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破壊僧の鬼退治

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破壊僧の鬼退治
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 甲高いサイレンの音が帝都全域に響き渡る。
 それは、突然の出来事、突然の出現。いきなり現れた犬と猿、そして空を飛び行く雉子の様な鳥。それが帝城目掛けて進行して行く姿が誰の目にも映った。
 混乱、恐怖が市井を駆け巡り、恐怖に陥りかけた時、どこからともなく琴の音色が響き渡る。危険を知らせるサイレンの音に混じりどこか優しげで、心に染み渡る落ちつく音色。
 その音を聞き、そして同時に光の矢だろうか、それが空を飛ぶ鳥に向かって飛んでいく様見て彼等、無辜の民は思い出し、誰もが肩の力を抜くに至った。
 なんせ、この都には彼がいるのだと思い出したからだ。
 『神通者』六明館学苑の生徒達、幾つもの難関をくぐり抜けてきた者達の存在。
 彼等ならば、今回の事も見事解決してくれるはずだと誰しもが考えたからだ。
 だからこそ、帝都に住まう者達は落ち着いて避難誘導に従うことができたのだった。
 そんな者達の誰かが言う。
『──頼む、あいつらを倒してくれ!』
 聞こえるはずもない誰かの願いの声は神通者の幾人かが拾っていた。
「言われなくともやるに決まっているだろう」
 その声を伝えられた男は空を悠々と飛ぶ鳥の姿を見ながらそう呟いた。
「……矢は届かない。なら、届く距離にまで叩き落とす。異論はあるか?」
 遠近 千羽矢は鳥を一睨みした後、後ろをチラリと見た。
「異論はないです」
「ある訳ないよね」
「行けます」
真毬 雨海アイン・ハートビーツ葦原 瑞穂の三名は千羽矢の言葉に頷く。
「そうか、では行くとしよう」
 彼等はそう言って地を蹴り空に身を投げた。
 彼等の視線は空の鳥。だが、地上には鳥と同じくらい巨大な犬と猿が地上から帝城に進行していた。彼等はそれを視界に収めない。ちらりとも視線を動かさず鳥を見つめ空を疾走して行く。
 それは、己達は彼等を意にも介さないそう言っているも同義で、それは正しくその通りなのだろう。何故なら、この地を守るのは彼等だけではないのだ。
 だからこそ、彼等は鳥以外を見ない。何故なら自身達以外にも頼れる仲間がいるからだ。
「さあ、競争だ!」
 そんな事を言いながら猿を背負いながら走る犬を追う者がいた。彼の名前は春夏秋冬 日向彼は『閃歩』と言う歩行術を使いながら見る見る内に犬と猿に追いついて行く。
「グルルルルゥ」
「……キシャー !」
 そんな彼を見てか犬は猿に敵の来訪を伝えるかの様に低く唸り、猿は日向に顔を向けて猿叫を上げる。
「はっはー! おいおいおい、そんな叫びを上げても無駄だ、ぜ!」
 日向はさらに速度を上げ走る。その速度はもう既に犬の走る速度を軽く超えている。
「キシャー!」
 彼の速さ。それを脅威に思った猿はその辺りの家を一掴みし持ち上げる。
「っ! おいおい、マジかよ……」
 そんな呟きを漏らした瞬間だ。猿はその家を日向目掛けて投げ捨てる。位置はジャスト。そのまま進行すればちょうど日向にその家は当たり進行を阻止される事だろう。
 足を止めるか、進行方向を変えざるを得ない。だが、『閃歩』を使っている彼はすぐには止まれないし、家が丸々飛んできているのだ。多少の進路変更などないに等しい。
「ちっ! ごめんなさいよぉ!」
 ──睦美流肆ノ型・行雲流水。
 彼はあえて家に向かって跳び飛んでくる家を起点に自らの体を受け流し、速度を落とす事なく、その障害を回避して見せた。
 そして──。
「そこは、もう俺の射程距離内だ」
 彼は一つの術を発動した。
 ──睡ノ波。
 霊力に干渉し周囲のものを眠らせる術を使った。
 猿は何かに干渉される様な気持ち悪さを感じ犬の背から飛び退いた。しかし、犬はその違和感を感じたが猿の退避により一瞬逃げるのが遅れた。
 その差により、猿は彼の術から逃れることが出来、犬は睡魔に襲われ休眠状態に陥る。その隙は大きなものだ。
「ルルティーナ!」
 日向がそう叫ぶ。その方向には家屋の屋根に立つ一人の女性と少女がそこにいた。
「ええ、その隙は逃しません!」
 ルルティーナ・アウスレーゼは休眠中の犬に飛びかかりその二刀の刃を持って動きを止めた犬に飛びかかる。
 狐を纏いその両手に持つ刀。桜千花と朱華の両刀に霊力を流し込む。
 犬は強大な力が近づいてくることに薄れ行く意識の中感じとるも身動き一つ出来ない。
 だからこそ、その攻撃をまともに受けることになる。
「消えなさいっ!」
