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ある雨の日の蒼空学園

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ある雨の日の蒼空学園
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「先に行きますね、美羽さん」
「うん、気を付けてね」

 一足先に、ベアトリーチェ・アイブリンガーは家を出た。
 図書室で調べものをしたいからと、いつもより1時間も早く。

(「雨だし、私も早く行こうかなぁ」)

 小鳥遊 美羽は、手を振りながら斜め上へと視線を遣った。
 小さな粒が、途切れることなく降り続いている。
 普段はスクーター型の小型飛空艇に乗って、通学しているのだが。

「たまには歩こうかな」

 いつもより時間のかかることは、容易に想像できた。
 小走りで部屋へと戻り、鞄の中身を確認して。
 フツウよりすこーしスカート丈の短い制服に着替えて。
 腰まで届く長い髪を、トレードマークのツインテールに結んで。
 少し急いで準備を整えたら、再び玄関へと戻ってきた。
 開いた傘のパステルカラーが、暗い空によく映える。

「行ってきます」

 そこそこに育った稲の合間に、おたまじゃくしが泳いでいる。
 ツァンダの田園風景に日本文化の混ざった、この風景が、美羽はお気に入りだった。

「あれ。
 へぇ、こんなところに駄菓子屋があったんだ。
 いつも通ってる道なのに、空からだと気づかなかったな」

 新たな発見に、美羽は足を止める。

「ごめんくださーいっ!
 わあっ、懐かしいお菓子がいっぱいある!
 これ、私が日本にいた頃もよく食べてたやつだ!」

 早速の再会に、美羽は童心に戻ったようにはしゃいだ。
 これもあれもと次々に買いもの籠へと入れて、お会計へ。
 山盛りの籠は店主のおばあちゃんを喜ばせ、しまいにはおまけのチョコレートまで。

「ありがとう、おばあちゃん!
 あとで友達と一緒にいただくね」

 見えなくなるまで大きく手を振って、美羽はまた歩き始めた。
 さっきまで空いていた左手には、大きな袋が握られている。



「今日も変わらず美味しいですね」

 一足先に学校へと到着したベアトリーチェは、カフェテラスにいた。
 馴染みの店員さんと言葉を交わしながら、幸せそうに紅茶を飲む。
 開いているのは、借りてきたシャンバラの歴史書だ。

(「あら、美羽さんも早くいらしたんですね」)
「美羽さん、此方です」

 紅茶を一口……と上げた視界の端に、美羽を発見するベアトリーチェ。
 手を挙げて居場所を示し、図書に栞を挟んで脇へ置く。

「どうしたんですか、美羽さん。
 随分とたくさんお菓子をお持ちなんですね」
「そうなの!
 ずっと通ってたのに、気づいてなかったんだよ!」

 向かいの席へ座ると、登校時のあれこれの説明が始まった。

「それでね、おまけにお菓子くれちゃったの!」
「そうですか、なんとお優しい。
 よい出会いでしたね」

 続けて、菓子ひとつひとつの想い出が語られる。

「なるほど……このコンポタ味の棒が、地球のお菓子なんですか」

 袋を破いて中身を半分ほど出すと、指で眼鏡を上げつつ観察。
 いいにおいに誘われて、ベアトリーチェは思いきってぱくりと食べた。

「これは……美味しいですね。
 美羽さんが勧めるだけのことはあります」
「でしょー?」

 と笑う口へ、同じ菓子が運ばれていく。
 
「たまには、こうやってのんびり過ごすのもいいですね」

 程よい雨音を聴きながら。
 好きな人と、好きなことをして過ごす時間が、とても愛おしい。
 ベアトリーチェは、自分の心の温かくなるのを感じていた。
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