クリエイティブRPG

新クレギオン

ディメンジョンホライズン

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ディメンジョンホライズン
【!】このシナリオは同世界以外の装備が制限されたシナリオです。
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 スラム街とアップタウンの中間地点に、空白地帯がぽっかりと広がっていた。
 建築物の痕跡だけが残る周囲に展開されているのは、救助やデータ回収のために集まったクレギオンたちのベースキャンプだ。
 皆が見守るなか、一帯にホワイトノイズにも似た嵐が迸る。
 データも、視覚も、聴覚も侵すような嵐が去ったあと、そこには例の研究施設が残されていた。
「では皆さん、行ってらっしゃい」
泉 真理は、今回の作戦に当たってチームを組んだ面々にお守りを手渡した。
 本当にただのお守りで、ゲン担ぎや気休め以上のものはない。
 でもこれは、見送りに必要な作法なのだ。少なくとも、真理にとっては。
 
「これが研究所内の見取り図だよ。ルートの候補や死角になそうな地点も割り出しておいたから」
 ヨシュア・ハイランドは、見取り図のデータを皆に送信した。
「もちろん、事故の影響で内部構造が変化してる可能性も――」
 ヨシュアが言い切らないうちに、先陣をきって飛び出したのはルーザー・ハートレスだ。
「さあ、お楽しみの始まりだ……♪」
 フロートバイクを駆り、シェルターへのルートを突き進む。
 死んだような静寂が満ちていた所内に、これでもかと響くバイクの駆動音。
 それを聞きつけたのだろう。蜜にむらがる虫のように、変異種化した元研究者たちが現れる。
 虚ろな瞳の中の殺意に、ルーザーは心がうずくのを感じた。
「キヒヒ……哀れなキミ達を解放してあげよう…。安心してボクの贄になるといい……♪」
 変異種の振り立てた爪を、バイクから跳ね飛んで回避。身を翻して通路の壁を蹴りつけ、紅い鉤爪――カラミティ・モーメントが一閃。
 着地の瞬間、首筋を痺れにも似た感覚が走る。
 振り向きざま構えた鉤爪に、触手が絡みつく。そして触手の変異種の背後に、もう一体。
 暗器を投げ放ち、背後の敵を牽制。
 次いで咆哮。変異種の鼓膜すらぶち抜くようなすさまじい絶叫に、触手の拘束が緩む。
 すかさず引き抜いた鉤爪が、触手をズタズタに切り裂いた。
 そのまま先ほどの一体へ肉迫する最中、ヨシュアから通信が入る。
「ルーザーさん、ルートに問題は? 塞がってたりとかは確認できるかな?」
 カラミティ・モーメントで変異種を切り裂きながら、進行ルートをついでに見やる。
「ちょっと崩れてるけど、ボクらには問題ないと思うよぉ……♪」
 ミュータント化した職員が暴れた痕跡だろう。天井部分が崩れた瓦礫で、道が一部塞がっている。
 フロートバイクでその上を通り抜けるついでに、弾いた瓦礫を前方へとたたきつけてやった。
 
 そんなルーザーが暴れる後方、壁を伝う蜘蛛の変異種が二体ほど。
 バイクの音を聞きつけて現れた彼らは、しかし他の気配に気づいて方向転換する
 直後、その目の前には刃があった。
 三重野 真菜の展開したサイ・ドローンが、真正面から一体を切り刻む。
 軋むような鳴き声をあげ、二体目が飛びかかる。
 槍のように鋭い脚を、真菜はサイコシールドで受け止めた。
 光の壁越しに見る研究員の成れの果ては、理性をどこかのゴミ箱に捨ててきたかのような有様だ。もっとも、好き好んで捨てたわけでもないだろうが。
(殺してやるのも救いよね)
 下手な情けをかけたところで、研究所がもう一度異次元に行けばおしまいだ。どのみち、倒さなければ進めないのだし。
 呼び戻したドローンの刃で、尻の方から一気に蜘蛛を切り刻む。
 飛び散る血と肉片の向こうから、真菜の頭上に影が差す。
 視線だけで見上げれば、爬虫類のような変異種が逆さにへばりついていた。
 縦一閃に振り下ろされた尾を、身をかがめて回避。
 直後、変異種がグバッと大口を開けた。
 毒液の類だろうか。噴出した液体を、アウロラ・白蘭が展開した光の壁が防ぐ。
「無事?」
「おかげでね」
 毒液を防がれた変異種は、へばりついたまま後ずさった。
 折り畳み式の警棒を展開しながら、アウロラは持ち込んでいたロステク――正確にはその一部だった部品を取り出してみる。
 しかし、特に変異種の反応はない。
「何してんの?」
「ただの実験よ。失敗みたいね」
 もしかしたら反応するかと思って持ち込んでみたのだが、どうやら「餌」にはならないらしい。
 再び毒液を噴射してきたが、それも特別アウロラを――部品を狙ったわけではなさそうだ。
 二人の後ろへと回り込むよう、変異種は天井を跳ねる。真菜のドローンが切り込めば、壁へと跳んでこれをかわす。
 壁に貼り付いた瞬間を狙って、アウロラが特殊警棒を振りかぶった。
 頭部を狙った一撃は、変異種の肉体を砕くには至らない。しかし、わずかにでも動きを止めるのには充分。
 その一瞬に、サイ・ドローンが切り刻む。
 崩れ落ちた死体に残された変異前の特徴に気付き、真菜は目を細めた。
(生存者の中に居てほしいよね、とは思ってたんだけど)
 理性を失くして異次元をさまよい続けるより、死んで解放されたほうがマシ。
 そうなのだろう、きっと。
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