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ワールドホライゾン

ドキッ!?事件だらけのわくわく仮面舞踏会

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ドキッ!?事件だらけのわくわく仮面舞踏会
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1.始まりのワルツ

 迎賓館で催されるパーティーに招かれた特異者たちが次々と到着する。
 そのイベントの一つの仮面舞踏会に参加する者は仮面をつけて会場に入った後は今宵の名乗りで通すことになっている。
 それに参加する今井 亜莉沙ノーラ・レツェルリーザベル・シュトレーネアルティレ・ハイゼンベルクレインズ・ラファールリリィ・ウィンタースシルノ・アルフェリエエスター・アルナイル死 雲人山内 リンドウは、それぞれの思いや期待を胸に一夜の夢の宴の空間に足を踏み入れる。


 ”謎の仮面先輩”が会場に入ってすぐのクロークで境屋が控えていた。
 境屋は普段通りの和装の羽織姿に仮面をつけていて”謎の仮面先輩”は思わず吹き出しそうになったが、自分も渋い色合いの煤竹外衣を着て空走下駄という和装の装いだった。
「この衣装に似合いそうな仮面があるかしら」
「これはどうだ?」
 境屋は縁日で見かけるような和風のお面をいくつか出して来た。”謎の仮面先輩”は狐の風貌を感じさせるエキゾチックな仮面を付けると目当ての人物の姿を探した。

”月守の君”も周囲を見回して誰かを人を探していた。
「仮面を付けちゃったら私が誰か本当にわからなくなるかもしれないな」
 仮面にも色々あるけれど、”月守の君”が用意したのは顔全体を隠すタイプのものだったからだ。”月守の君”はそれを心配していた。
 できれば仮面をつける前に顔を合わせたい相手がいたのだが——。
「顔が隠れているからこそ、見えるものもありますのよ」
”赤薔薇の君”にそう言われて、”月守の君”はふむ、と息をついた。
「そうかもしれない。まぁ、これしか持ってきてないから仕方がない」

「やはり、おかしくはないだろうか」
”アル”は男装の姿をしているが、その物腰はぎこちない。紺影のマントの下に大事そうに花束を抱えていたからだった。
「大丈夫、もっと堂々としていなさい」
”レイン”はそんなアルティレを見守るようにして寄り添う。

 綺麗に緑が整えられた庭園の奥にある迎賓館は、間接照明の光を受けて浮かび上がり、整然と並んだ窓の一つ一つの奥に煌びやかな燈を宿していた。
「ワールドホライゾンに、こんな場所があるなんて……」
 ”スノウ”は小さく息をついた。
 舞踏会ということで、”スノウ”は雪柄のロリータドレスを着ていた。【プレイグ・オペラ・マスク】を被る。
 普段から付けている【雪結晶の髪飾り】で華やかな装いを演出していた。
 物語にあるような素敵な舞踏会に一度でいいから参加してみたい——。
 そんな憧れを持っていた”スノウ”にとって今回の舞踏会の招待はとても嬉しい出来事だった。
”スノウ”は大切な友人であるヴェルディアを探していた。
(早くヴェルに会いたい!)
 はやる気持ちを抑えながら”スノウ”は仮面の人々の合間を歩き、ようやくその姿を見つけた。
 仮面を付けているが、その艶やかな緑色の髪からヴェルディアとすぐにわかった。
 ヴェルディアの姿を見つけた”スノウ”は、そっとその背後に近づく。
 小さく咳払いして、少し気取ったように声のトーンを落として言葉をかける。
「そこの可憐なお嬢さん。少しよろしいでしょうか」
 ヴェルディアが驚いたように振り返る。
「私の事はスノウとお呼びくださいです」
”スノウ”を名乗る小鳥のような少女の髪には【雪結晶の髪飾り】が揺れていた。
 ヴェルディアはその髪飾りを見ると嬉しそうな表情になり、その手を取った。
「ヴェル、と呼んでくださいね、スノウ」
 お互いにクスクスと笑い合う。
 ”スノウ”は顔を寄せて小さな声でお願い事をした。
「こういう場所は初めてで……良ければご一緒してもよろしいでしょうか?」
「それは私も同じです……。ぜひ思い切り楽しみましょう」
 ダンスホールには仮面を付けてそれぞれの趣向の装いで華やかだった。
(こんな素敵な舞踏会に参加できるなんて……本当に夢のようです……!)


