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新クレギオン

【事前シナリオ】再刻の岐点(前編)

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【事前シナリオ】再刻の岐点(前編)
【!】このシナリオは同世界以外の装備が制限されたシナリオです。
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- ロビーの攻防 -


 居住区から避難してきた住民たちが、ロビーに集まりごった返している。しかし、これでもまだ住民の避難は完了している訳ではない。後からも続々と、避難してきた住民が押し寄せてくる。
 そして、そのような場所をテロリストたちが見逃すはずがない。居住区に突入した者たちの隙をついて、ロビーに侵入しようとする。

「落ちついて、ここは僕が抑えるから!」

 恐怖に駆られて走り出す住民を落ち着けるように、兎多園 詩籠が声を張り上げると、この状況を想定し、備えていた詩籠は冷静に対処する。
 前もってコンテナなどの障害物となり得るものを近くに積み上げており、それの影に隠れながら侵入しようとするテロリストへ銃弾を撃ってゆく。
 守護者として誰が狙われているかを瞬時に見抜き、射手の精密な狙いでその住民を狙うテロリストを狙撃。警備員たちと共にこれを繰り返す事で、住民への被害を最大限抑えてゆく。

(あちらは大丈夫そうね。なら、私は…)

 戦闘の様子を眺めていた西村 由梨は、テロリストの撃退は十分に可能とみると、直ぐに今避難してきた住民たちに視線を移す。
 テロリストたちの宇宙ステーションジャックは、あまりにも手際が良すぎた。それは周到な計画の上で行われている事を意味する。
 そのような状況の中で、自身が成すべきことを冷静に考えた由梨は、まず避難してきた住民の観察を行う事にした。
 避難した住民は身体検査を受けてはいるが、それも完璧ではない。もし、その中に、テロリストの仲間が残っていたとしたら…。最悪の事態に陥る前に、それを避ける為に最善を尽くす。それが由梨の結論であった。
 こうして先程から、工作員としてのスパイや暗殺の知識を使って、テロリストの変装を見破れないかとじっと観察を続ける由梨は、視線の動きや顔つきからなんとなく怪しい者をちらほら見つけはするが、彼らは目立った動きをすることはなく、確証を得るには至らなかった。
 しかし、今はこれで十分。その人物たちの顔を覚え、マークしておけば何かをしようとした時に、直ぐに対応することが出来るだろう。
 そして、その時への備えとしてもう一手。観察を済ませた由梨は、監視カメラの一つに近付くと、手持ちの端末からそのネットワークへの割り込みを試みる。
 折り畳み式のキーボードを取り出し、端末の画面に流れる文字列を目で追いながら素早くタイピング。システムにハッキングすると、監視カメラの画像を録画に切り替え、一定時間をループするように設定を変更した。

「この事件が解決した後、通せん坊で困った事になった大勢が貴方方の顔を覚えて居たらどうするか……。少し想像力を使ってみるのは如何?」

 ロビーと居住区を繋ぐ通路は一つではない。詩籠が住民を守る一方で、別の通路では『HarshMistress』の宵街 美夜が、警備員を相手に説得を試みていた。
 避難経路が一つしか無ければ、避難してきた住民が困ることになるため、避難経路を増やそうという考えなのだが、それは同時にロビーまでテロリストたちに侵入される危険が増えるという事になる。
 懸命に説得を試みる美夜ではあるが、警備員は頑なにそれを拒む。

「なんで!? どうしてよ!? いいから速くここを開けなさい!」

 一向に埒の開かない問答に、遂に美夜の堪忍袋の緒が切れた。長い黒髪を振り乱し、ヒステリックな声を上げる。
 今にも掴みかかってきそうな勢いの美夜に、警備員は武力行使も仕方ないと警棒を構える。
 と、そこへ急速に接近する影があった。少し離れた所から美夜と警備員の様子を伺っていた御永音 燈が、姿勢を低く保ちロビーに置かれてある様々な物の陰に隠れながら、或いはそれらを足場として大きく跳躍しながら、二人の元に迫ったのだ。
 戦士として鍛え上げられた肉体と、航宙士の優れたバランス感覚を併せ持つミュータントである燈は、ロビーの内部をパルクールのように縦横無尽に駆け、美夜の迫真の演技に注意を向けていた警備員に肉薄すると、非常に手加減をして鳩尾に拳を叩き込む。

「ほらぁ…。人質にされちゃうって可哀そうでしょぉ? お手伝いしてくれるかしらぁ?」
「これには、想像力は要らないわね」

 潰された蛙のような声を上げて膝をつく警備員を無理矢理起こすと、燈は背後から警備員の首に腕を回してがっちりと抑え込み耳元で囁く。
 乱れた髪を整えた美夜も静かに、しかし威圧感のある声でそう言うと、警備員の顔から血の気が引いてゆく。
 ここで、騒ぎを聞きつけた他の警備員たちが駆け付け『HarshMistress』を包囲するが、人質を取られている状況であり、容易に二人に手を出せない。

「待ちなさい。…なんだこの状況は?」

 睨み合いが続く中、包囲する警備員の後ろから一人の男が現れた。現場責任者を名乗るその男は、他の警備員たちの反応を見るに、確かにそれだけの地位にあるのだろう。
 『HarshMistress』は改めて通路の解放をするようにと要求を伝える。

「…君たちの言い分は分かった。この通路は解放しよう。だが、次からはこういった手段は取らない方がいい」

「あらぁ、ちょっとやり過ぎちゃったかしらぁ?」
「そうね、軽率だったわ…」

 責任者は話の分かる性格らしく、『HarshMistress』の要求を飲み通路の解放を行った。しかし、最後に放たれた言葉に当たりを見回すと、二人は避難してきた住民たちから強い敵意を向けられている事に気付く。
 元々アレイダ宙域は、ミュータントを始めとした”異端者”には寛容な地域であり、他に比べれば”異端者”が差別される事は少ない。しかし、つい先ほどから暴れているテロリストは、ミュータントの解放を掲げ武力行使をした。
 被害を受けた住民たちは”異端者”に対していい感情を持てるはずがない。にも関わらず、二人は武力行使によって要求を通すという、避難する住民のためとはいえテロリストと同じような手段を取ってしまった。
 二人の行いによって、宇宙ステーション内部における”異端者”への敵意がより高まってしまったのである。

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