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シャンバラプロ野球2020シーズン開幕

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シャンバラプロ野球2020シーズン開幕
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【新戦力がもたらす恩恵】

 ヒラニプラの街の郊外に、ヒラニプラブルトレインズのホームグラウンドである球場マーシャルピークラウンドが、その威容をどっしりと構えている。
 全天候型のドーム球場であり、最新型の可動式屋根を備える、ヒラニプラ自慢の施設のひとつであった。
 このマーシャルピークラウンド内には選手用のクラブハウスや練習施設の他、球団事務所や大小幾つかの会議室が設けられており、いわゆるフロント組の活動拠点ともなっている。
 SPBシーズン2020が開幕してからも、各球団は入団テストを通じて新戦力の確保に動き続けているが、ブルトレインズも勿論例外ではなかった。
 この日、ツァンダワイヴァーンズの球団職員高瀬 誠也が偶々球団間の申し合わせ事項の確認の為に同球場を訪れていたのだが、その誠也をブルトレインズの職員と勘違いしたのか、練習用のジャージに身を包んだひとりのテスト候補生が誠也に声をかけてきた。
 トリスタン・デーヴァであった。
「おっと、失礼。ブルトレインズの教団職員ではなかったのか」
 誠也から手渡された名刺を手元で覗き込みながら、トリスタンは申し訳無さそうに頭を掻いた。が、誠也は別段気を悪くした様子も無く、親切にもトリスタンをブルトレインズの球団職員事務所へと案内してくれた。
 誠也と別れたトリスタンは、改めて入団テスト申込用紙をブルトレインズ球団職員に提出した。
 すると、目の前の球団職員は妙に感動した様子を見せてから、随分張り切った調子で入団テスト受験手続を進め始めた。後で知ったことだが、ブルトレインズは先に行われたトライアウトではひとりも入団希望者が居なかったらしく、所属選手や監督、コーチのみならず、球団職員達までもが結構なショックを受けていたらしい。
 そこへ、シーズン開始後ではあるものの、トリスタンが入団テスト希望者として足を運んできたものだから、彼らが予想以上に嬉々とした様子を見せたのも、無理からぬ話であった。
 が、逆にトリスタンは内心で軽い不安を覚えた。
(大丈夫か、このチーム……)
 だが、今更引き返す訳にもいかない。トリスタンは別の球団職員に案内されるまま、入団テストが行われる屋内練習場へと歩を進めていった。