 そんなヴェルディアと”スノウ”の様子を”ナイチンゲール”はホールの柱の影から見つめる。
 ”ナイチンゲール”はパートナーの”ムーミア”と共にやってきていた。
 ”ナイチンゲール”はディーヴァ用の衣装である舞踏衣に身を包み、”ムーミア”は中世の雰囲気を醸し出すフォーマルなステージ衣装の古書の足音を着ていた。
 共に色違いの鳥の羽が付いたお揃いの仮面を付けていて、パフォーマンスの用意がある様子の二人に周囲の招待客もチラチラと期待の視線を向けていた。
「私もダンスに誘いたいけれど、緊張します」
「まあまあ、先に皆様に余興をお見せしましょう。
とにかく演奏は私に任せて」
 ”ムーミア”の力強い言葉に”ナイチンゲール”は頷き、前に進み出る。仄かな香水の香りを漂わせる。
「”ナイチンゲール”、歌を歌います」
”ムーミア”も”ナイチンゲール”と共にお辞儀をし、極光のクラヴィコードを演奏する。
 会場に透き通るような歌声が響くと、人々もその音に浸るように軽やかに舞った。
 歌と演奏を終えた”ナイチンゲール”たちに、”ヴェル”が拍手を送る。
「私が、わかるのですか?」
「歌声でわかりましたよ、”ナイチンゲール”さん」
”スノウ”が頷き、”ヴェル”が”スノウ”の傍から”ナイチンゲール”の方へと歩み寄りその前に立った。
「踊りましょう」
 互いにお辞儀をして”ヴェル”が手を差し出す。
”ムーミア”が演奏を始める。
”ナイチンゲール”は”ヴェル”の手をしっかりと握り、足を踏まないよう、緊張しながら踊った。


「うむ、圧倒的にご婦人方が多い。これはチャンスである」
続々と会場入りする人々の姿を見回して”スキ”は若干鼻息を荒くする。
「我が名は”スキ”と呼んでくれ」
 仮面の淑女に口元の笑みで愛想を振りま来ながら”スキ”はレインボウカーペットを敷いて颯爽と歩み出る。
 仮面を着けた女性たちは興味深そうに”スキ”を見つめる。
「ふむ、これは良いムードだ」
”スキ”は正義の鉄槌のパフォーマンスを披露して勇敢な印象をアピールする。
 会場は大いに盛り上がる。
 その勢いを借りて、”スキ”は紫藤 明夜の前に進みでる。
「どうか、私と一曲お願いしたい」
 明夜は少し驚くが、周囲が”スキ”のパフォーマンスへの返礼のように拍手をし、明夜も微笑んで手を差し出す。
「では、よろしくね、”スキ”さん」
「どうか名前を呼び捨てにしてください、市長殿」
「それはちょっとね……」
 明夜に名前を連呼してもらう作戦は失敗した。
「ではせめてこのひと時を楽しむことにしよう」
 パフォーマーとしての”スキ”のダンスのステップはなかなかのものだった。明夜もそのステップにしっかり合わせて軽やかに舞う。
 思惑は外れてしまったが、それでも”スキ”は明夜をエスコートするダンスを堪能した。

 曲が変わり、新たな歌姫が登場する。
「”トゥーランドット”とお呼びくださいな」
 【鮮やかな舞踏衣】を纏い魔女の花飾りをつけてワンダーランドのディーヴァとして華やかなムードを盛り上げる。
 仮面の口元に大人っぽい魅惑な笑みを湛え、とある高名な劇作家の言葉を引用する。

『人間の一生は彷徨い歩く影法師、哀れな役者に過ぎぬ。
 己の出番の時は舞台の上でふんぞり返って喚くだけ!』

 そして芝居がかったように人々に問いかける。
「であれば、ねぇ、人はどうするべきでしょう」
 問いかけから人々を魅了する歌声を響かせる。
「答えは一つ、そう、どうあっても楽しんでしまえばいいのですわ!」
 人々が同意の歓声を上げる。
「……ところで今のわたくしは”トゥーランドット”です。
寝たり謎かけに答えられなかったら……わかっておりますわよね? フフフ」
「謎かけ姫」の問いかけに答えられぬ者には死を。
 そんな不吉なメッセージを歌の歌詞に盛り込む。人々はそれも余興として受け入れた。
 互いに仮面をつけていることで、謎めいた出来事が起きることを期待しているところがあった。
 ただ、”トゥーランドット”自身が歌声を紡ぎながら何か心騒ぐものを感じ取っていた。
(今宵は何かが起こるかもしれませんわね)
 仮面を着けて華やかな装いの人々が楽しそうにくるくると舞い踊る。
(歌って、踊って、何がどうなろうと楽しむだけですわ!)

 仮面舞踏会が華々しく開幕した。
 だが、”トゥーランドット”の予感は当たったのだった。
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