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華の流れは大河になりて:4

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華の流れは大河になりて:4
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 城 廷華(チャオ・ティンファ)将軍率いる討伐隊が、火蜥蜴退治に出かけて二十日が過ぎていた。
 デュオ・フォーリーが早馬に乗り――正確には、その後ろに――、燕京(えんきょう)に辿り着いたのはその日の午後だ。
 王 宝(ワン・バオ)大臣に、早速、報告書を提出する。王大臣は、デュオの土埃や血に塗れた姿に顔をしかめ、直接、受け取ろうとはしなかった。
 デュオは気にしなかった。顔や手はきちんと洗ったし、埃も叩き落とした。最低限の礼儀は弁えている。服を着替えている暇はなかったが、伝令がそこまで気を回すのもおかしな話だ。
 南方の火蜥蜴はほぼ殲滅したこと、現在は後片付けや怪我人の手当てをしていること、そのため、帰還は更に遅くなるだろうと報告を終えても、王大臣はそうか、と答えるだけだった。
 二人しかいない将軍のうち、一人が首都を留守にしていることを気にしている様子はない。もう一人がいるから問題ないのか、と思ったデュオだったが、
「――そういえば、先程、俞将軍とすれ違いましたが」
 帰ってくるとき、もう一人の将軍・俞 奇奇(ユー・チーチー)が馬に乗って飛び出して行ったのを思い出した。その後を、部下たちが慌てて追っていくのも。
「それか。いや実はな」
 西の方から青龍教と名乗る一団が、燕京へ向かっているという。彼らは日増しにその人数を増やし、燕京に着く頃にはかなりの大人数になっているはず――という報告を聞いて、俞将軍は飛び出したのだった。
「まあ、仕方がない」
「よろしいいのですか?」
「アレを、誰が止められる?」
 俞将軍の巨体を思い浮かべて、デュオは納得した。灰族(はいぞく)は、他の八旗族(はっきぞく)と比べても皆、身体が大きく力も強い。相手が出来るのは、黄族(おうぞく)の城将軍ぐらいのものだろう。
 それにしても、二人の将軍が首都を留守にする影響は、少なからずあるはずだ。にも拘わらず、王大臣はそのことにさほど関心があるようではない。
 ――何か、理由があるのか。
 デュオは微かに眉を寄せた。


「本日は、ギアの特徴の一つである個人を前提としたギアと誰でも使えるギアについての説明を致します」
 近衛兵であるアルヤァーガ・アベリアは、勤務時間を利用して、皇帝陛下にギアの教育を行っていた。
 本来ならば、皇帝である彼のタイムスケジュールは分刻みであるはずだ。だが、幼さゆえか、はたまた別の理由があるのか、皇帝陛下の一日は彼の教育に費やされている。
 華の国の歴史に始まり、諸外国との関係、更に外国語の習得にも熱心だ。
 だが、星導器について教えられる者がいない。人材もだが、どうやらそれを嫌う者がいるようなのだ。
 そこでアルヤァーガが、自分の勤務時間内であるなら、という条件下で教えることになったのだった。ただし、近衛隊長である吕 子珊(リュ・ズーシャン)がいる時に限る。
 アルヤァーガは二つの星導器を台に乗せた。
「一つは影映器、俺の個人技を用いていない品です。誰でも使いこなせます」
「誰でも?」
 幼い皇帝は身を乗り出して尋ねた。「誰でもと言うのは、朕でもか?」
「はい。流通してさえいれば、そして買えるだけのお金があれば、庶民でも」
「何と」
 アルヤァーガは、予想通りの反応に満足し、隣の剣を指差した。
「こちらの星導騎士剣は、俺の個人技であるマナを防壁のように纏う『サイクロン』を利用しています。故に、このギアの真価の発揮は俺と同じ個人技を持つ者でないと難しいでしょう。このようにギアは使い手を選ぶようにも作れ、個人に最適化するからこそ強力な武器にもなるのです。この華にギアを導入して列強と渡り合おうと言うならば、華の民の特性を活かしたギアを作成する手もありますね」
「子珊、我が民の特性とは何であろう?」
 傍に控える子珊は、はて、と考え込んだ。代わりにアルヤァーガが答える。
「私が知る限り、この国ほど異人に公平な国はないと存じます」
「そういえば、他国は異人に厳しいと聞いております」
 子珊も相槌を打つ。
「欧州は、今はそれほどでもありませんが、瑞穂皇国は今がまさに、厳しい時ではないかと存じます」
「だが異人は、そのギアとやらは使えないのだろう?」
「しかし、マナを直接扱えます。これは一つの案にすぎませんが、たとえば、星導器を扱う者と異人との連携プレイが可能ではないかと考えます」
 それも、少人数ではなく大規模――軍のような。これは、大きな強みではないかとアルヤァーガは思った。
 皇帝が、ふっとどこか遠くを見るような目をした。幼子に相応しくないような。次いでその目が輝く。今度は、年相応に。
「朕は一度、見てみたいものがある。城将軍と俞将軍の共闘だ」
「城将軍はともかく、俞将軍が承知しますでしょうか」
と、子珊が眉一つ動かさずに言った。
 俞奇奇が、異人の将軍をライバル視――純粋に強い者と戦いたいだけのようだが――しているのは、有名だった。
「無理か?」
「勅命であれば、俞将軍も否やは申しますまい」
 だが、嫌々やっては、二人とも実力は発揮できまいとアルヤァーガは思った。それでは、「華の民の特性」を生かすことは出来ない。
「……いずれにせよ、これは一つの案です。他にあれば、それも検討すべきでしょう」
 うむ、と幼い皇帝は力強く頷いた。
 その日の帰り、アルヤァーガは妙な話を聞いた。
「歓迎会?」
 朱禁城の下女たちが詰める厨房、その責任者である黄 婷(フゥァン・ティン)が話し相手だ。
 近衛兵であるアルヤァーガの食事は婷たちの担当ではないが、たまには庶民的な物も食べたいと時々寄るのである。
「知らないかい? あたしもよく知らないけど、そういう噂だよ。新しい姫君だけ招待して、皇帝陛下の御前で舞踏団が踊るんだってさ。どんな踊りか、見てみたいじゃないか。でもそうかい、近衛兵のあんたも知らないかい……」
 知らなかった。そんな話は聞いていない。
 後宮のことだけならば、耳に入らないこともあるだろう。だが、皇帝の御前で行われるというのに、近衛兵である自分が全く知らないということが、あるだろうか?
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