 双天の構えにて順手に持った桜千花を一振り、冷気を纏った風邪の刃が犬を切り裂き、二撃目は逆手に持った朱華にて直に切り裂き犬の内部を凍りつかせる。そして、三撃目は空中で一回転し桜千花でもう一撃。
 計三連撃の斬撃が犬を襲った。内部は凍りつき、軽くない傷を負った。
 だが、犬にとって功を成したことがある。それは、休眠状態が覚めたことである。犬はこう思った。
 ──ただでは済まさん。
 そう思い、そう感じ、しかし、この状態で傷を負わせた者を相手取るのは難しい。そう思い。襲いかかる対象を決めた。すなわちルルティーナが連れていた少女紅城 リムスだ。
「ウオオォォォン!」
 犬は一鳴きしながら未だ空中で身動きが取れないルルティーナにではなく、リムスに向かって駆け走る。
 しかし、彼の者の企みは失敗に終わる。それはリムスもなかなかの使い手であったからだ。
 犬の眼前、そこに突如壁が現れる。
 驚く犬。ぶつかる。
 驚くはその壁は建物ほどの犬が全速力でぶつかったにも関わらず崩れもせずそこに未だあることだろう。そして、その壁の向こうから何かが飛来してくる。霊符だ。
「……りむは、ママのこどもだもん、まががみなんてこわくないんだから!」
 それを成したのは小さな女の子紅城・リムス。なかなかの手際と言えるだろう。
 だが、犬も負けてはいなかった。ここで彼は奥の手を使う事を決意した。すなわち炎だ。
 彼は全身に炎を纏わせ、リムスの放った霊符を焼き切った。
「えぇ!」
 そんな驚きの声を上げるリムス。犬はもう一度突進せんと力を込めた時だ。
「そうは、させません」
 静かな声、落ち着いた口調が聞こえてきた。
 その瞬間、犬は派手に飛ばされ、犬がいた場所には一人の少女の姿があった。乙町 空。彼女は薙刀を振り切った状態でそこにいた。
「さて、そこから先はあなたの処刑場です。逃しはしないし、逃げさせもしません」
 彼女は飛んで行った犬に対してそう言った。
 彼女は別に無作為にそこに飛ばしたわけではない。それは計算してそこに犬を移動させたのだ。
 何故なら、そこにはとあるものがあるからだ。それが彼女にはわかっていた。
 神通者には後天的な感覚を広げる術がある。『制霊圏』それがその術の名だ。霊力を自身の間合いに張り巡らせ霊力の察知することが可能な技術だ。
 それがあったからこそ、そこに何があるのか彼女はわかったのだ。
「さて、お手並み拝見です」
 空はそう言いながら犬の遥か向こうに立つ鎮守 竜樹を見た。
「えらい、おっかないなぁ〜」
 苦笑とも呆れとも取れる笑みを竜樹は浮かべていた。
 なんせ、完全にこちらの手の内を読んでの行動だ。なんと言うか術者として罠の全てを知られていると言うのは気分的に良くない。だからこそ漏れ出た言葉だった。
「……けど、まぁいいやろ。──さあ、どこに行こう言うんやろうな?」
 立ち上がる犬、その姿を見て彼はそう言った。
 逃げるのだろうか、それとも猿と合流を図るか、相手の思考を考える。
 相手は大怪我を負い、動きも鈍くなっている事を考え、ちらりとそう離れていないところにいる猿の姿を見て彼は考える。
(まぁ、逃しはしない)
 そう考えた時だ。犬は完全に立ち上がると鼻息荒く、竜樹を睨む。
 その姿はまるで勝負しろと言っている様なものだった。
「ほぅ」
 竜樹はそう声を上げる。
「やる気満々やな。けど、……俺はあんたを相手どる気はないんよ」
 勘弁なぁ。彼はそう苦笑した。だが、犬にはそれは関係ない。立ち塞がる者を打倒するしか道はない。そう覚悟したからだ。その目には追い詰められ、苦しんでいるはずの者がする目ではなく、覚悟を決めた者の目をしていた。
「さて、こいやぁ」
 竜樹はそう言うと同時、犬は疾走を始め、その罠にかかり、動きを止められた。
「『鉄刺薊』。鋭い針を持つ植物や。あんたの動きは止めさせてもろうたわ。ほれ、焔村丸、やったれや……」
「うおおおおおおおお!」
千波 焔村丸は兄竜樹の声を聞き裂帛の声を上げ、蛾眉薙刀『烈火』を携え、その身を熱で守り犬目掛けて突き進む。
 その心情にあるのは竜樹への感謝と気概を見せた犬への僅かばかりの気持ちと敵を倒さんと言う使命感だ。
 視界には竜樹の張った罠を食い破らんとその体に炎を唸らせ焼き切らんとする犬の姿。
 唸り声を上げ、誰か一人でもと傷ついた体に鞭を打ち戦気を漲らせる敵の姿。
「天晴れ!」
 焔村丸はそう叫ぶ、勢いのそのまま犬に向かって突進し、彼のものが放つ炎を物ともせずその刃を持ってその刃を持って首をはねた。
 ──赤旋。
 体を捻り、繰り出す回転斬り。突撃速度をそのままに利用した斬撃は易々と犬の首を跳ねるに至った。
「だが、捨ておけん。神妙に逝け」
 その言葉と同時に犬は無念そうにその姿を消したのだった
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