クリエイティブRPG

ヴァージンロード・エスケープ

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ヴァージンロード・エスケープ
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辿り着いた丘で



「こっちだよ!」
「お、おーい! 僕達は一体どこへ……?」
“仮面”の言う通りの道を進むジルベール。
「マーヴェルの元に向かっているんだよね?」
「違うよ」
「えっ?」
 マーヴェルの元へ向かっていると信じていたジルベールが足を止める。
「……行かないと」
「待って」
 仮面と別れ、マーヴェルを探しに行こうとするジルベールの腕を掴む。
「時間。約束の時間に間に合わなくなるけど?」
「けど、マーヴェルが居ないと……」
「彼女に場所も時間も伝えているんだよね?」
「そうだけど……」
「なら信じるんだ。
 彼女は君に手を引かれていないと、目的地にたどり着けない様な女性かい?」
 その言葉に、先程優・コーデュロイに告げられた言葉を思い出した。
「それに、彼女は1人じゃない。そうだろう?」
「……だったら、僕は」
「それは、君が一番わかっているはずだ」
「…………」
 再び歩き出すジルベール。
「……先導、頼めるかい?」
「あぁ! もちろんさ!」
 約束した場所で再会できる事を信じて、先へ。
 温もりの無い左手が今は少し寂しく感じるけれど、それでも前へ。



「よっし、着いたね」
 紫月 幸人はマーヴェルを降ろし、建物の中へ。
 さすがに“この場所”には相応しくない格好だと判断した様子。
「……ジルベールさん」
 周りを見渡すが、彼の姿はまだ無い。
「……でも、本当にここ、なんですか?」
 たどり着いた場所は街の教会。
 本来、今日マーヴェルが結婚式を挙げる場所だった。
「……そうだ」
 先に婚約者と会い、今回の縁談を断ろうとするマーヴェル。
「まだいないみたいよ」
 仮面の男と出会った場所に居たコーネリア・ロッシュが声を掛ける。
「……貴女がなぜそれを知って?」
「なんで、って一緒に会ったじゃない。あのへんな仮面。彼でしょ?」
「……え?」
「おっどろいた……。気付いていなかったの?」
「……はい」
 申し訳なさそうに俯くマーヴェル。
 しばらくして、仮面の男と共にジルベールが現れる。
「遅いじゃない」
「いやぁ、道に迷って……」
「あ、あの……」
 仮面の男に真実と謝罪を告げようとするマーヴェル。
「良かったぁぁぁああああ!」
 だが、マーヴェルが無事だったことに安堵したジルベールが抱き着き、妨害される。
「ジ、ジルベールさん……。少し離れて……」
 ジルベールをはがし、仮面の男と向き合うマーヴェル。
「……話したのかい?」
「あなたが婚約者だって事だけ」
 コーネリアが少し呆れたように呟く。
「……え?」
 その言葉にジルベールが呆けた表情を浮かべる。
「なら、道化を演じるのもここまでかな」
 仮面を外した男の顔に見覚えがあった。
「君はあの時の……」
「改めて、初めまして、ジルベール君。私の名はルヴェルト。
 彼女の婚約者だよ」
「まさか……僕を騙して……」
「それこそ、まさかだよ。
 ……もし君が僕の敵なら、ここまで連れてくる訳ないじゃないか」
 そう言いつつもマーヴェルの手を取るルヴェルト。
「あ、あの……」
「信じて」
 そう小さく呟くルヴェルトの表情は、彼女の想いを知ってのものだと察した。
「マーヴェル!」
「……大丈夫。私を信じてください」
 そう言って教会の中へ消えていく2人。
「……どうしよう」
 残されたジルベールとコーネリア。
「それじゃあ、わたしはこれで」
 コーネリアがそう言って教会の中へ。
 よく回りを見て見ると彼を助けてくれた特異者たちが教会へと入っていく。
「……これは?」
 困り顔の彼の前に現れたのは、ギヨームだった。
「おめでとう。君とマーヴェルの勝ちだ。ついてきなさい」
 言われるがままに教会の控室へ。

 教会の中では式が執り行われていた。
「……汝は永遠を誓いますか?」
 そうマーヴェルに問いかける神父。
「…………」
 マーヴェルは答えられない。
 彼女の気持ちは決まっていた。
 だからと言って、彼を傷つけたくない。
「……ほら、君の想いを言うんだ。……“優しさ”と“哀れみ”を間違えてはいけないよ」
 そう背中を押すルヴェルト。
「……何もこんな場でなくても」
「駄目なんだ。……“僕”ではないと見届けてもらわないと」
 それが“条件”と言う様に。
「……分かりました」
 そう言って神父の言葉に首を縦に振るマーヴェル。
「……誓えません」
「……では、貴方は誰を想うのですか?」
 神父がそう返した事に内心動揺しつつも、彼女の口から紡がれる名は1つだった。
「……私はジルベールさんを愛しています」
 そうはっきりを言った。
「……よく言ったね」
「はやくいかんか!」
「ぐぇっ!」
 マーヴェルが彼の名前を呼んだ時、袖から純白の衣装を纏ったジルベールが現れた。
「何も蹴らなくたって……。……や、やぁ」
 さすがに正面からこんな大人数に“愛している”と宣言されて照れている様子。
「何をしているんだい。今日は君が主役なんだから」
 道化の仮面を被り、ジルベールと入れ替わる様に控室へ。
「君は……」
「こうでもしないと父さんが諦めてくれないからね」
 そう言って道化は主役に舞台を任せ、消えていく。
 仮面の裏に隠れた表情は、どこか満足した表情をしていた。

「……コホン。では、改めて」
 神父が咳払いをして式を執り行う。
「……マーヴェル。汝はジルベールと共にある事を永遠に誓いますか?」
「……はい」
 ジルベールの顔を見て、そうはっきりと伝えた。
「……ジルベール。汝はマーヴェルと共にある事を永遠に誓いますか?」
「……ええと」
 照れているジルベールを誰も気づかない様に小突くマーヴェル。
「……はい」
 その答えに満足した神父が笑顔を浮かべる。
「では、誓いのキスを」
 2人の距離が迫る。
「……これからよろしくお願い致します」
「これからも、でしょ。……不束者ですが、どうぞ……」
「それ、私の台詞じゃないんでしょうか……?」
「いやぁ、僕の方が頼りないから……」
「もっとしっかりしてくださいね。……旦那様」

 2人の唇が重なる。
 その姿を見ていた特異者たちは何を想い、何を感じたのだろうか。
 それでも1つだけ分かる事があった。
 1人の“道化”によって1組の男女がこうして結ばれた事。
 2人は太陽よりも眩い笑顔で笑い合うのだった。



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