
 ゾンビは殆ど四散してごとんと倒れ、動かなくなった。
「何だコイツ……町ん中にゾンビ?
 随分動きも早かったし、普通のゾンビとは違ったな。それに気配も……」
 屍体を見下ろし、ミューレリアは溜息を吐く。現実的な問題に気が付いた。
「え……これどうしよう」



 シャーロット・フルールは、うーん、と首を傾げてアレクス・エメロードを見た。
「ねぇねぇ、アレクちゃん。
 なんか悪そうな魔力を感じない?」
「……あぁ」
 アレクスも神妙な表情で頷く。
「こいつは明らかに人じゃねぇな。
 ろくりんぴっくで浮かれるこの空京に、何かが近づいて来てやがるのか?」
 突然の二人の会話を、ミーミル・リィがぽかんと見つめている。
「……魔力……?
 ミミは何も感じないの……」
「えっそうなの? でも、気のせいじゃないよね?
 うん、多数決ってことで気のせいじゃない」
「何だよ多数決って……。
 でも確かに気のせいじゃないだろ、何だか胸騒ぎがしやがるぜ。
 よし、この魔力の大本を探すぞ」
 アレクスの言葉に、シャーロットはぐっと親指を上げた。
「もっちのろんろん! 何か悪いこと考えてる子がいるならボコるんだよ☆」
 シャーロットとアレクスの会話に、むう、とミミは頬を膨らませた。
「……シャロとお兄ちゃんだけ……分かってる感じはずるい……」
 ミミだけおいてけぼり……と拗ねるミーミルに、アレクスは苦笑して、ぽんと頭に手を乗せる。
「そうむくれんな。そういう時もあるさ。
 それに、もし悪いやつが見つかったら、ミミの出番だからな」
 アレクスの言葉に、ミーミルは頷いた。
(お兄ちゃんの言うとおり……
 シャンバラを、その国に生きる人を守るのは……剣の花嫁……神子である……ミミの役目……)
 本当に二人の感じた『悪い子』がいたなら、二人と共にそれを排除しなくては。
 ミーミルは、しょげていた自分を叱咤する。
「よし、じゃあ、探してみるか」
「そだね。んんー気配はあるんだけど、どっちの方向かはわかんないな~」
 シャーロットは目を閉じて宙を仰いでみるが、気配は漠然としていて位置までは掴めない。
「そうだな……魔力の気配が強いところを探して歩くしかないか」
 三人は、とにかく魔力を強く感じられる場所を探そうと歩いて回る。

「あれあれ、ここ先刻も通った?」
 見覚えのある通りに出て、シャーロットが首を傾げた。
「ちっと複雑な交差になってんな、この辺……ん?」
 答えながら、ふとアレクスは、裏路地を歩いている少女に目を留めた。
 少女はキョロキョロと辺りを見渡し、思案しながら歩いている。
(迷子か? この辺の道は入り組んでるからな)
「おい、そこの金髪のガキ!」
 アレクスが声を掛けると少女が振り返った。
「ハルカのことです?」
「迷子か? この辺は人通りも少ないし見通しも悪いから、一人でウロウロするのは危険だぞ」
「お兄ちゃん……独り言?」
「は? いや、あそこにガキが……」
 ミーミルの言葉に、アレクスは指差そうとして顔を向け、
「あれ?」と瞬いた。
 少女がいない。
「いなくなっちまった」
「……?
 誰かいた……の? ミミには分からなかった……の」
「え? あれ?」
 アレクスはシャーロットを見る。
 だがシャーロットも怪訝そうにアレクスを見ていた。
「アレクちゃん誰と話してたの?」
「えー? いや……」
「お化け……?」
 ミーミルは、アレクスを上目遣いに見た。
「お兄ちゃん……お祓い……しとく……?」
「いや、そこまでのアレじゃねえと思うんだが……?」
 おかしいな、とアレクスは頭をかく。
「んー……、いや、とりあえず気配の方だ。探そうぜ」
「そだねっ。改めてれっつごー☆」
 その後も歩き回ったが、三人は気配のもとに辿り着くことはできなかった。


「にゃはは☆ 遅い遅いおそーい!」
 そのゾンビ達は、ゾンビにしては異様な素早さだったが、星剣メサルティムを持つシャーロットの光速撃の前に、成す術なく斬り捨てられた。
 遭遇した最初こそ油断をしたが、三人は特に苦戦することなくゾンビ達を蹴散らす。
「……にしても変だな、この一見ゾンビに見えない外見といい……」
 アレクスが首を傾げた。
 ゾンビはそう見えないよう偽装されていたと判断して間違いない、と思う。
「フレッシュだったよね☆」
「ゾンビにしてはな。死んだばかりってことか……もしくは殺されたばかり、ってことかもな」
「じゃあ、これ空京の人ってこと?」
「かもしれない。特殊攻撃使ってきたのも気になる」
「……誰かに……操られてる……?」
 ミーミルが言う。
「そんな感じするよな。ネクロマンシーってやつか……」
 現地でゾンビを調達する為に殺されたのかもしれない。アレクスは苦々しく眉をひそめた。




「また一体やられたわ」
 某所にて、ひとりの女が俯きながら溜息を吐いた。
「横着しようとするからだ」
 フン、と少年が鼻で笑う。
「この結界の中で、自分で動こうと思う方がどうかしてるわ。でも仕方ないわね」
 空京は、町全体が丸ごと結界で覆われている。その結界で、魔物などの外敵の侵入を防いでいるのだ。
 そんな結界が張られていたことを忘れそうな程、昨今空京内では事件が続いていたが、現在は、女王の復活によってその結界も強くなっている。
「フン、こんな結界が何だっていうんだ」
「油断はしないことよ。
 そもそも『核』の反応がこんなところまで来ているのが謎だわ」
 女はそう言ってから、俯いていた顔を上げた。
「見つけたわ」
 
 
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