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新クレギオン

深き密林に紛れしモノ

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深き密林に紛れしモノ
【!】このシナリオは同世界以外の装備が制限されたシナリオです。
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 * 未開拓地の探索・Ⅲ *



「いやぁ、未開拓地探索とか楽しいですねぇ!」
 紫月 幸人は一人、ウキウキしながら草木生い茂る密林を突き進んでいた。
 帰り道が分かるように敢えて大胆に足跡を残し、視界を妨げる枝は折って背高の草は刈り通り易くする。
 他のメンバーの役に立つかもしれないし、敵から逃げる時も迷わなくて済む。
 そして幸人は握った暗器をわざと木に当て目印を刻んだ。
「暗器持ってて良かったなぁ。凶暴な野生動物が出てもこのままスパッといけるしねぇ」
 黄金の泉――その名が示す通り、水のニオイや音に注視していればきっと辿り着けるはず。
 そう信じて歩いていると、何処からか歌が聞こえてきた――。

「♪~~♪~~……はっはっはっ、未開拓地の探索とは、心躍る! そうは思わんか? 助手よ」
 『雨に唄えば』を口遊みながらご機嫌な様子で廃棄されし者に同意を求めるアダム・スワンプマン
 助手と呼ばれた少年は目深に被ったフードから少しだけ視線を上げるが、腰まで届く雑草が気になるのかその視線は直ぐにフードに隠れてしまう。
「確かにこの密林は深く険しい……まるで何かを覆い隠し我輩たちを拒んでいるかのようにも感じるな」
 一見独り言のような会話を続けるアダムだが、何かが近付く気配に動きを止めた。
「――もしや、クマか?」
 ステッキ代わりにしていたお気に入りの傘を助手に預け、代わりに手にしたのはこの時の為に事前に購入しておいた“はちみつ”である。
 これを使えば野生動物を手懐けることも可能なはず……。
「うむ、さすが我輩である。ぶははははっ!!」
 さあ姿を現せ凶暴熊よっ――と身構えた先に現れたのはクマではなく幸人だった。
「楽しそうな鼻歌が聞こえてきたと思ったら……それは蜂蜜? もしかして休憩中かなぁ? いいねぇ」
 のんびりとした口調の幸人にアダムの熱が少しだけ冷める。
「……貴殿であったか。これはクマ用に調達した黄金の蜂蜜である! これをひと舐めすれば凶暴なクマとて悶絶すること間違いなしよ!」
 蜂蜜の詰まった瓶を高々と掲げるアダムに傘を持って傍に控える少年、廃棄されし者の視線が遠くへと注がれた。
「助手よ、何故目を逸らすのかね?」
 もちろん答えなど返ってくるはずもなく、それを当たり前のように受け止めるアダム。
 これが二人の通常運転であった。
「そんな凄い蜂蜜なら、クマもたくさん寄ってくるかもしれないねぇ」
 蜂蜜なら基本どれも黄金に輝いている物だが、何となく素直に乗っかる幸人にアダムの熱が再上昇する。
「貴殿もそう思うか! よし、では早速試してみようではないか」
 これでクマの気を引くことが出来れば探索に集中できるだろう。
 こうして、幸人を加えた三人での蜂蜜誘惑作戦が決行された。


 *****


「密林の探検なんて、わくわくが止まらないよねー♪」
 途中まで他のメンバーの後ろを歩いていた響月 鈴華だったが、深い密林を夢中で突き進んでいるうちに皆とはぐれてしまった。
 しかし鈴華はめげず、こうなったら本能の赴くままに進もうと決め、現在全力で泉探しを楽しんでいた。
「うーん……、クマが出るって話だったけど、この辺りには居ないのかなー?」
 人っ子一人見当たらない密林に鈴華の声だけが広がり虚しく消えていく。
 ――と、鈴華は徐に前方の木々の隙間に目を凝らした。
「あれはもしかしなくても……クマだよね!?」
 ついに遭遇したと歓喜に沸き一目散に駆け出す鈴華。
 もちろん泉も大事だが、本音を言うと強い獣と戦いあわよくば連れ帰ることが望みなのだった。
 視界に捉えたのは蜂蜜に群がる凶暴熊――それはアダムが木に塗りたくった黄金の蜂蜜なのだが、もちろん鈴華はそのことを知らない。
 その中の一体に目を引く毛色のクマがいた。
 他のクマと比べて非常に小柄。恐らく子熊だろう――鈴華はその個体に目を付けた。
 此方に気付いた子熊が猛然と向かってくる。
「なんて熱烈な歓迎! 楽しくなってきましたよー!!」
 ブラスナックルを装着した拳をテンション高らかに振り上げ、亜人の一撃を喰らわす。
 子熊と言えど凶暴化しているため手加減はしない。
 鈴華は凶暴熊の群れから子熊を引き離すため高速戦闘を用いながらその場を離脱した。
 ふたりきりになったところで、息を切らしている子熊に手を差し伸べる。
「わたしのペットになってくれませんか!」
 鈴華の誘い文句が密林の合間を元気良く駆け抜けたのだった――。



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