     * * *


 シャンバラ南西部に位置する葦原島の東部──そこに、葦原明倫館の堂々たる雄姿を見ることが出来る。
 この葦原明倫館から城下町を抜けてやや開けた郊外に足を向けると、葦原ホーネッツの本拠地であるブシドーダイヤモンドスタジアムのエキゾチックな外観が姿を現す。
 同球場にはSPB公式試合を開催する為のメインスタジアムの他に、練習用のサブグラウンドや屋内練習場、選手専用のクラブハウス等が敷地内のそこかしこに見ることが出来る。
 その日、ホーネッツでも入団テストがサブグラウンドで実施される運びとなっていた。
(今日はどんな方々が、入団テストを受けに来て下さるのでしょうか……楽しみです~)
 内心うきうきとしながら、ビーシャ・ウォルコットはサブグラウンドに隣接するクラブハウス内へと足を踏み入れていった。
 シーズン前のトライアウトでは無事にホーネッツへの入団を果たし、キャンプ、オープン戦を経てめきめきと実力を付けていった彼女は、今やホーネッツ不動の右翼手としてスターティングメンバーに名を連ねるようになっていた。
 打撃でも守備でも走塁でも、とても新人とは思えぬ活躍を見せているビーシャだったが、それでも決して驕ることなく、常に己の進歩を目指し、同時にチーム内ではムードメーカー的な役割を自ら進んで請け負うようになっていた。
 そして今日。ビーシャは入団テストに臨む希望者達の為に、ノッカーとして入団テストの手伝いをすることになっていた。レギュラー選手が自ら手を貸す入団テストというものは前代未聞であったが、ビーシャは嫌な顔ひとつ見せずに快諾した。
「やぁ……アンタも入団テストの手伝いに」
 クラブハウス内のロッカールームで、ビーシャはユファラス・ディア・ラナフィーネから声をかけられた。どうやらユファラスもビーシャと同じく、打撃投手として入団テストの手伝いに馳せ参じたといったところらしい。
 ユファラスも既にビーシャ同様、チーム内ではリリーフエースとしての地位を築きつつあった。
 直球を中心にした、中盤から終盤辺りを力で抑え込むパワーピッチャーとしてのセットアッパー、という立ち位置である。
 最近は勝ち試合が続いている為、連日の登板で疲労が蓄積しているのも事実であったが、ユファラスもまた新戦力の加入を心待ちにしているひとりであり、入団テストでの打撃投手の打診を受けた際にも、矢張りビーシャと同様嫌な顔は決して見せなかった。
「もうテスト生はグラウンド入りしているみたいだな……早速、挨拶にでも行こうか」
「どんな方々が来ているんでしょうねぇ。楽しみですねぇ」
 練習用ジャージに身を包んだふたりは、足早にサブグラウンドへと向かった。数分もしないうちに一塁側ベンチへと辿り着くと、四つの人影が並んでいる。
 投手希望の葛城 吹雪、捕手希望の朝霧 垂、そして内野手希望の戒・クレイル人見 三美の合計四名であった。
 そこで、ビーシャとユファラスは思わず顔を見合わせた。垂、戒、三美の三人は極々普通の練習用ジャージに身を包んでいるのだが、何故か吹雪だけは段ボール箱で頭と上半身を包み込んでいる。
「投手に乱闘、マスコットに炎上も出来るであります」
 開口一番、いきなり意味不明な台詞を口にした吹雪だったが、自慢の段ボール箱は早々に剥ぎ取られてしまった。SPBの試合は通常の野球規則に則って実施される為、ユニフォーム以外の衣服や着ぐるみ等の着用は一切禁止されているのである。
 キャラ立ちや受け狙いは厳禁。選手として参戦する以上は真面目にプレーしなければならない。それが、SPBなのである。残念ながら、そこは吹雪とて例外ではなかった。
 さて、いよいよ入団テストが始まる訳だが、内野を希望する戒と三美は、技術的にも能力的にも申し分が無かった。
 戒は遊撃手を希望で、守備と走塁に力を入れている守りのひとであった。一方、三美は小兵の為か力勝負には余り自信が無さそうではあったものの、シュアの打撃と守備、走塁では戒と良い勝負であった。戒にとって幸運だったのは三美が三塁手希望であり、ポジションが被っていなかったことであろう。
「入念にストレッチもして、かなりリラックスしてたつもりですが……それでも実際に守備に就くと、かなり緊張するものですね」
「でも、何だか楽しいです。契約者としての力に頼らない、純粋な技術勝負……凄く新鮮です」
 ビーシャのノックを受けての守備テストと、ユファラスを打撃投手に迎えた打撃テストの双方を終えた戒と三美は、一塁側ベンチで休憩を兼ねての見学を命じられた。
 丁度今は、吹雪と垂のバッテリーで打席のビーシャを迎え撃つ、という場面になっている。ユファラスは臨時の球審として、垂の後方に身構えていた。
 マウンド上の吹雪はスライダーとシンカーを駆使し、サイドスローから投げ込む緩急をつけた投球術をアピールしたいところであったが、受ける方の垂が捕手としてはまだまだ未熟ということもあり、思ったような配球の組み立てが出来なかった。
 結果、外角に落とすシンカーをあっさり拾われ、痛烈なライナー性の打球をスタンドに放り込まれてしまうという有様だった。
「こんな筈ではなかったでありますッ!」
「いや、まぁ……流石にプロは違うなってところか」
 マウンド上で悔しがる吹雪に対し、垂は苦笑しながら頭を掻く。
 だが、球審役のユファラスは決して悲観していない。打者がビーシャというのが不運だっただけで、吹雪の投球内容や垂のキャッシングは然程に悪くはなかったからだ。
 今回のテスト内容なら、四人とも問題無く採用だろう。テスト監督官のコーチ達も納得した様子で頷き合っている。
 と、そこへ袖を捲ったワイシャツ姿がグラウンド内に足を踏み入れてきた。ホーネッツ球団営業担当の、紫月 幸人であった。
 今日はヴァイシャリーグレイテストリリィスタジアムで各球団合同の販促会議とスポンサーミーティングが開催されており、幸人はホーネッツの営業代表としてそのいずれにも顔を出してきていた。
 結果は上々だったらしい。機嫌の良さそうな顔つきが、手応えありの心情を雄弁に物語っている。
「おー、やってますね。このひと達が新しい戦力?」
「まだ決まった訳じゃないがね」
 幸人の能天気な程に明るい声を受けて、ユファラスが幾分呆れながら笑みを返した。
 恐らく幸人の頭の中では、早くも新人達を前面に押し出したコラボグッズの企画が描かれ始めているのであろう。
「実はワイヴァーンズさん、それからガルガンチュアさんと面白い話をしてきましてね……各球団で新人さんがぽつぽつ入団し始めているから、そのひと達を特集したアイテムを売り出すのはどうか、ということで軽く方針を合わせてきました」
 随分と気の早い話にも思えたが、吹雪などは早速どうやって展開していきますかと、いきなり幸人に向けて売り込み始めていた。
 一方、戒と三美はまだ入団前ということもあり、反応は控えめであった。垂にしてもそうだが、普通はこういう反応が一般的であろう。吹雪がかなり特殊な性格といった方が正しい。
「スポンサーなら多分、大丈夫です。幾つか目処がありました。まぁ一番乗り気だったのが、何故かヴァイシャリーのサニーGMだったんですけどねぇ」
 幸人の口からその名が漏れた時、ビーシャとユファラスは物凄く微妙な気分になった。
 ヴァイシャリーガルガンチュアの名物GMサニー・ヅラーは、能力面では全く疑いの無い人物なのだが、いかんせん性格面でかなり特殊な人物であった。
 恐らく、幸人が期待しているように上手く事が運ぶことは間違い無いのであろうが、何故か妙な不安が湧き起こってしまう。心配げなビーシャとユファラスを、戒と三美、垂は不思議そうに眺めていた。
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