二章 サイバネティクスを制圧せよ
特異者達が電子機器の復旧に勤しんでいた頃、外でサイバネティクスを制圧させようとする者が現れた。
「支社長がお忍びでもいいぞ。意識を電脳化するロステクだ。肉体の超越は普遍的価値がある」
クリオス・フィンクス率いるチームは、ロステクの制圧の他、調査を目論んでいた。
また、クリオスは、フォーチュン・マキシマ社に軍用パワードスーツ貸与を打診していた。
電脳対策は
ヨシュア・ハイランド、突破要員は
姫宮 和希、移動担当は
ミルドレッド・ジーヴェンである。
「ハイランド、『働かざる者食うべからず』ってな。電脳関係頼むぞ。姫宮『年寄りの言う事は聞いておけ』撃った分、カネになる。ジーヴェン、閉鎖地域へ直上からの強硬降下だ」
クリオスは部下に指示を出した後、参謀役は
カースン・ハミッドの方に振り向いた。
「准将閣下、準備完了です。パワードスーツも調整完了です」
閣下と呼ばれた男性は、温和な笑みで答えた。
「うむ、ヒヨッコにしてはいい作戦だ」
本音を言うとクリオスの人選には微妙な不安があったが、敢えて口にはしなかった。
「年をとると、これくらいでいい。彼らは10代と若いんだから、弾けても構わん」
カースンは、にやりと笑いながら、答えた。不安こそあったが、それ以上に活躍する期待もあったからだ。
「分かりました。では、彼らの奔放な振る舞いを拝見させてもらいますか」
クリオスは、宇宙船にいる仲間を見届けた。
そんな中、カースンが話しかけてきた。
「ところでクリオス、俺の分のパワードスーツもあるだろうな? ──俺も降りる」
宇宙船・白いイルカ内
そこへやってきたのは、灰色の1本の三つ編みにしたメイドの少女・ミルドレッド・ジーヴェンである。
彼女は、ヨシュアが落ち着ける様にと、紅茶と手料理を運んできた。
「ほぅ……これはなかなか良い味だな。やはり君の料理は上手いよ」
「ありがとうございます」
ヨシュアの誉め言葉に、ミルドレッドは笑顔で返した。
ミルドレッドは、自動操縦にしていた機能をオフにして、自ら戦艦のハンドルを握った。
「突入まで何か音楽でもかけましょうか?」
ヨシュアは答えた。
「あぁ、クラシックでも掛けてもらおうか」
その後、ミルドレッドは閉鎖地域上空から、強硬降下で突入した。
直上からの逆落としによる奇襲で、エネミーの本部は危機が迫った。
「何が起きた?!」
「先程、上空から宇宙船が迫ってきています!」
敵はすぐさま宇宙船を落とそうと攻撃を開始、ミサイルを何発も発射したが、ミルドレッドは巧みな操縦でミサイルを華麗にかわし、そのまま敵のアジトに突っ込み、一同は宇宙船から飛び降りて、アジト内に侵入した。
中にいたのは、まだハッキングしていないアジトの護衛もいた。異能者や専門家など本来なら討伐対象から外れる存在なのだが、電脳化することは可能だろう。
それに彼らもエネミーであることには変わらないので、彼らを退治することにした。
クリトスは、生体LANジャックとPFM9-ガトリングスイープの瞬間最大火力で敵を攻撃した。
「お前達はハッキングしていないから、破壊しても良いよな」
エネミーは激しい炎に次々と焼かれていった。
「クリオス・フィンクスに雇われた傭兵として行動するぜ! 閉鎖地域にある、思念体を電脳化するロステクの奪取が最優先だ。途中障害になる相手は誰であろうと蹴散らすぜ」
姫宮 和希は、パワーショットを使いこなしながら、敵を撃っていった。
と言っても、足や移動手段を破壊するだけで、動けなくなれば積極的にはとどめまでは刺さないことにした。
そんな中、複数の敵が自分達を探しているところを見つけた。
うっかり見つかると、勝ち目はないだろう。
そこで、相手の不意を打てる様に、敵陣の中へヴェノムグレネードを放り込んだ。
「うわっ! 何だ、このガスは?!」
「これはガスだ! 至急換気を!」
敵がガスで混乱している隙に、和希はインフェルノを使って、敵を丸焼けにした。
また、ヴェノムグレネードには毒ガス効果があるので、万一炎から逃れられても人間なら毒ガスで敵を動けなくすることは可能である。
ところが、
「おい、嬢ちゃん。こんなところへ何の用だ?」
いかにも強そうな大男が立ちはだかった。
男は強力な拳を挙げて、殴り掛かろうとした。
だが、和希も事前にチャージをして、強力なパワーショットを喰らわせ、大男は「ぐおっ!」と悲鳴を上げて、その場に倒れた。
「死にたくなければ、優しい先生(=トスタノ・クニベルティ)にでも介抱してもらうんだな」
と言い残して、去って行った。
こうして、本拠地は壊滅した。
だが、派手に暴れたせいでアジトは火の海と化していた。
「ここも大分マズくなってきたな。ミルドレッドがそろそろ迎えにくるから、脱出しよう」
その後、一同はミルドレッドが操縦する宇宙船に乗り込み、全員火に巻き込まれずに済んだ。
一方、艦内に残ったヨシュア・ハイランドは、突入の下準備として、思念体侵入阻止プログラムを作り、ウェアラブルコンピューターがハッキングされない為に対策をしておいた。
「今のコンピュータの処理に限界がある……元ロステクの部品を使って補う、究極の型落ち、問題はない」
思念体による人格転送なら、かなりの大容量になりそうだ。あくまで仮定だが、この技術は大量データの転送への功性防壁だけではなく、追跡も実装する必要もあるだろう。
そして、ロステク図鑑参照、全知識総動員にヴェイスII知識を駆使して、ハッキングされた機甲士を元に戻す復旧プログラムを作り上げた。
「よし、これなら皆を助け出せる」