「
プロローグ 」
ローランドのプリシア公園の奥にある森林、季節は地球でいうところの秋のような装いを見せていた。
青々と茂っていた山や森林の葉は、オレンジや黄色の様々な濃淡の色に姿を変え、辺り一帯を味わい深い賑わいの森に変えている。
山の頂上付近にはあちこちに栗の木が生い茂り、イガイガした形の実の中にはふっくらとした栗の実が今にもはちきれんばかりにたわわに実らせている。
本来ならこの山の動物たちがこの自然の恩恵に預かり、にぎわうような季節だった。
この見惚れるほどの美しい景色と実りの豊かさには似つかわしくない、こげ茶色の大集団が現れるまでは。
彼らはあちこち破れた赤い薄汚れたローブを着こみ、意気揚々と我が物顔で山を登る。のっしのっしと重い体重があちこちの草花を踏みつけ、けもの道を作る。
真っ赤な旗に黒いオークの骸骨のイラストをプリントした旗を掲げ、それらをたなびかせながら、各々斧や、金づち、大剣を片手に低いガラガラ声の歌が辺りに響かせる。
『俺たちゃオーク、ブラックボーン♪ この世で一番かっこいいオーク♪ 俺たちが通るぜ、ひざまづけ、子孫を残すぜ、女をさらえ! お前たちの物は俺の物、俺たちの物は俺たちの物♪』
彼らの異質な存在もそうだが、その集団から発せられる体臭や酒の臭いがとにかく凄いのである。
森の妖精たちが眉を潜め、リスたちは隠れ、鳥たちが驚き羽ばたく、彼らの出現で一斉にその場からみな逃げるように離れた。
今やこの栗山はオークたちに支配された。